第一話「遭遇」



『第203攻撃第二分隊全機出撃準備!繰り返す・・・』

基地中に緊急放送が突如鳴り響いた。

「なに!?」

俺は思わず呟き、パイロットスーツに着替え、格納庫へ急いだ。

今まで緊急出撃なんて一度も無かったからだ。

「おい!シュウ!!」

格納庫へ向かう途中で後ろから声をかけられた。

「刃か!?」

「御剣 刃」俺と同期で一番の親友だ。

「しかし何だ?緊急出撃なんて、始めてだぞ!」

「アレしか無いだろ?」

「アレ?」

俺は思わず聞き返した。

刃は面白そうに、

「緊急出撃=敵、敵=RNAだろうが!!」

「RNA!!」

RNA・・常軌を逸したVRを駆る謎の組織。

VRの性能はこっちのVRとは足元にも及ばないと言われている・・

「RNAがなんで・・・」

「とにかく格納庫に行けば解かるだろう?」

「そうだな。急ごう!」

俺たち二人は無言のまま格納庫へ急いだ・・・



『全機出撃準備しながら聞いてくれ』

コックピット内で発進準備してると、専用回線が開かれた。

『私は203攻撃大隊第二分隊長マーク・ハイト中尉だ』

『時間がないから手短に説明する。現在前線警戒中の第一分隊が突如

RNAのVR九機の攻撃を受けて壊滅した。

近くにいた支援第二分隊も壊滅させ、このエルミール前線基地

に向かって進行中だ』

壊滅!!たった九機で二十機以上のVRが撃破された!?

『我々は予想迎撃ポイントで敵機を迎撃、殲滅する。

迎撃ポイントは9−25戦区。

既に支援大隊第一、第三分隊も向かっている。

準備が出来しだい発進、合流する。以上だ。』

「こちらシュウ、発進準備完了」

「刃、発進準備完了」

次々と発進準備のコールが隊長の元へと届く

『よし!第二分隊出撃!』

「了解!」

次々とVRが発進していく。俺もその後に続く。

ふと隣を見るとテムジン220号機が見えた。刃の機体だ。

「なあ、刃」

回線を開いて話しかける

「たった九機で二分隊を壊滅・・どう思う?」

刃は少し考えて、

「そうだな・・支援部隊のベルグドルはともかく、第一分隊壊滅・・

あのグレイス大尉がやられるとは・・ね」

グレイス大尉・・第一分隊長兼大隊長で、

大隊のトップパイロットの一人だ。

「たしかに・・戦闘力は桁外れと考えた方が良いな。

実際、これだけの部隊で勝てるかどうか・・」

RNAのVR一機でこっちのVR十機に相当する戦力を

持ってるらしいのだ。そうだとしたら、全滅は必死だ。

「なんとかなるさ。性能差は腕でカバーすればいい!」

刃は落ち着いた声で言った。

俺は含み笑いをし、

「そうだな・・おっと、ずいぶん離されたな」

「ああ、んじゃ通信切るぞ」

「ああ、」

そう言って通信をきった。

「よし!いくぞ!!」

俺はスロットを全開にして合流ポイントへ向かった。



合流ポイントに着いた時には支援分隊も到着していた。

「全機そろいました」

「よし、それでは作戦内容を説明する」

ハイト中尉がそう言うと、モニター上にこの辺りの地図

が表示された。

「まず、敵進路上に第二分隊を配置、その後ろに第一,三支援分隊

を配置させ、敵との距離4000で一斉射撃を行う。

その後第二分隊は二機一組になり、攻撃する。

その間に第一、第三支援分隊は左右に展開し、包囲。

第二分隊を援護してくれ。作戦予定時刻は十五分後だ。

何か質問はあるか?」

「ハイ」

支援第三分隊のトーマス軍曹が声を上げた。

「敵はどんなVRなんですか?」

それは俺も気になっていた。機体によって作戦が変わってくるからだ。

「新型のアファームドだ。恐ろしく早い。A型(アタッカー)が七機、

C型(コマンダー)が二機だ。」

アファームド・・接近戦にその力を発揮し、両腕のビームトンファー

は一撃必殺の威力を誇る・・・。

しかも新型だ。近づかれたら勝ち目は無い。

「接近戦はなるべく避けて、出来るだけ遠距離で仕留めろ。

それでは作戦を開始する。全機配置につけ!」

『了解!』

そう言うと、配置につく。

俺はいつもの配置、二列目一番右につく。隣には刃がついた。

俺のパートナーだからだ。

「しっかり援護してくれよ!」

刃が話しかけてくる。

「お前もな」

『敵アファームド九機確認!!距離45000』

話していると支援部隊からの報告が入る。

「行くか!」

「ああ!」

「敵VR接近!距離20000!速度50!」

「全機、一斉射撃用意!」

マーク中尉が命令する。

その声を聞いて照準を合わせる!

「距離10000!」

俺は目標をオートロックする!

「距離7000!」

最終安全装置を外す!

トリガーを持つ手に力がこもる。

「距離4000!!」

「発射!!」

その瞬間、後方の支援分隊のベルグドルが爆音と共に

無数のミサイルを発射した!!

攻撃分隊のテムジンもランチャーからビームを射出する!!

アファームドは回避行動を取るハズだ。

俺は一番前にいたA型に狙いを付ける。

回避運動を予測し、そこを狙い撃つつもりだった。

「なに!?」

俺は思わずつぶやいた。

アファームド達は回避行動せず、そのまま直進したのだ!

そこに無数のミサイルが降り注ぐ!

しかし!

「はじかれた!そんなバカな!!」

俺は驚愕の声を上げた。

確かにミサイルは敵機に命中した。

なのに爆発もせず、弾かれる!?

考えてる時間は無かった。

アファームドは更に速度を上げて急接近してきたからだ!

「敵VR三つに分かれました!」

「各機迎撃準備!四機一組で各個撃破する!

支援分隊は左右に展開。包囲、攻撃分隊を支援せよ!」

マーク中尉がすぐさま言い放つ。

その声を聞いて支援分隊のベルグドルは一定のスピード

を保ちつつ、左右に展開していった。

「刃、俺達も行くぞ!」

「OK!突っ込むから援護よろしく!」

「解かった!フォーメーションA3でいくぞ!」

「シュウ、刃、後方はまかせろ!」

後ろから二機のテムジン。機体ナンバーから

ジェイス軍曹とセルツ曹長だ。声はセルツ曹長からだ。

『了解!』

そう答えて、俺のテムジン221号機と刃の220号機が前方の

A型に向かってダッシュする!

俺達の部隊は右翼、マーク隊長は中央、クーリガー副長は左翼担当だ。

220号機が先行し、その真後ろに221号機が続く。

その動きに気づいたA型がサブマシンガンを乱射した!

220号機はブレードからビーム・フィールドを形成し、

ソード・ウェイブ打ち出した!

ソード・ウェイブと弾丸がぶつかり、弾丸を相殺する。

その間にA型との距離を更に詰める!

A型もナイフを抜いて左手に装備し、

こちらに猛スピードで距離を詰めてくる!

距離400の所で220号機がジャンプした!

ジャンプした瞬間、後ろから221号機が

大型ビーム弾二発間髪入れずに発射した!

絶妙のタイミングと距離である。回避は出来ない。

しかしA型は急停止し、惰性スピードを殺しつつ、右足を軸に

機体を回転させ、紙一重でよける!

あの距離とタイミングで避けれるのか!?

その時A型の後ろから別のA型がバズーカーを発砲した!

弾は221号機の足元に着弾、

怯んだスキに前方のA型が距離を詰めてくる!

A型が左手に持ったナイフを構えた!

やられる!!

そう思った瞬間

『飛閃天剣流!斬烈閃!!』

ジャンプした220号機が刀身にビーム・フィールドを纏い

前方のA型目掛けて切りつけた!

A型は右肩口から真っ二つに切り裂かれ爆発、頓挫した!

「まず一機!」

「刃、前方来るぞ!A型とC型!!」

A型が一定の距離を保ちつつ、バズーカーを発射する!

それを援護にC型が距離を詰めてくる。

ジェイス軍曹の226号機とセルツ曹長の320号機が

接近させまいとC型にビーム弾を乱射する。

右翼のベルグドル隊も援護射撃を開始する。

しかし、C型は被弾もお構いなく突っ込んでくる!

「なんてな装甲してるんだ!」

その時左手にマチェットを装備したかと思うと、

こちらに向かって投げつけた!

俺と刃は即座に回避するが、こちらには来なかった。

「ジェイス!!」

セルツ曹長の叫び声がコックピット内に響き渡った。

後ろを見ると、

ジェイス軍曹の226号機が胸部を

マチェットが貫いていた!!

そのまま後ろに倒れるが、地面に付く前に

マチェットが大地に突き刺さった!!

コックピットを貫通している・・即死だろう・・

「よくもジェイスを・・・!!シュウ、刃、

奴は俺が倒す。A型を頼む!」

返事をする前にセルツ曹長の320号機は

C型に向かって走り出した。

すぐさまA型とC型が320号機に攻撃するが、全て紙一重で

かわし、C型との距離を詰める。

俺と刃もA型とC型に牽制攻撃しながら左右に別れ、

A型との距離を詰める。俺は右回りに高速移動しながら

ランチャーをフルオートにして乱射した。

A型は難なくかわし、バズーカを二発発射した。

俺は狙いをバズーカの弾に変更して乱射した。

ビーム弾は1発のバズーカの弾に命中し爆発した。

その爆風をくらいもう1発も爆発した。

今のA型の攻撃、こちらの移動速度を計算して撃ってきた。

しかも、二発とも急所を狙ってきた。

まさかこちらの機体特性が知り尽くされているのか!

遠距離で射撃戦は装甲が厚くてこちらの攻撃は通用しない。

しかも正確な射撃をしてくる。

なら接近戦に持ち込めばバズーカが邪魔して不利と考えた。

問題はどう接近するか・・

「シュウ!」

刃から通信が入った。

「シュウ、シザースアタックを仕掛けるぞ!」

「!!、了解!!」

俺はすぐざまシザースアタックに入った

シザースアタック・・簡単に言うと挟み撃ちである。

敵を中心に高速で回りこみ、敵を撹乱して死角から攻撃する。

しかし移動や攻撃が単調になりやすい欠点がある。

「行くぞ!」

二機のテムジンはA型を中心に高速移動を始めた。

A型もバズーカで狙い撃つがスピードを上げ下げしてかわす。

A型は左手首からナパームを取りだし投げつけた。

ナパームは移動中の220号機の前方に着弾し爆風を上げる。

220号機は緊急停止して爆風をやり過ごした。

突如220号機の目の前にA型が現われた!

ナパームを投げた瞬間に220号機と距離を詰めたのだ。

既にナイフを装備して襲い掛かる!

「刃、ターンしろ!できるだけA型から離れろ!」

「りょ、了解!」

すぐさま220号機は反転してA型から離れる。

間一髪攻撃をかわすがすぐに220号機を追いかける。

スピードはA型の方が速い!徐々に距離を詰める!

距離300の所でA型がバズーカを構える!

マズイ!あの距離ではかわせない!俺はランチャーを構える!

その時右翼に展開していた支援分隊のベルグドルがA型に

一斉射撃を開始した。

ミサイルの雨が220号機とA型の間に降り注ぎ爆風の壁を作り出した

その間に220号機はA型との距離を空ける。

「ナイスタイミング!!」

刃は軽快に言い放った

A型はたまらず足を止めてベルグドルの方へ進路を変える!

俺は左手首からパワーボムを取り出し刃に通信した。

「刃、準備いいか?」

「いつでもいいぞ!」

「よし!いくぞ!3,2,1・・」

俺と刃は同時にボムをA型に投げつけた

一瞬の間を置き2つのボムは空中で爆発し、凄まじい閃光が辺りを包む!

ボムの起こす爆風がセンサーを撹乱させる。

俺はもう一発ボムを取り出し、

「刃、もう一発投げたらアタックUだ!」

「了解!突っ込むぞ!」

俺はボムの投石体勢に入る

そのときA型が爆風を突き抜けてこちらに接近してきた!

 あちこち装甲が焼け爛れ、剥離している。

更に接近し左手のナイフを突き出した!!

俺はランチャーを構えるが、遅い!

とっさに左にかわすが右肩アーマーにナイフが突き刺さる。

突進してきた勢いで二機とも後ろに倒される。

ブレードを展開するがナイフがアーマーに刺さっていて肩が動かない

しかも、密着しているので肘だけ動かしても届かない!

「シュウ!!」

刃もこちらに駆けつけるが間に合わない!

支援分隊もこう密着していては援護射撃も出来ない!

A型がバズーカをコックピットに押し当てた!!

 その時A型の顔が笑ったように見えた。

俺は左手に持っていたボムの設定を急いで変更し、

A型の頭部に押し当てた!

押し当てた瞬間スロットル開け、バーニアを全開にした

バーニアを全開にした瞬間、A型の目の前でボムが爆発した。

二機を爆発の光が包んだ。

すぐに光の中から221号機が姿をあらわした。

「シュウ!大丈夫か!?」

駆け付けた刃の220号機がすぐ側まで来ていた。

俺は221号機の損傷チェックを始めた。

左肘下から欠損、右肩アーマー損壊、全身の装甲の損傷、剥離。

「左手以外はたいしたことない。A型の方は?」

閃光の方を見ると徐々にA型が姿を表す

A型は頭部が無く、胸部の一部欠損して頓挫していた。

俺は一息吐いて、

「こっちは何とか片付いたな・・・セルツ曹長の方は大丈夫か?」

「さっきから通信してるんだがつながらないんだ!」

俺は機体を起こしながら

「急ごう!」

俺と刃は機体を走らせた。


少ししてC型とセルツ曹長の320号機が見えた!

二機とも組み合っているが、微動だにしない

「セルツ曹長!!」

通信するがやはり返事は無い。

更に接近したら、その理由はすぐに解かった。

二機とも互いにコックピットを剣で貫かれていた。

俺と刃はしばし無言で見つめていた。

俺は無言で通信回線を開いた

「隊長・・。こちらシュウ」

『こちらマークだ。』

心なしか苦しそうに隊長が応答した。

「敵VR三機を撃破。こちらもジェイス、セルツ両名をやられました」

『そうか・・こちらも二機やられた。すぐこちらに合流してくれ』

そのとき突如アラームが鳴り、緊急回線が開かれた。

『こちら左翼の支援分隊。敵VRと交戦中!

至急救援を!繰り返す・・・』

『シュウ、刃。こちらは手を離せない。二人で救援に向かってくれ』

「了解!!」

「刃、聞いてたな?」

「ああ、急ぐぞ!」

二機のテムジンは最高速度で向かった。

今いるのは右翼の支援分隊の近くだ。左翼の支援分隊とは

だいぶ距離がある。間に合うか!?

しばらくして左翼の支援分隊が見えた。

二機のA型と交戦中だった。

ベルグドルの数は六機まで減っていた。

接近するA型にベルグドルは右手のランチャーを放つが

軽くかわされ、ナイフでコックピットを貫かれ、頓挫した。

刃はA型にランチャーをうちながら回線を開いた。

「こちら攻撃第二分隊の御剣 刃軍曹だ。

貴公らを援護する。後方へ下がってくれ!」

「こちら支援分隊長のゴルド中尉だ。感謝する」

ベルグドルは弾幕を張りながら後退していく。

支援分隊と交戦していたA型は二手に分かれ、一方はそのまま追撃、

もう一方はこちらに向かってきた。

「シュウ!ここは任せて支援分隊の方を頼む!」

刃はその場で止まり、言い放つ。

「しかし!お前一人では無茶だ!!」

「たしかにムチャかもしれんが、二人残れば支援分隊の方は助からん。

それにそんな機体じゃあまともに戦えないはずだ。

支援分隊と協力して戦えばいけるだろう?」

たしかに刃の言うとおりだ。221号機はかなりの破損していた。

刃を支援分隊の方へ向かわせたら俺は確実にやられるだろう。

「わかった。死ぬなよ」

そう言って俺は支援分隊の方へ機体を向けた。

こちらに向かってくるA型を刃の援護射撃を受け、なんとかかわし

支援分隊の方へ急いだ。

支援分隊の方は混戦していた。

既に残り二機まで減らされていた。

一機のベルグドルが接近してくるA型に接近戦を挑んだ!

左手で殴りつけるが、A型は軽快なステップで軽くかわし、

素早く後ろに回り込んだ。

ベルグドルがA型を見失い、棒立ちしている所に容赦無くA型が

零距離でショットガンを二発放つ。

ベルグドルは頭部とVコンバーターを破壊され、

煙を上げながら頓挫した。

A型はもう一機のベルグドルに接近する。

俺はベルグドルに当たらないようにランチャーをうちながら突進した。

ちょうどベルグドルとA型の間弾幕を張りA型の足を止めた。

A型もベルグドルから距離を取り、ショットガンでこちらに応戦する。

その時A型のショットガンが突如爆砕した!

死角に移動したベルグドルがランチャーを発射したのだ!

そのスキに俺は距離を詰めるが、A型はナパームを二発投げた。

ナパームは221号機のすぐ左側と正面に着弾、巨大な火柱が現われた!

今ので左腕が肩から吹き飛んだ!

おまけにバランスを崩して倒れてしまった。

急いで体勢を立て直すが、A型はこちらには来なかった。

こちらを足止めして先にベルグドルを倒すつもりだ。

接近したA型はナイフで上から切りつけるが、

ベルグドルはギリギリ右に避ける。

避けながら右手のランチャーを左手に押しつけ、発射した。

A型の左腕が爆砕し、肩から下が吹き飛んだ!

しかし、ベルグドルもランチャーとマニピュレーターが吹き飛んでいた。

あのパイロットは始めからカウンター狙いで接近戦をしている。

ものすごい技量だ。あのベルグドルを乗りこなしている。

左手を失ったA型は残った右腕で殴りかかってきた。

その右手を装甲から火花が出るほど紙一重で避ける!

その時突如ベルグドルがバランスを崩した。

重心が高いため、バランスを崩したのだ!

このチャンスをA型は逃すハズは無い!

A型の拳が右のミサイルランチャーを捉えた!

鈍い音が響き、ミサイルランチャーは完全に潰された!

もう一度拳を振り上げるが、その拳が爆砕した。

221号機がランチャーをうったのだ!

俺は黙って見てた訳ではない。体勢を立て直し精密射撃モードに入り、

A型の動きが止まるのを待っていたのだ!!

ベルグドルが倒れる瞬間上体をひねり、右膝、右手を地面に付けた。

手を付けると同時に左肩のミサイルハッチを展開し、発射した。

ほぼ零距離で放たれたミサイルはA型に命中し、上半身が爆砕した!

「テムジン221号機のパイロットへ。助かった。ありがとう!」

ベルグドルのパイロットからの通信だ。

「いや、こちらこそ遅れてすまなかった。

その傷では戦えないだろう?後退してくれ。」

「了解した。すまない、後退する」

そう言うとベルグドルは一定の速度で後退していった。

刃の方は大丈夫だろうか?急いで回線を開いた。

「こちらシュウ。刃、大丈夫か?応答しろ!」

応答が無い!やられたか?

俺は機体を反転させ、高速機動をとった。


少しして二機のVRが見えた。

220号機はランチャーを地面に突き刺し、膝まついていた。

装甲は焼けだだれ、頭部の左部分と左肩アーマーが無くなっていた。

隣のA型は胴体を真っ二つに切り裂かれて炎上している。

「刃!大丈夫か?」

少し間を置いて回線が開かれた。

「ああ、なんとかな・・・。こっちもFCSと

左マニピュレーターをやられた。FCSのサブシステムもイカれて

応急修理したが、ブレードを展開するのがやっとだ」

なるほど、修理していたから応答が無かったのか。

「動けるか?」

「動くことには支障は無い。まだいけるさ」

「わかった。隊長の所へ急ごう。嫌な予感がする」

「了解!」

そう言うと刃は220号機を立ち上がらせ、高速機動を取った。

221号機もその後に続いた。


隊長が戦っていた最前線中央部へ到着した。

そこで目にしたのは友軍のテムジンの残骸だけだった。

その中の一機にシャインレッドのテムジンが頓挫していた。

『マーク隊長!!』

俺と刃はすぐさま機体を側に近づけた。

「ん・・シュウと刃か・・・無事だったか・・」

「隊長・・・一体何が・・」

刃が質問した。

「敵VRをなんとか・・一機撃破したとき左翼から・・A型二機

が増援にやって来た。左翼のテムジンは全滅したらしい・・・。

あっという間に撃破・・・された。お前達の通信の少し後だ。

その後二手に・・分かれ右翼と左翼の方へ向かっていった」

息も絶え絶えに答えた。

「右翼・・って支援分隊が!」

「シュウ、さっき通信を傍受した。全滅だ・・」

「くそ!」

俺はコンソールを殴りつけた。

「今まともに動けるのは・・・お前達二人だ。俺の事はいい、

後退しろ。命令だ!」

「しかし!」

「隊長を置いて行けません!」

俺と刃は思わず声を上げる

「緊急脱出のスイッチがイカれて・・・ハッチが開かないんだ。

お前達は・・生き残ることを第一に考えろ・・!!伏せろ!」

赤いテムジンが突如起き上がり、俺と刃を突き飛ばした!

次の瞬間俺達がいた場所を弾丸の雨が降り注いだ!

俺は136号機が徐々に形を変えてゆくのがハッキリと見えた。

赤い装甲が吹き飛び、手足が爆砕し、頭部のメインカメラが割れた!

「逃げろ・・・・早く・・・逃・・」

言い終わる前にコックピットが撃ち抜かれた!

次の瞬間、機体が爆発、炎上した!

『たいちょおおおおぉ!!!』

俺と刃の叫び声が辺りに響き渡る。

俺は後ろを見ると三機のアファームドが火器を構えていた。

「よくも・・よくも隊長を・・」

「刃・・・どうする?戦うか、逃げるか・・」

刃ははっきりとした声で答えた。

「決まってる!」

俺は涙を拭きながら、

「すまん。愚問だったな。俺も同じだ。隊長の・・みんなの敵討ちだ!」

アファームド三機は構えを解き、ゆっくりとこちらに

向かって歩き始めた。

「二対三か・・こっちは機体はガタがきてる。

向こうは無傷。おまけに数的にも不利。どうする?」

刃は俺に尋ねてきた。

俺は少し考えた。この不利な状況を打開する方法を・・

結果・・一つしか思い浮かばなかった。

「残る方法は・・・一つしか思い浮かばない・・」

俺はそう答えた。

「リミッターの解除か・・・」

刃も同じことを考えていたようだった。

「しかし、MSBSのリミッター解除したら何が起こるかわからんぞ!」

「最悪、もってかれて植物状態だな・・」

MSBSリミッターを切っての事故はいくつか聞いていた。

「わかってる。MSBS以外の全ての

リミッターを解除、最大出力で行く!」

「稼働時間は?」

「最大で九十秒だ。それに機体が持つかわからない・・

下手をすれば損傷個所から爆発するかもしれない」

「面白いじゃないか!九十秒で三機、俺の機体は

FCSが使えないから接近戦で行く!援護頼む!」

「了解!A型二機は任せろ!刃はC型の方を頼む!」

「了解!我が剣技・・得と味合わせてやる・・」

俺はふと辺りを見渡した。

辺りに煙と炎が立ち上り、熱気で視界がぼやけてる。

「戦場は地獄か・・・」

俺はスイッチ類を操作しながらつぶやいていた。

「地獄は俺の職場だぜ!」

刃が「ちっちっち」と舌打ちしながらそう言った。

「たしかに・・・221号機リミッター解除、タイマーセット!」

「220号機リミッター解除、いくぞ!!」

二機のテムジンは機体を走らせると瞬時に最高速まで到達した。

物凄い加速Gが体を襲う!

アファームドはこちらの動きを察知して散開して手持ちの火器を発射した

しかし、こちらの回避速度は上がってる!

左右に走行またはブレードで防御、打ち落としながら

一気に距離を詰める!!

刃はブレードを展開、最高速のまま切っ先をC型に向け突進した。

「飛閃天剣流!牙狼閃!!」

C型はショットガンを放つがお構いなしに突っ込む!

右腕の装甲が剥離していく!

C型はギリギリまで引き付けて左へかわした。

220号機はすぐざま止まり、振り返って同じ技を繰り出す!

C型はショットガンを捨て、マチェットを引き抜き右手で構える!

高速で接近してくる220号機とC型が交差する!

鈍い音が響き合った!

220号機は右肩を、C型は右脇腹をそれぞれ捉えていた。

220号機は距離を置き、向かい合った。

「ちっ、やるな・・」

C型は交差する瞬間こちらの脇腹を捉えていた。

自機の右腕と引き換えに・・・

C型はマチェットを左手に持ち替えた。

「残り七十五秒か・・・」

今度はC型がこちらに向かってきた!

220号機はその場で体を左へひねり、ブレードを

左肩に当てた独特の構えに入った。

C型は正面から突っ込んでくる。距離500!

まだ早い・・

C型は距離300の所で右に進路を変えた!

220号機は左足を軸にして右回りで高速で回転した!

C型は右側から接近してくる。距離200!

「飛閃天剣流!回羅閃斬!!」

体をその場で一回転させ、遠心力をつけたブレードが

C型を真っ二つにするはずだった。

「しまった!!」

C型はスピードを殺し、ワンテンポ遅らして220号機の攻撃を

やり過ごしたのだ。スピードの変化で計算をミスったのだ。

スキだらけの220号機に接近してきた

C型はマチェットを横へ一閃させた!

220号機の首を切られ、頭部が宙を舞った!

頭部を失い、コックピット内が真っ暗になる。

「まだまだ!これから!!」

刃は強制排出レバーを引き、コックピットハッチを排出した。

「このやろおぉう!!」

220号機は損壊した左手でC型を殴りつけ、

高速機動で距離300ほど間合いをとった。

もう左手は使い物にならない。しかもコックピットは剥き出しだ!

センサー類も頭部が損失したため使えない。自分の目だけが頼りだ。

外から生暖かい風と共に焦げ臭いオイルの匂いが鼻に届く。

「残り五十八秒・・・距離およそ400!」

双方お互いの出方を伺い、同時に地を蹴った!

加速Gと風圧で刃の顔が歪む!

お互い剣の間合いに入ったと同時に剣を振り落ろす!

220号機のブレードをC型のマチェットが弾き返す!

C型はブレードの腹を狙って返している。

刃の部分だとマチェットといえど

切られてしまうからだ。C型のパイロットも並の剣の腕ではない!!

二、三回剣を交え、二機は同じに後ろに跳躍した。

着地ど同じにC型はマチェットを投げつけた!!

220号機も右足を軸に機体を左回りに高速で回転させた!

「飛閃天剣流!飛空閃!!」

220号機は遠心力をつけ、ブレードを投げ放った!

マチェットと光刃のブレードが空中で交差する!

220号機のブレードはC型の右胸を捉え、

右腕も根こそぎ吹き飛ばした!

C型のマチェットは220号機の左胸に深々と突き刺さっていた!

コックピットのすぐ側だ!

傷口からオイルが噴出し、ゆっくりと前に倒れこんだ!


「おまえらの相手は俺だ!かかってこい!!」

俺は広域回線で叫んだ!敵にも聞こえたハズだ。

二機のA型は不規則に動きながらバズーカを放つ

221号機はランチャーで応戦しながら回避する

二機のA型は断続的に攻撃している。近づけない。

稼動時間もあと七十七秒。時間が無い!

とにかく片方をなんとかしないと!

俺はスイッチを操作し、弾幕の隙間を見て

立ち止まり、右手のランチャーを構えた。

次の瞬間ランチャーから一条の閃光が放たれた!

閃光は回避運動をしていたA型の右腕を吹き飛ばし、

A型は衝撃で倒れこんだ!

機体の全出力をランチャーに回して放ったのだ!

しかし、ランチャーにもかなりの負荷を与えてしまった。

もう二度と最大出力は使えないだろう。

俺はブレードを展開し、傷ついたA型に飛び込んだ。

その時、別のA型が間に入りバズーカを乱射した。

221号機は二発かわし最高速に達したところでジャンプした。

そのあとバーニアをフル稼働し、空中を滑空した!!

二機のA型を飛び越し着地、反転して後ろからA型に接近する!

既に体勢を立て直したA型がナイフを装備し接近してきた!

こちらもブレードを展開、左肩にブレードを当てた構えのまま突進する!

「ジオ・シュラッシュ!!」

A型と交差した瞬間A型は右肩から左脇腹に切り裂かれ、

真っ二つになった機体は砂埃を上げながら地面を転がり爆発した!!

「くっ、しくじったか・・・」

221号機の左脇腹がえぐられ、オイルが流れていた!

あの瞬間A型のナイフが脇腹捉えていたのだ!

完全にかわしたと思ったんだが・・・

その時ブレード部分にヒビが入った!

「残り三十八秒・・持つのか・・?」

A型はバズーカを放ちながら接近してきた!!

俺は機体をA型の方へ向ける。

その時右前方である光景が俺の目に飛び込んできた。

刃の220号機が大地に倒れている所だった。

俺はその場で凍り付き目を見開いて見ていた。スローモーションを

見ているみたいに220号機はゆっくりと倒れていった!

俺は急いで回線を開いた!

「刃!応答しろ!刃!!」

何度も呼びかけるが応答は無い・・・

まさか・・・刃がやられるなんて・・・

その時A型のバズーカが右肩に直撃した!

損壊した右肩アーマーを完全に吹き飛ばした!

コックピット内でアラームが鳴り響く!

A型は手にしていたバズーカを捨て、ナイフを装備してさらに接近する!

隊長や同僚、そして刃までもやられてしまった。

ゆっくりと顔を接近するA型に向けた。

「許さない・・お前ら絶対に許さない!!」

稼働時間は二十七秒を切っていた。

221号機はブレードを展開、バーニアを全開にし、

最高速でホバー走行しながらA型に切っ先を向ける!

「くらえぇ!グランド・ラム!!」

急速に接近してくる221号機にA型は右に回避行動を取る

「甘い!!」

俺はバーニアの出力を調整し右に進路を取った。

更に回避運動を取るA型だが、こちらの方が速い!

ブレードはA型のコックピットに深々と貫いていた!

221号機はA型を引きずったまま、C型に進路を向ける

残り稼働時間が十八秒を切った!間に合うか!!

C型は220号機のブレードを拾い上げ、構える!

残り十三秒を切った所でブレードから光刃が消えた!

突如ブレードのヒビが大きくなり、真中辺りから真っ二つに折れた!

ブレードの先端が突き刺さったままのA型は転げ落ちた!

軽くなった221号機のスピードが更に上がる!

コックピット内のアラームがけたたましく鳴り響く!

残り八秒!距離500!!

C型はブレードを突き出した!

「うおおおおぉおぉぉ!!!」

雄たけびと共に折れたブレードを突き出す!!

その時脇腹が突如爆発した!

損傷個所から流れ出たオイルに引火したのだ!!

その衝撃でバランスを崩し、前屈みになってしまった。

突きだしたC型のブレードは221号機の頭部を真っ二つに切り裂いた!

221号機の折れたブレードはC型のコックピットを完全に潰していた。

C型は衝撃で後ろに吹き飛び、二度と動かなかった。

221号機も急制動をかけるが鈍い音と共に右足首のフレームが折れた!

バランスを崩すがなんとか俺はレバーとスロットを細かく操作して

必死に体勢を立て直そうとした。

俺はタイマーを見た。稼働時間残り三秒!!

残り二秒・一秒・0秒!!

221号機は力を失い盛大に地面に倒れた。

砂埃を上げながら転がり、機体は止まらなかった。

俺はその時の衝撃で意識を失った。



「・・ウ・・お・・・ュウ・・」

ん・・・・

「お・ュウ・・きろ!」

なんか顔が痛い・・

「起きろ!シュウ!いい加減に起きろ!」

左の頬を殴られる。

「痛ってえな!何をする!って刃!!生きてたか!!」

そこには薄汚れた顔の刃が立っていた。

俺はまだ221号機のコックピットの中だった。

「まあな。ギリギリ攻撃がコックピットから外れてな。

あと少しずれてたら助からなかった。それよりもシュウ、

お前もムチャするな。俺はコックピットのお前を最初見たとき

死んでんじゃないかと思ったぞ」

「それはお互い様だ」

俺と刃は大笑いをした。

俺は221号機のコックピットから抜け出した。

俺の愛機はボロボロだった。俺はしばらく辺りを眺めていた。

「刃、220号機の通信回線生きてるか?」

俺は振り向き刃に話しかけた。

「ああ、なんとかな」

「じゃあすぐ連絡して帰ろうぜ!疲れちまった」

「じゃあ220号機まで歩かんとな」

刃は右の方を指差した。

「どう見ても一キロ以上あるぞ・・・」

俺は疲れたっぷりに言った。

「歩くしかないだろ。いくぞ!」

そう言うと刃は自分の220号機に向かって歩き始めた。

「待てって。置いてくな!」

俺は刃に向かって走りだした。



次回予告!!


RNA遭遇戦で203攻撃大隊は事実上壊滅した。

あれから三日。突如総司令室に呼ばれたシュウ、刃両名は

一枚の転属書を受け渡される。

その部隊とは今度新設される特殊部隊だった!!

次回結成・前編へ、出撃準備!!

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