感傷詩集



せつなき野ばら



  真紅の花びらにおいた露
  せつなき野ばら
  遠い記憶にもその姿のない
  母という人

  わずかなやさしさのために
  なさねばならなかったたくさんのこと
  早く、自分の足で歩けるようになりたかった

  刺持ち真紅の花を守る
  せつなき野ばら
  強く、強く、なりたかった
  遠い日の、苦い、記憶






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時は



  あこがれは少女の姿した
  秋のたそがれ

  もはや
  思いだすこともできない
  その声も姿も

  時は無慈悲な友達だ

  運命の歯車に
  そのまま姿を消した
  秋のたそがれ

  幼すぎた僕には
  手にすることさえ
  かなわなかった

  人は手に入らないものを欲しがる生き物
  もがき、あがき
  心が流す、たくさんの血

  永遠に癒えないと思った傷でさえ
  かさぶたにしてくれる

  こんなとき
  時はやさしい友達だ






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  雪の日の
  僕の居場所は丘の上

  ピリリと冷えた空気も
  白く続く道も木立も
  吐く息のぬくもりでさえも

  寂しい色に塗りつぶされて
  いさぎよい

  誰も彼も
  雪の日には一人でいない

  家族は暖炉のまわりに集まり
  恋人たちはあたたかな窓辺に肩をよせ
  子供たちは広場ではしゃぐ

  僕の居場所は丘の上
  暖炉の赤い火があげる煙も
  はしゃぐ子供の姿も
  くりかえされる人のいとなみも

  寂しい色に塗りつぶされて
  ここちよい






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