今、俺は駅前に設置されているベンチで人を待っていた。
俺は今日からこの街で暮らす事になり世話になる家の、つまり俺の従姉妹を待っている・・・・・が
このベンチに座ってそろそろ2時間になるだろうか?
ベンチの下積もっている雪が靴、靴下、そして俺の足をしっかりと冷やし俺の血行をすこぶる悪くしている。
足だけではなく、もう体全体が限界だ。
少しだけでも暖を取らないと明日にはマッチ売りの少女のようにばあちゃんの所へ召されてしまう。
祐一(ホットのコーヒーかお茶でも買ってこよう)
そう思い、ベンチから立ち上がったのはいいのだが・・・・・
足に力が入らない
勢いよく立ち上がったのはいいのだが勢いに足が耐えれない
力の方向に従い体が前に倒れこみ目の前の通行人にぶつかった。
少女「きゃぁっ!!」
・・・・・ていうか押し倒した。
少女「痛っ・・・た」
俺は彼女を覆い被さるように倒れていた。
すぐに立ち上がろうとするが寒さでうまく動けない。
手も足もそりゃあプルプルと振るえて・・・て生まれたての子鹿かよ俺は
とにかくすぐに立ち上がらないと
俺は両手両足に懇親の力を入れ少しずつ立ち上がる。
腕と腰で上半身を持ち上げ
膝で重心を保ち右足で地面に踏みつけ膝立ち状態になり
左ほほに平手が飛んできて
俺は空のかなたへと・・・・・・
少女「何するのよっ!!この変体!!!」
彼女は上半身を起こした状態で俺に音速のビンタを放った。
少女「何考えているのよ!いきなり押し倒して・・・・・警察呼ぶわよ!!」
相当怒っている。
普通はそうだろう。
相手がいきなり見ず知らずの人間にそれも男に押し倒されたのだから普通はもう俺は周りの人間に捕まって警察に突き出されているだろう。
せめての救いはここに他の人間がいなかった事だ。
祐一「すみません。ワザとじゃないんです。
長時間ここに座ってたので立ち上がったときにバランス崩したんです」
俺はとにかく謝ったが彼女は冷たい目で俺を見ながら非難の言葉を浴びせている。
でも、さすがに冷たく貴方貴方と呼ばれるのもあまり気分のいいものではない
少女「とにかく信用ならないわね貴方」
祐一「相沢祐一です」
これ以上この言い方で貴方と呼ばれることが限界になりかけてきたので自己紹介をしてみたのだが
少女「あなたの名前のなんてどうでもいいわ」
予想通りの答えが返ってきた。
少女「だいたい・・・・あれ・・・?
相沢・・・・祐一・・・・何処かで聞いたような・・・?」
何処かで聞いた?
俺と同名の有名人などいただろうか?
少女「たしかに・・・何処かで・・・」
彼女は右手を顎におき「うーん」やら「どこかで」を繰り返しながら記憶の中を捜している。
祐一(痴漢・・・・じゃないけど、こんな相手にそこまで考え込まなくてもいいだろうに)
しばらくして彼女は何かを思い出したかのように「あっ!」と声をあげこちらを見た。
少女「もしかして・・・・名雪の従兄弟?」
祐一「名雪って、水瀬名雪のことか?あんた知ってるのか!?」
水瀬名雪・・・・俺の従姉妹にして俺をこんな所にほったらかしにしている張本人だ。
だけどなんで彼女が名雪知ってるんだ?
少女「知ってるも何も私は名雪の親友よ」
祐一「なるほどね・・・」
それなら合点がつく親友なら俺のことぐらい話題に出るだろう。
それにしても親友・・・・親友ねぇ・・・・
ハッ!!Σ( ̄■ ̄)
親友・・・・名雪の親友って事はこいつは俺と同い歳だよな?
ということは俺と同じ学校の確率が非常に高い
シマッタ――――ッ!!
イキナリ物凄い弱みを握られてしまったんじゃないのか!?
もし、ことあることにこいつが今日のことを持ち出してくるのなら・・・・・・・
悪夢だ・・・・・
なんとしてもそれを避けねばならん!!
祐一「あの・・・」
少女「身元もわかったことだし、この事は今度キッチリ話し合いましょ、相沢君」
祐一「なっ!?だからあれはワザとじゃないって言ってるだろ!!」
思わず声が大きくなる。
少女「ワザとでしょうがワザとじゃないでしょうが貴方は私を押し倒したの事は事実でしょう!!」
無効も声を上げてきた
何なんだ?
どうして俺がこんな仕打ちを受けなくてはならんのだ?
胸の奥から怒りがふつふつと湧き起こる
今からこいつにガツンと!!
祐一「おい・・・」
少女「ちょうどいいわ。今から名雪の家に行きましょう」
・・・・・・は?
少女「どうせ名雪のことだから貴方のこと忘れてるだろうし」
今から?
俺は居候初日から問題を持っていかなくてはならんのか!?
ヤバイ!!
マジでヤバイ!!
こんな状況をやってきたら家から追い出されかねない
少女「さぁ行きましょ、相沢君」
彼女は早足で歩き出す
止めないと、俺は急いで彼女を追いかけた
* * *
10分後
俺は見事に彼女を見失った上、道に迷っていた
俺は迷ったあげくに小さな社の前で途方に暮れていた
何処をどう歩いたのかも解らず道の奥にひっそりと佇む社の前にいた
この社、規模からして神主等の所持者はこの他の場所にいるのだろう
周りを見渡しても小さな綱鳥居しかなく、どこか人通りのあるところへ続いてそうな道はなく
袋小路の奥にひっそりと佇んでいた。
見た目は古臭いが作りはしっかりとしている
祐一「どうやらこの土地に古くからある社みたいだな」
しかし、正面には賽銭箱等はなくその本殿の扉は頑丈な扉で閉じられている
祐一「えらく物々しい社だな………怪しすぎるぞ……しかし………」
俺の中にムクムクと膨れ上がる好奇心
この純真な少年心をいかにに押さえ込めというのだ
いや!!できない!!!
こんな輝かしく美しい感情を常識や理性という枷で閉じ込めてしまったら
コロンブスもマルコポーロもあの様な冒険も発見もできなかっただろう!!
もう、あんな女のことなんか知ったことか!!!(なげやり)
祐一「という訳で……」
俺は社に近づき社に上がり扉の取っ手を掴み…………引く
ギィィィィィィ……
祐一「こんなに簡単に開いていいのか?」
扉はあっけなく開いた
音はともかく蝶番に油をさしたばかりかと錯覚されるほどに
祐一(実はけっこう人が通ってて修繕を繰り返しているのか?)
まっ、今はそんな事はどうでもいい
今や俺の好奇心はこの中にしかないのだ
俺は開いた扉から中の様子を覗き見た
中は意外と小さく、御神体が中央に飾られているだけだった
俺は中に入りご神体を見る
この社の御神体はどうやらこの短刀のようだ
かなりの間中には誰も入っていなかったらしく御神体にまでホコリが積もっている
祐一「おいおい、外は色々やってるのに中には手もつけてないのかよ」
こうして見てみると余りにも哀れなご神体
祐一(建物より大切にされていないとは………)
俺は何か妙な同情心が湧いてしまいこいつのホコリを落としてやろうと思った
俺は一応ご神体を拝みおもむろに握るとポケットから取り出したハンカチで短刀のホコリを落す
祐一「けっこう積もってるなこの調子じゃ中もボロボロなんだろうな……」
ちょっと気になり俺は鞘から短刀を抜取り……
ピキン
……………
………………………
…………………………………
祐一「………ピキン?」
俺は恐る恐る短刀を引き抜いていく
中途半端に厳重な社のご神体………
その鞘から抜き出された短刀は………
誇りまみれになっていたとは到底思えない美しく妖艶な光を
その根元に少ししか残っていない刃から発せられていた
祐一「………………」
スッ(鞘を前に突き出す)
クルッ(鞘をひっくり返す)
ブンブン(上下に振る)
祐一「ふぅ………」(鞘を持った手で額を拭いて)
祐一「俺のせいじゃないなっ!!」(遠くを見ながら極上のスマイル♪)
そうだ中身なんて最初から入っていないじゃないか!!
もともと折れていた刀が納められていたんだ!!
だから俺のせいじゃない!
俺のせいじゃないぞ!!
現状を理解し俺はご神体を鞘に収め置いて帰ろうと………
……………
………………………
…………………………………
これ……なんか鞘の上から刀に鉄心打ち込まれているんですけど………
これ、封印か何かですか?
祐一「…………ふぅ」(再び額を拭く)
再理解完了
祐一「これ打ち込んだ時に折れたんだな!!」(スマイル¥0)
そうかそういう事か!!
さっきのピキッ!!……は欠片か何かが擦れた時に出た音なんだ!!
そうとなればとっとと立ち去ろう!!
俺はご神体を元の場所に置き社の扉を閉めもと来た道(に行けるだろうか?)を速足で歩いていった
再び暗くなる社の中………
短刀が怪しく光る…………
……ニンゲン
戸ヲ開ケタ
……我ヲ抜イタ
次ハア奴カ?
ア奴ハドコダ?
………我ヲ
―――ヲ振ルエ
暗き社の中にて
響く一つの妖の声
其が求む者の名は
―咎 人―
