方舟教室連載演劇
『魔女っ娘戦隊まぎまぎルーン3rd』
監修:エテルーナ魔法学園(一部)演劇部
担当:ぽけぽけ彩凪(作)
黒丸凡太(画)
全てはあの時……。学校帰りに小さな熊のマスコットを拾ったあの時から始まった。少し前はクラスの女の子のほとんどが愛用の鞄にぶら下げていた『お誕生日クマ』と呼ばれる人差し指より少し大きいぐらいのマスコット。色はカラフルな友達のクマに比べると、オーソドックスといえなくもない茶色。
私だって落っこちていた熊が大きなぬいぐるみだったり、北海道土産の定番の木彫りの熊だったりしたら拾って帰ることなんかしなかったわよ。
そう、そのマスコットの熊さんにはどこぞの少女の意思が封じ込められていて、元に戻るためには私の協力が必要だなんて不幸で頼まれる側にしてみたら面倒ごと以外の何物でもない状況に陥っているなんていうことを、その場で説明とかされて知っていたら、拾って帰ることなんてしなかった、絶対に。いや……多分。
そんな後悔を後々するんじゃないかなと思えるような現実が、確かに今私の目の前にある。その現実は今ひとつ積極的な反応を見せない私を訝しげな様子で見遣る。表情の固定された熊のマスコットなので、あくまで私の予想だけれど。
『あの? よろしければお話を続けたいと思うのですよ?』
口を動かすこともせず、熊のマスコットから聞こえてくるその声は、間が伸びたというか、お気楽極楽というか、何も考えていないというか可愛くもあり、いらいらもさせる、そんな声だった。
「なんか、あんたの話し方を聞いているとね、それだけであんたの境遇がわかったような気がするわ。そんな話し方をするのって、どこかのお嬢様か、お姫様ぐらいよ?」
少々皮肉めいた私の言葉にも、その子は、感激したような声をあげた。
『すごいですー。少し違いますけど、アニエスはそんな感じなのですよ』
自分のことをアニエスと名前で呼ぶ熊のマスコットに誉められても……。こんなところを同室生に見られたら同情されるだろう、いろんな意味で。
「少し違うって、どこがどう違うのよ?」
『えと、アニエスはお姫様じゃなくて、悪の秘密結社の皇帝さまなのです』
数秒の沈黙を得て、私は一番気になった単語を繰り返してみた。
「……悪の秘密結社?」
『ハイ。正真正銘の皇帝さまなのです☆』
次の瞬間、私は部屋の窓をガララと勢いよく全開にし、マスコットを右手にぎゅっと握り締めていた。
『ど、どうしたんですかー!?』
「よくもまぁ、いけしゃあしゃあとどーしたのですかー?とかいえるわね……。私の同情心に付け込んで、悪の道に引き込むつもりだったんでしょ? 残念ながら、そうはいかないわ。追い出してやるわ、今すぐに!」
『違うのです、違うのですよー! お話を聞いてくださいなのですーっっっ』
私の指につまみあげられているクマのマスコットはまさに宙吊り。わざと揺らしてみたりして……。
「……何、何が違うっていうの?」
同情したわけじゃないんだからと自分に言い聞かせ、私は再び部屋のベットの上へとクマのマスコットを戻してやる。
『ひどいです、いじわるです! やることが鬼さんなのですよーっ!』
悪の秘密結社の皇帝さんを名乗る奴にいわれたくないけど。
「よし、休憩終わり。命綱なしのバンブージャンプに再挑戦?」
『……悪の秘密結社は悪の秘密結社でも、それはお芝居のお話だったのですよ』
自称皇帝のクマさんの言い分を素直に信じるなら、その秘密結社はどこかのおもちゃメーカーを隠れ蓑とした一種、演劇集団のような組織だという。悪いことをするのは、あくまでステージの上であり、場外での乱闘をすることもあったが、決してカタギさんを巻き込むことはしないという集団らしい。
「でも、無害な団体の皇帝さんが、どうしてそんな姿にされているのよ?」
「悪い魔法使いさんによってこんな姿にされてしまったのですよ……。お友達、じゃなくて幹部の皆さんもみんなやっつけられて、キグいえ、結社はのっとられてしまいましたのです。ああ、皆さんが心配で心配でたまらないですっっ」
自分は12体のクマのマスコットに封じられ、幹部たちは簡単にのされた挙句、行方がわからない。なんと情けない悪の秘密結社なんだろう。
「人質にされてしまったのです……」
おずおずとクマさんはそう呟いた。
「悪の秘密結社を名乗るなら、もう少し非情になりなさい。だからこんな目に遭うのよ」
「すいませんです……」
謝らないでよ。私が悪いことをしているような気がしてくるじゃない。そんな感情をごまかすかのように、私は思わず呟いていた。
「でもまぁ、何が嬉しくて12体のクマのマスコットなんかにあなたの意識とやらを封じたのかしらね?」
TVとか観ててもたまに思うことだけど、邪魔だなーと思っているなら殺しちゃえばいいのに。この皇帝さんに生きていてもらわなくちゃいけない理由があるっていうなら別なんだろうけど……あ、まずい。なんだかんだいって、クマさんの言葉に興味が沸いてきちゃったみたい。自分でいうのもなんだけど、これって危険な目に巻き込まれちゃうことにならないかしら。
「その通り。でも、少し気づくのが遅かったみたいだけれどね〜」
『ニャーン♪』
私は、その声に反応して振り返り、振り返ったことを即座に後悔した。黒い猫耳に黒いレオタードに黒いタイツ。そして手と足には猫をイメージした大きな手袋と同じくブーツを装着。胸にはあからさまに魔法の光を放っている胸当てに似た防具を身につけた一人の少女が不敵な笑みを浮かべている。顔の輪郭は何となく把握することができるが、顔は猫耳と一体化したバイザーによって遮られ判別することができない。しいていえば、猫娘って感じ。でもって、あからさまに玩具の電子音ぽい猫の泣き声。
「うわ、ニャーンとかボイスチェンジャーとか使っちゃって、もしかしてヘンタイさん?」
何気ない?私のそんな一言に、一瞬少女の周りの空気が凍りついた。
「……これはセンサー音よ!」
再び『ニャーン♪』という声も彼女の台詞の後を追う。
「センサー音だか駆動音だかなんだか知らないけど、鍵のかかった窓からずかずかと勝手に入り込んできて、不法侵入で犯罪者としての身分は確定よね」
「……おとなしくそのクマ公を渡せば、命だけは助けてあげるっていいたいところだけど、余計なことまで知ってるみたいだし、少し痛い目に遭ってもらおうかな?」
『ニャーン♪』
余計なこと云々より、多分ヘンタイ犯罪者扱いされたことが気に入らないのでしょう。
「クマ公を渡しなさいって、あなたの仲間が勝手に捨てたんでしょ? それを渡せとか何とか。言ってることがわかんなくない?」
方舟寮の中はむやみに魔法を行使してはいけない決まりになっている。けれど、この場合は、正当防衛、やむない事情に該当するはず。私はそう自分を納得させて机の引き出しにある呪符を取り出し、その猫娘に向き直った。そんな切り札があったから私はまだ余裕があった。そう、その時までは。
「護身用にと気楽な気持ちで習得していた紫電符が役立つときがくるなんてね。電撃で文字どおりの黒(コゲ)猫にされたくなかったら、この部屋から出て行って!」
「やれば?」
挑戦的なしぐさで手招きする黒猫。次の瞬間、管理人や風紀委員会の連中への言い訳の苦労なんか忘れて、紫電符を黒猫へと投げつける。札が黒猫に触れた瞬間、紫色の稲妻に黒猫の体が包まれた。まるでアニメのように真っ黒コゲになり、ぷすぷすと身体中から煙を上げている。
「エテルーナの生徒をなめるから、こういう目に……」
手ごたえを感じていた私は思わず言葉を失った。確かに黒猫は電撃を受けて真っ黒コゲになった。なったけれど……。
「げほんげほん。なかなかやってくれるじゃないの、ん?」
口から黒煙を吐いた次の瞬間には、黒猫は電撃を受ける前の状態に戻っている。もちろん、何のダメージも受けていないようだ。
「何よそれ……」
目の前にいる黒猫は漫画やアニメに出てくるコミカルなやられキャラみたいに私の魔法を受け止め、見た目はともかく最終的に無効化してしまった。
「それはコミカルフィールドっていいますのです。この結界のおかげでみなさんの攻撃も全然効かなかったのですよ!」
だ、大ピンチだわ。私は必死に考える。こうなったら、大声を上げて近くの部屋にいる風紀委員の誰かに助けてもらうか、扉を背にしている黒猫をすり抜けて、クマさんと共に逃げるか。
「ふっふっふ、妙なことをたくらんでも無駄だわよぉ?」
『ニャーン?』
黒猫が間合いを詰めてくる。私が決断を迫られたそんなとき、突然、ガシャーン!!というものすごい音と共に、窓ガラスが粉砕され、無数の小さい物質が空気を引き裂いて私の部屋の中に飛び込んできた。
「イタタッ! な、な、な、何ッ!?」
バタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!バチバチバチッ!!
その物質は窓ガラスの反対側の壁に当たり、部屋中を跳びまわった。私は無意識のうちに、その物資のひとつをつまみ上げる。
(なにこれ、プラスチックの固まりみたいだけれど?)
球状の2oぐらいの物質。それは身長20p程度の大きさの女の子の人形が持つ、銃から放たれた弾みたいだ。その人形は私のことは無視して、何か長い棒を銃から外して、放り捨てると、スカートの中から取り出した新しい棒を、銃に取り付けた。そして黒猫の方へ銃口の先を向けちゃったりしている。でも、当たると確かに痛いけれど、紫電符をものともしなかった黒猫に通用するとも思えない。とはいってみたものの、なんか黒猫が動揺してるし。
「こ、こいつがここにいるってことは、あのまぎまぎとか言うくされ魔女っ娘が……うぶっ!?」
『ニャニャッ!?』
べししししという音と共に、黒猫にプラスチック製の弾が多数命中。命中する都度、まばゆい光を放って弾がはじけているようにも見える。そして、私が何より驚いたのは、
「イタタタタタタタタタッ!?」
黒猫がダメージを受けているように見えるところだった。
「くそっ、とんだ邪魔が入ってしまったわ! 今回のところは別段何もしないで見逃してあげるけど、次は……うぶぶぶぶっ!?」
『ニャ、ニャニャニャニャッ!?』
黒猫が話しているにも関わらず、女の子の人形はひたすら黒猫に弾を叩き込んでいる。無表情なのが、怖い。ついに痛みに耐えられなくなったのか、黒猫の姿は忽然と私の部屋から消えた。
「た、助かったのですか?」
ベットの上に転がっていたクマさんが泣き出しそうな様子で声を絞り出した。
「多分。この子が私たちに危害を加える気がないならだけど……」
そんな私の言葉がわかるのか、その子はスカートの中に銃をしまいこみ、代わりに少し前の型の携帯電話を取り出した。
『……ん』
どうやら、電話先の相手と話せといっているらしい。私は意を決して携帯を手に取った。
「もしもし?」
『だ、大丈夫!?』
電話先の相手は、私と同年代の、それもどこかで聞いたことのあるような声だった。
『ごめんなさい、私フライングブルームの魔法がどうも苦手で、走ってたら、間に合わなかったみたい……あー、ごほん。もうわかってると思うけど、そのクマさんを傍に置いている限り、先ほどの黒猫のような連中がまた襲い掛かってくるわ。それは部屋の中かも知れないし、学校帰りの通学路かもしれない。はたまたシャワー室の中かもしれないし、テスト中の教室かもしれない。とにかく、襲い掛かってくるの、わかる?』
わかるような、わかんないような。
『あんまりわからない方がいいかもしれないわ。とにかく、そんな連中と私たちは戦っている。あなたも私と同じ立場に立って戦うのも自由だし、私たちに守られるだけの存在であってもいい。だって、あなたと同じようにクマのマスコットを拾った娘があと11人いるんだから。もちろん、そのクマさんを早々に連中に渡す手もあるけれど、そんなことする子のところに、そのクマさんはやってこないものね。そうそう、私たちが信じられないっていうなら、早急に風紀委員のお友達とかに助けを求めることをオススメするわ。お巡りさんじゃ信じてもらえないと思うし』
……知り合いに、こんな機関銃みたいな話かたをする娘っていたかな? いや、今問題なのは、そんなことより。
「私と、そのクマさんを守ってくれるっていうあなたは何者なのよ?」
「私は、魔女っ娘戦隊まぎまぎルーンの一人、ルーン、ブツッ……ツー、ツー、ツー」
思わず切ってしまった。それで任務が完了したと判断したのか、女の子の人形は、携帯と交換に、携帯番号をメモした紙を私に手渡すと、割れたガラス窓から夜の町へと姿を消した。
「いっちゃった……」
そう、後片付けも何もせずに行ってしまった。黒猫も、一番の被害をこの部屋に与えてくれたあの女の子の人形も。
「いや、逃げたな」
そう、全てはあの時から始まったの。一年間にわたるコミカルでバカらしく、でも命懸けの誰に話すこともできない戦いの日々が。
■ 演劇部主催の企画に参加するには?
この『魔女っ娘戦隊まぎまぎルーン』は一部の演劇部員が作り上げたシナリオを演じて頂く、連載企画です。生徒の皆さんには魔女っ娘戦隊の中心メンバーであるまぎまぎルーンとなって、悪の秘密結社をのっとった悪の魔法使いとその手下と戦っていただくか、毎回どこかで襲われるクマさんマスコットの守護者として、悪者に襲われて頂くか、特撮ヒーロ番組に登場する、不幸な目にあうことが多い警察役(この場合は風紀委員か、懲罰委員)を演じていただくことになります。参加希望は下記のフォーマットにしたがってメールを送っていただくだけでOKです。参加者募集は方舟教室2号到着(追加募集は3号到着)まで。
● キャラの名前と希望配役
参加するキャラの名前(お一人キャラ一名です)と、希望する配役(まぎまぎルーン、守護者、風紀委員、懲罰委員、悪役)を選択します。なお、まぎまぎと悪役はオーディションが行われます。とくに悪役はかなり悪者扱いされますので、広い心と根性が必要です。
● 性格、行動指針(積極的・消極的)
みなさんのキャラはどのように配役を演じるでしょうか? シナリオ無視で積極的ならかなり好戦的なまぎまぎルーンや風紀委員となりますし、シナリオどおりとか消極的なら作戦を立てたり、仲間のサポートに回るまぎまぎルーンになったりするかもしれません。表記がない場合は、キャラクターシートにそった演技をすることになります。
● もっと解かりやすく説明してよぉ……
という、お客様のために、簡単な表で説明しましょう。後に行けばいくほどのめり込み具合の深い方向きの説明となります(笑)
・参加登録:これをするだけであなたのキャラはまぎまぎルーンに登場できます。逆に登録されていない場合は、最終回まで無断で登場させることはありませんので、ご安心ください☆
・希望キャラクター申請:守護者、まぎまぎルーン、風紀ならびに懲罰委員、悪役として配役の希望を申請することが出来ます。ただし、希望者が多い場合は選考になりますし、とくにまぎまぎルーンは最終回間際まで、でてこれない可能性もあります(笑) あと、性格行動指針の登録が必須となりますので、申請済みの方も、追加でメール、もしくは掲示板での書き込みをお願いします。
・簡易アクション(という名のシナリオへの突っ込み 笑)
現時点では正式なフォーマットはありませんが、掲示板、メールでアクションをかけることが出来ます。希望があればアクションナンバーももうけるかも。アクションの締め切りは方舟教室到着後5日後。まぎまぎの原稿は編集長への送付と同時にこのホームページに掲載いたしますので、できるだけ早い入力をお願いします。
● 合同企画
黒丸凡太さんの協力を受けまして、ビジュアル形式でのキャラクター、設定紹介が同時進行となります。詳しくは第一号に掲載された同コーナーをご覧下さい。
● 原稿はプラリア形式
今回はスタートリアクションの意味合いもありまして、小説に似た形式でしたが、基本的にプラリア形式となります。参加人数が多ければ、ページ数は増えるかもしれませんし、その逆もまたしかりです。ご参加お待ちしております。
● プラリア形式って具体的にどんな感じ?
というお客様のために、旧方舟教室で放映されていました初代まぎまぎルーン第1話と2話を掲載しておきます。だいぶん前の作品であり、プラリア形式であるため地名、単語、登場人物になじみがないかもしれませんが、ご了解頂き、どうぞご笑覧ください。
■第一部
第1話『ルーンメロディまぎまぎプロセスっ!』
第2話『まぎまぎルーンはじめてのおしごとっ!』
■第3部
第1話『まぎまぎルーンバカ騒ぎの序曲』(改訂版)
● メールのあて先は
poke2ayanagi@yahoo.co.jp まで
●掲示板での登録も可
まぎまぎルーン参加希望という書き込みに返信してください。書き方はメールと同じです。
ご参加お待ちしております☆