みんなそうなんじゃないの?
いつからだろうか?朝起きて動き始める事が非常に苦痛だったり、一人で寝る頃に感じる孤独を屈辱に感じ、そんな自分をごまかすよ
うになり、そのためわざと消極的になり始めたのは・・・・
こうゆう何気ない力の無さの原因は甘えとされたり、話を聞いてもらっても他人に理解などされる事は殆ど無い。当たり前である。こう
なってしまった原因など自分だって分かってないんだから。
でも毎日は続き、まわりの人はそんな悩みを抱える事など無いように動き始め動きつづけていく。だから自分もそんな悩み事に時間も力
も注ぐ事などは出来ず、走りつづける、それぞれの重さを抱えて・・・
あたかも何事も無いかのように・・・・。その姿こそ仮面をかぶった人間の姿であり社会で生きるということなのだろう。自分が気づい
てしまった自分の劣等感を隠し感情の高ぶりを隠ししたたかに社会で生きる、
いや言いかえれば一人で生きる事が出来ないと真摯に認識し、そのときに仮面と言う人間特有の武器は使いこなせるようになり、生きる
のではないか。
でもその代わり何とはなしに感じる違和感や「力の無さ」のことについてはまったく思考を停止してはいないか?とり会えず仮面をか
ぶりいつしか仮面と演技していた自分が周りからは真の姿ととらえられその事に違和感を感じたり・・・この言い方では弱い、
つまり仮面を自らつけたのか、それともいつのまにか着けてしまい、その仮面に自分の人格をのっとられてしまったのか、そんな事に気
がついてもそのことは既に手遅れだったりしないだろうか。
私自身が考えるに、こうなってしまう事には原因があると思う。それは何かに関し思考を停止してしまうことだ。
では思考を停止してしまった問いとは一体なんのことだろうか・・・。
”谷仮面”
この漫画の主人公の谷ははなっから仮面をかぶっているしかもそれを全く隠すことのない違和感バリバリバリの高校生である。さびし
いくせにその仮面をとってしまう事で始まってしまう何事かに不安を感じ人と交わる事が出来ない。
だから自ら仮面かぶる事でそれを心の壁にし、内面を見せる事も見られる事も一切拒否をした、そんな生き方である。
人に取り繕い嘘の仮面を作りその場の人間関係に真剣になることなく表面的な関係と心の中の偽りが同居しあう真に信用し苦しみを分け
合う事が出来ない人間。
谷はそんな人の嘘に敏感であり、その上人と交わっていく事で自然と身に着きこころをすさませるほどに寄生する虚偽と言う仮面を自ら
がかぶり人を傷つけてしまうそんな事を恐れた
作者自信の姿なのではないだろうか・・・・まぁそれはいつか直接会えれば聞いてみたい
谷はフラストレーションの塊であり、その姿が生きる力全開でニヒルで醒めた生命力の無い姿を否定する。自意識過剰気味な一途な思い
が感情を表現する事の無い仮面から徐々にはみ出し始める。
そのきっかけとなるのがヒロインの島かほりだ。彼女への気持ちを絡ませながら谷の激動の高校生活が進行し続ける。なんせ谷は仮面な
んかつけてるから目立つ。当然のように不良が絡み始めるが谷は強い。最初はただの学校の不良相手が、
いつしかボクサーとなり慎重二メートル以上の化け物、武装集団、最終的には超能力を使いこなし自在に宙に浮くエスパーとなる。そし
てそのエスパーにとらわれたヒロインを救出し二人の気持ちは通じ合い大団円のラストを迎える。
ストーリーはこんな感じだが要約をしてしまって面白さを発揮できる作品など無いに等しい。この作品の素晴らしいところは作者が丁
寧に細かく漫画上の勢いにまぎれてしまうことなく出演者の感情的な動きを逐一書き挟むところだ。
映画やテレビならこの演出に多数の人が絡み、その人数並みの厚みや丁寧さが作品にあらわされる。が漫画家は製作に多くのアシスタン
トは要するものの創作に関する表現方法は作者のイマジネーションだよりなんではなかろうか。だからこそそんな部分(コマ割や背景、
表情、等)に作者自信の人格や個性が現れやすいのだと感じる。
そんな意味で、社会的には波風無く生きる事が出来るものがはじめて感じた友達や恋人の存在を意識したときの何気の無い一こまの表情
などは(コミックス11巻なんか特に)感動もんである。
谷仮面には「もしかしたらみんなそうなのかもしれない。」個人個人の差はあるがそんなものに頭がいっぱいになってしまうことで見失
ってしまう「みんな同じなんだ」と言う理屈ではない体を持ち、肉があるから「わかってしまうときにはわかってしまう」そんなお互い
のコミュニケーション
の姿がこの作品には描かれているように感じる。社会的には今全く孤独なんだけども一生そうなってしまう事は無いんだと言う事を十二
分に感じさせてくれる勇気の出る漫画だ。
さて先に提示した「思考を停止してしまった問い」とはなんだろうか。それはコミックスの最終巻の谷の一言に集約される。「なぜ人
間は生きているのか」この一言である。
そして谷は答えを見つける。「人は人に会うために生きているのだ」と・・・そして谷の仮面は割れていくのである。どんな力でも割れ
る事の無かった仮面が内面から涌き出た感情によって割れていくのである。心の壁であろうか面が・・・。
こんな谷を含めた登場人物の変化に、人に対して素直になれなかったり、気を使い過ぎてしまいすれ違ってしまったり人間関係を築く事
はとても困難ではあるが、でも一つ勇気を出して俺とあいつは違うんだと言うようなつまんないプライドを捨て、相手の気持ちを感じ取
る敏感さに自らふたをしてしまう事を止め
相手の顔を見れたときに何気の無かった力の無さの原因に一筋光を入れろことが出来るような気がする。
谷仮面はそんな漫画だ。仮面が割れた谷は島かほりと向かえる現実に向き合い始め突然勉強をはじめる。そのとき日本史の教科書を見
て「おもしろいぞ」などと決して教科書からは拾うことの出来ないことを言う。はっきり行ってここは思いっきり醒めるけどそこは愛嬌
ぜひとも何度も読んでほしい漫画であると思う。