
2000.10.26(木)
ヘッセ著・高橋健二訳「春の嵐」
(新潮社、新潮文庫、1950年)
頁数:246頁
定価:400円
お気に入り度:9
さて、今日読んだのはヘルマン・ヘッセ著『春の嵐』(新潮文庫)。債権各論の授業で知り合ったおじさんが贈ってくれました。その人は若い頃にこの作品に大変感動して、それに訳者の高橋健二氏と面識があったということで知り合った人にはこの本を贈るんだそうです。
実際、お勧めの作品ということだけあってなかなか良い作品でした。なにより訳が素晴らしい。えてして海外文学の翻訳作品は文章が読みづらくて分かりにくく、結果として内容の良し悪しに関わらずつまらなくなりがちですが、この高橋健二氏の訳はそんな欠点が全くなくてあたかも高橋氏の作品であるかのように違和感のない完璧な訳と言えます。贈ってくれたおじさんに言わせると「原文より美しい文章になっている」とか。以前にヘッセの『車輪の下』を読んだときはそれほど面白いとも思わなかったけど、それは別の人の訳だったから、高橋氏の訳でもう一回読んでみるべきだろうと思いました。
内容はまぁ簡単に言えば不具になった青年が音楽の世界で成功を収めるものの友人と愛する人の間で苦悩するというような話ですが。そんなに難解な話ではないけれど非常に奥の深い話です。若さと老い、希望と諦念、そして不具というコンプレックス。まぁ若いうちに一度は読んでおいて損はない小説でしょう。
ところで、作中にかつての教師が主人公に接神術を教える場面が登場しますが、「光明へ通ずる小みち」などの言葉が登場することから考えるとどうやらグノーシス思想の影響が出ているようです。うろおぼえですが、たしかヘッセはユングの作った「隠されたる神」を希求する結社の一員だったはずで、作中の教師の言葉が後々になって有意義であったことがわかることや精神医学への言及があるあたり、どうもユングとユングの信じるオカルトへの傾倒が感じられます。個人的には、ユング派の考えが性に合わないのでちょっとヤな感じ。
まぁ全体として良い作品であることは間違いないですが。
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