2000.10.31(火)
吉原高志・吉原素子訳「初版グリム童話集3」
(白水社、1997年)
頁数:180頁
定価:1600円

お気に入り度:5

 今日のお題は『初版グリム童話集3』(白水社)。
 なんか1巻に比べるとだんだん面白くなくなってきてるような印象。1巻と2巻が初版出版時の上巻にあたり、3巻4巻が下巻にあたるそうですが、上巻の出版から下巻の出版までのあいだに時間的な分断が存在したのか、上巻に比べてわりとマイルドで当り障りのない話が増えたような感じ。話も似たようなのが多いし、有名な話もあまりないし、民俗学的研究の対象としては面白いのかもしれないけど、単純に読み物としてみればやや退屈。
 そのなかで興味を惹いたのは「いばらの中のユダヤ人」という話。小人から誰もが踊りだしてしまう魔法のヴァイオリンなどをもらった男が、道で出会ったユダヤ人を罠にかけて金を脅し取った上、訴えられて絞首刑が決まるとヴァイオリンで裁判官達を疲れ果てるまで踊らせて死刑を撤回させるという話。
 結局、ユダヤ人はキリスト教徒から金を盗んでいたことがわかったので男の代わりにユダヤ人が絞首刑になってめでたしめでたし、というオチになるのですが、どうもこれは文字通りの「盗んだ」ではなくて金貸しなどの商売の結果得た利益のことを言ってるんじゃないかという気がします。つまり「ユダヤ人=金貸し=悪」という図式の上に成り立つユダヤ人差別の一環じゃないかと思いました。だとすると、単にユダヤ人だからという理由で偶然会った人から金を巻き上げたのみならず最終的に死刑に追いやるわけだからこれは極悪非道な話だなぁと。
 第三版以降は金を盗んだ相手がキリスト教徒であるという記述が削除されたそうで、宗教対立的な構図を和らげるような意図があったのかもしれません。ヨーロッパにおけるユダヤ人の位置付けがわかるような気がして面白いなぁ、と思ったので取り上げてみました。


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