fake moon
       〜イグナロスの魔女〜


序章


いつの頃なのだろう…。

夜の闇の中、西の果てが真っ赤に燃え広がり、昼と夜が逆転した様な感覚。

あの頃の夢を最近よく見る…。

最後迄覚えている訳ではないのだが、真っ赤に燃える西の空が妙に頭に残るのだ。

俺はベッドを後にし、ドアの方に足を向けた…。

此処は、イグナロスの東イグナードの森の中に有る小さな小屋で、

外には鬱蒼とした木が立ち並んでいる。

「起きたか。」

白く長い髭を生やした老人が語りかけてきた。

見た目は仙人の様な風貌のこの老人実は剣聖の位を持つソードマスターなのだ。

「はい、マスターは何時も早いですね…。」

声を返しながら近づいて行く俺。

「誰かが早く起きて朝飯を作らんと食べれないじゃろう?」

テーブルに食器を並べながら青年がマスターと呼ぶ老人が微笑んだ。

「そうですね♪僕も手伝いますよ」

二人で食事をしながらの会話が弾む。

「マスターは何故こんな森の中に住んでるんですか?」

「ワシは余り人との関わりを良しとせん性格でな…。」

何時も俺は思うもっと近くに住めば買い物も楽に済むのにと…。

「買い物とか大変じゃないですか?」

「そうじゃなぁ、買い物は大変じゃな…。おぉ、そうじゃ食事の後買い物に
行くがお前も来るか?」

「はい、行きます!!」

俺は町に行くのが好きで良く買い物に付いて行っていた。

この森、イグナードから町までは数qの道のりがある。

この辺一体はイグナロス領と呼ばれているのだが、治める者達が違う。

普通一般では何々王家なんてのが治めている筈なのに…。

いや、昔は治めて居たらしいが、

領主は法族(僧侶?)というらしい。

城も変わっていて、誰も住んでいないらしい…。城下町は有るのに変な話なのだが。

「町に着いたら少し時間が有るから、お前も好きな所に行くと良い…。」

「はい、ありがとうございます。」

整備されない砂利道をイグナロスを目指すのであった。