第5話
信二が転校して1週間がたった4月11日。信二は新しいクラスの友達である長沢 一郎と一緒に出雲大社に来ていた。これは一郎からの誘いで決まったものである。実は入学式の日に教室で、
一郎 「やあ、はじめまして」
信二 「や、やあ」
一郎 「ところで君は、名古屋から越してきたって聞いたけど」
信二 「うん。そうだよ」
一郎 「いいなあ、いろんなところに行った?」
信二 「そうだね…でも、父さんが忙しいからあまり行ったとは言えないな」
一郎 「そうか。じゃあ、俺が連れてってやるよ」
信二 「えっ、いいの?」
一郎 「いいっていいって」
信二は出雲に越してきてから、まだこういった観光地にいったことがなく、今回新しいクラスメートである一郎といっしょに行くことになった。信二は出雲大社の大きさに、
信二 「うわー、やっぱり大きいね」
一郎 「そうだろ、これだけ大きい神社はここ以外にはそうはないだろうな」
誇らしげに言う一郎。外からでしか、本殿を見ることはできなかったが、そのスケールには、信二も驚いた。
信二 「ところで、長沢君」
一郎 「ん、なんだい」
信二 「今日はなんで、ここに来たの」
一郎 「うーん、そうだな」
しばらく考え込んでから
一郎 「君とはこれからクラスの中でも長い付き合いになると思ったからね。それと、君も回りの人が知らない人ばかりというのも困るだろう」
信二 「確かにそうだね。でも…」
信二はそういって、顔を曇らせる。
一郎 「でも?」
信二 「ここに長く居るかはわからないよ。お父さん、仕事忙しくて、いつ転勤するかわからないから」
その言葉から、信二の取り巻く現実というものがひしひしと伝わっていた。しかし一郎は、
一郎 「そうか。でも、ここを離れるにしても、いい思い出を作っていってね」
いつもと変わらぬ明るい表情でこう話した。
信二 「うん、そうするよ」
その表情につられ、信二も少し明るい表情になって答えた。その後2人は、暗くなるまで出雲を歩き回った。その帰り際の事である。
信二 「今日は楽しかったよ。本当にありがとう」
一郎 「なーに。こっちこそ楽しかったよ」
? 「あれ?一郎じゃない」
一郎 「あっ…」
第6話
信二は、同じクラスの一郎と一緒に引っ越してきたばかりの出雲を歩き回った。その帰りに、
龍一 「あれ?一郎じゃない」
一郎 「あっ、龍一くん」
一人で出かけていた龍一とばったり出会った。
龍一 「あれ?その人は」
一郎 「ああ、うちのクラスに来た金本君。名古屋から越してきたんだ」
信二 「どうも、はじめまして」
龍一 「こちらこそ、はじめまして」
龍一は、一郎を手招きして
龍一 「ちょっと、話があるけど…いいかな」
一郎 「いいけど…」
龍一と一郎が話しているのを見て、
信二 「じゃあ、僕は帰るね」
一郎 「ああ、悪いね」
信二 「いいよ、じゃあ、また明日」
そういって信二は帰っていった。その後、龍一と一郎は
龍一 「なあおまえ、あの転校生と同じクラスか」
一郎 「ああ、そうだよ」
龍一 「どうなんだ、その様子だと、今日1日中あいつと一緒だったんだろ」
龍一も少なからず、「彼」の事を気にしていたようだ。
一郎 「そうだね。今日、彼からいろんな事を聞かせてもらったよ」
龍一 「どんなこと?」
一郎 「彼は、名古屋から越して来っていたじゃん。実はね、彼の親父さんがすごく忙しくてね、転勤を繰り返しているんだって。だからここにも、どれだけ居られるか、わからないって。いつまた親父さんが転勤になるか、わからないって…」
龍一 「そうか。それって、クラスに仲の良い友達ができたとしても、いついなくなるかわからないんだろ。正直言って、辛い人生をおくっていると思うぜ」
一郎 「そうだね。あと、この1週間見ている限りだと、彼はすぐに違う環境になれるタイプだと思うんだよ」
龍一 「うーん、それがいいことなのか悪いことなのか」
一郎 「まったくもってそうですよね」
龍一 「そういう人に限って、親がこれだもんな。人間よくできてるよ」
外はもうすっかり暗くなっていた。2人は帰りがけに
龍一 「あっ、そうだ。遠足っていつだっけ」
一郎 「えーと。たしか、30日じゃなかったっけ」
龍一 「そうだ。たのしみだな」
さて、次回は遠足先でいったい何が起こるやら。 つづく