第7話

 ゴールデン・ウィークを間近に控えた4月28日。みどりの日をはさんで30日は中学に入ってからの始めての遠足である。

 ここ最近の学校の話題は、まもなく開幕するJリーグと、この遠足の話である。

 桜  「ねえ、龍一君」

龍一  「なに?」

 桜  「遠足、楽しみだね」

龍一  「うん」

 二人は昼食後、いつものようにお喋りをしていたときに、

真矢  「よお、龍一いるか?」

 真矢が廊下から声をかけていた。

龍一  「真矢。ここだよ」

真矢  「ハハッ、お2人さんとも元気で何よりだ」

 そこへ隣のクラスからあやめがきて、

あやめ 「おや、皆さんおそろいで」

 桜  「あやめさん」

あやめ 「どうです。皆さんでちょっと外でも行きませんか」

龍一  「どうする?真矢」

真矢  「俺はいいぜ。たまには外でのんびりしようか」

龍一  「じゃあ、行こう」

 龍一と桜は席を立って廊下に出てきた。龍一はそのまま階段を下りていくが、桜はあやめに近づいて、

 桜  「あやめさん、ちょっといいですか」

あやめ 「いいけど…」

 階段を下りていた龍一が、桜がなかなか来ないことに気づき、桜の方へ振り向く。その振り向いた龍一に向かって、

 桜  「龍一君、先行ってて」

龍一  「早くこいよ」

 校庭の桜も咲き終わり、外はまさに小春日和。龍一は真矢と一緒に先に校庭に行った。さて、桜とあやめは、

 桜  「ねえ、あやめさん」

あやめ 「なに?」

 桜  「あの人、どうなの」

 桜はあのとき(第4話参照)、「彼」に声がかけられなかったせいか、なんとなく「彼」に声をかけづらくなっていた。

あやめ 「ああ、あの転校生ね。あの人、ちょっと…」

 桜  「ちょっと?」

あやめ 「なんとなくだけどあの転校生、女の子を避けているみたいなの」

 桜  「えっ」

 あやめが言ったこの一言は、果たして何を物語っているのか。

 

第8話

 桜  「それって、どう言うこと」

 あやめは少し考え込んで、

あやめ 「うーん。私も詳しいことはよくわからないんだ」

 桜  「そう…」

 心配そうな顔をする桜。それを見たあやめは、

あやめ 「何いってるの。桜にはお似合いの彼氏がいるじゃないの」

 桜  「そ、そうだね。そうだ、二人が待ってるから早く行かなきゃ」

 そういって、慌てた様子を見せ階段を下りていく桜。

あやめ 「あっ、ちょっと待ってよ」

 そのころ先に外に出ていた二人は、

真矢  「なあ、明日の遠足。おまえ、桜と一緒か?」

龍一  「ホントはそれがよかったんだけどね…」

真矢  「違うのか」

龍一  「そう、座っている席順で班分けされちゃったからなあ」

真矢  「でも、ひそかに狙っているんだろ」

龍一  「まあな、桜の班の人にアポとっておくか」

真矢  「おまえが言えば、向こうの人もわかってくれるよ」

龍一  「そ、そうかな」

真矢  「でも、先生に見つかったら、ヤバイかもな」

龍一  「大丈夫。うちの担任の杉蔵さんは物分りが良さそうだから、見つかっても大丈夫だよ」

 そんな事を話しているうちに、桜とあやめが外に出てきた。

 桜  「ごめーん、まったー」

龍一  「もう、2人とも遅いよ」

あやめ 「ごめんなさい。ちょっと話が長くなってしまいました」

 それから4人は、昼休みが終わるまで遠足のことについて話し合った。そして、放課後。いっしょに家に帰っている龍一と桜は、

 桜  「ねえ、あさっての遠足。龍一君、何着てくる」

龍一  「なにって、うーん」

 桜  「私ね、この前、自分で選んだ服着てくるから」

龍一  「自分で?へー、楽しみだな」

 桜  「でしょ。だから期待していてね」

龍一  「うん、わかったよ。じゃあね」

 果たして遠足でいったい何が起こるのか。

 

第9話

 4月30日。龍一たちは、中学校に入って初めての遠足に行くことになった。

龍一  「いってきまーす」

 そう言って元気よく家を出てった龍一は、桜といつも待ち合わせているところへと向かった。天気は晴れ。ポカポカ陽気になりそうだ。

龍一  「確か今日、桜は新しい服を着て来るって言ってたけど…どんなのかな?」

 龍一は、おとといの帰り際に桜が言ってた言葉に期待しながら待ち合わせ場所に向かった。しかし、

龍一  「あれ?おかしいなぁ」

 そこには桜がいないように見えた。しかし龍一の背後から、

 ?  「だーれだ」

 誰かが物影から現れ、両手で龍一の目をふさいだ。

龍一  「わわっ、さ、桜」

 桜  「ピンポーン。あったりー」

龍一  「まったく、驚かすんじゃないよ」

 桜  「えへへ、ゴメン」

龍一  「へえ、これが…」

 桜  「そう、私が選んだ新しい服。買ってもらっちゃった」

 桜が着てきた服は、水色のワイシャツだった。桜は今まで赤い服を多く持っていたが、青い服を着て来るのは、付き合いの長い龍一でも覚えがないくらいだ。

 桜  「どう、似合う?」

龍一  「う、うん。似合っているよ。なんて言うかな?その…」

 桜  「その?」

龍一  「すごく新鮮に見えた。今日の桜が」

 桜  「そ、そう。ありがとう」

龍一  「でもごめん。俺、いつもの服で」

 桜  「いいのよ、そんなこと。全然気にしてないから」

龍一  「ありがとう」

 そんなことを話していながら彼らは学校に到着した。

あやめ 「おはよう、桜さん。おや?その服は」

 桜  「えへっ、新しい服、買ってきちゃった」

あやめ 「へえ、似合ってるじゃない」

真矢  「おはよう、龍一。おっ、桜、新しい服じゃん。結構決まってるぜ」

 桜  「あ、ありがとう」

 こんないつもの調子で遠足が始まっていくのであった。 つづく