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 5月下旬。龍一たち1年生は中学に入って初めてのテストを迎えるのであった。中学は今までとは違い、中間と期末という、たった2回のテスト(3学期は期末のみ)で評価が決まってしまうため、1回の失敗が大きな痛手となってしまう。

 桜 「ねえ、もうそろそろ中間テストでしょ。ちゃんと勉強やってる?」

龍一 「うーん、今までは『いつでもこい』ってな感じだったけど、こう日にちを気待て来られると、なんかちょっとやりずらいな」

 桜 「なにいってんの。そんなに頭良くないくせに」

龍一 「ちぇ、それはお互い様でしょ」

 中間テストを5日後に控えた5月21日。下校途中の龍一と桜はいつものように2人で帰っていた。5月に入って陽もだんだん長くなってきた。

龍一 「ところで部活のほう、だんだんなれてきた?」

 桜 「うん、女子のほうの先輩たちって、みんな優しいから」

龍一 「いいなあ、うちのほうは先生が厳しいからな。ついていくのに必死だよ」

 中学に入って二人は同じバスケットボール部に入った。ただ、練習場所の関係上、男女がいっしょに練習できる時間はそれほど多くはなかった。

龍一 「そう言えば最初の頃、顔面にボールをぶつけて顔赤くして帰ったときあったけど、あれから先そういうことない?」

 龍一は、小学校のときからバスケをやっていたが、桜は体育の授業を除けば、バスケの経験はない。

 桜 「あっ、あの時は…男の子も一緒に体育館で練習していたでしょ。それで…その…龍一君を見ていたら前からボールが来ちゃって…」

龍一 「『バコッ!』っと顔面直撃、ってわけか。はははっ、ドジ」

 桜 「もお、龍一ったら」

 もともと桜は部活に入る気はなかった。しかし龍一がバスケ部に入ってしまうと、一緒に下校できなくなってしまうため桜は、龍一と同じバスケ部に入ったのである。 こうして今日も仲良く帰っていく2人であった。

 さて、いよいよテスト直前となった5月24日の夜。龍一の元へ電話がかかってきた。

龍一 「はい、もしもし。大神です」

 桜 「もしもし、龍一君。私」

龍一 「あっ、桜。こんな時間になに?」

 桜 「うん、実はさ、テスト勉強やってて、わかんないところがあるの」

龍一 「ふうん、それで僕に聞きにきたの?」

 桜 「そうじゃなくて、明日空いてる。一緒に勉強しよ」

龍一 「う、うん。わかった」

 桜 「じゃあ明日1時半に行くから」

 

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 5月25日・テスト前日の朝。龍一と桜はいつも通り2人で学校へ向かっていた。

桜  「どうなの、勉強のほう、はかどってる?」

龍一 「うーん、ぼちぼちってところかな」

桜  「そうだよね。龍一って勉強そんなに得意じゃないから、そう言うと思ってたよ」

龍一 「それってどう言うことだよ」

桜  「ハハッ、そんなに怒らないでよ」

 テストの前日ということを除けば、なに変わらぬ1日である。テスト直前ということもあり、授業は午前中で終わり、当然部活もない。

真矢 「おーい、龍一。一緒に帰ろう」

龍一 「真矢か。いいけど」

桜  「真矢くん。こんにちは」

真矢 「やあ、桜も一緒か。俺、ちょっと邪魔かな?」

桜  「そんなことないって。一緒に帰ろう」

 同じ時間、隣の教室では、

一郎 「やあ、信二くん」

信二 「あっ、一郎」

一郎 「どう、一緒に帰らない?」

信二 「うん、いいよ」

 さて龍一たちは帰り道で、

龍一 「ところで真矢、テストのほう、大丈夫か?」

真矢 「うっ、それは…なあに、大丈夫だって」

龍一 「でもな、これだけ早く帰れるとなると、ちょっくら遊びたくなるな」

桜  「もう、龍一ったら」

 こうして歩いているうちに、龍一と桜が、いつも待ち合わせしている場所に到着した。

桜  「じゃあ、龍一君。またあとでね」

龍一 「ああ、わかった」

真矢 「って、ちょっと。2人でこのあとなにすんの?」

桜  「う、うん。ちょっと勉強をしようかな、って」

龍一 「そ、そう。勉強だよ。勉強」

真矢 「いいなあ、彼女と一緒に、って。うらやましいな」

桜  「じゃあ、1時半に行くから」

龍一 「待ってるよ」

 ここから先、龍一は桜、真矢と違う道で帰る。しかし、その方向は同時に一郎と信二の家の方向でもあった。

一郎 「あっ、真矢くん」

 

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真矢 「やあ、一郎じゃあないか」

 桜のちょっと前を歩いていた真矢が、一郎とであった。その一郎の横には…

真矢 「えっと…信二君だっけ」

信二 「う、うん。こんにちは」

真矢 「こんにちは、信二君」

 そこへ、後ろから桜がやってきて

 桜 「ねえ真矢君、ちょっと聞きたいことが…」

 桜はそこに信二がいるとは知らずに真矢に声をかけた。

 桜 「!」

真矢 「えっ、なに?」

 桜 「……(な、なんで?なんであの人がここに?)」

信二 「あっ、あなたはあの時の…」

 桜 「あっ…、う、うん(ど、どうしよう。声かけられちゃった)」

一郎 「信二君、この人のこと、知ってるの」

信二 「う、うん…」

真矢 「ところで桜、聞きたいことってなに?」

 桜 「あ、あれ、な、なんだっけ?」

 信二はちょっと戸惑った表情で、

信二 「一郎くん、悪いけど…ちょっと用事を思い出したから…」

 信二は早足で帰っていった。

一郎 「えっ、ちょっと。信二君」

 桜 「あっ…」

真矢 「行っちゃった…」

一郎 「どうしたのかな?なにか急いでいるようだったけど」

真矢 「いや、そう言うふうには見えなかったけど…気のせいかな」

 桜 「(なにか…あの人、迷ってる。なんとなく、そんな気がする)」

 そのあと、残された三人はそれぞれ家路に着いた。

真矢 「(桜、なんかあせっていたみたいだけど、どうしたんだろう)」

 桜 「(あの人、本当に女の子を避けているみたいだった。でも彼、何か悩んでいそう)」

信二 「(ご、ゴメン。もうこれ以上…)」

 信二の悩みとは、いったい何なのか。次回から怒涛の新展開が… つづく