その日の夜、みんなと別れた後早速彼に電話したの。
文彦 「もしもし」
唯 「もしもし、あの…」
文彦 「ああ、あなたですか。お待ちしていました」
唯 「あっ…」
文彦 「どうしました?」
唯 「いえ…、なんか、ちょっと…、おかしいですね。あなたと出会ってから、あなたのことが頭から離れないんですよ。初対面の男の人なのに…」
文彦 「私もそうなんですよ」
唯 「えっ」
文彦 「実は私もなんですよ。まだ、名前も聞いていないのに…、どうしてでしょうね」
唯 「本当、不思議」
文彦 「そうだ。明日、6時から空いてますか」
唯 「ええ、その時間なら」
文彦 「じゃあ、今日のあの場所で…、そうだ。まだ、あなたの名前を聞いていませんでした」
唯 「金本 唯です」
文彦 「じゃあ、唯さん。また明日」
唯 「ええ、楽しみにしているわ。おやすみなさい」
そして次の日、私は昨日と同じところに、今度は自分一人でいたわ。そして、昨日友達と言ったあの喫茶店へ。
店員 「いらっしゃいませ」
店に入った瞬間、文彦がどこにいるかわかったわ。まるで私が来たのがわかったかのように、私のほうへ振り向いていたわ。
文彦 「あっ…」
唯 「…、こんばんは」
唯 「そのとき初めて感じたわ。二人の出会いは『運命』じゃないのかな、ってね」
信二 「『運命』…」
唯 「フフッ、信二もそう言う出会いができると良いね」
信二 「『運命』か…」
唯 「話が長くなっちゃったね。文彦を待たせてるんじゃない?」
信二 「そうだ。もうカード度数がないや」
唯 「それじゃあ、まだ広島までは長いんでしょ。気をつけて行ってらっしゃい」
信二 「うん。お母さんも元気でね」
そう行って信二は受話器を置いた。新品だったはずのテレホンカードは、残り度数がほとんどない状態にまでなっていた。
文彦 「長かったな」
信二 「うん。お母さん元気そうだった」
文彦 「そうか。じゃあ行こうか?」
車はまた国道を走り広島へと向っていった。その途中、
信二 「ねえ、父さん」
文彦 「なんだ」
信二 「『運命』って、信じる?」
その質問に文彦は少し間を置いて、
文彦 「ああ」
いつも通り口数少なく、こう答えた。それは、信二が理解するには十分な答えだった。
文彦と信二を乗せた車は、広島に入った。中央の市街地から少し離れたところで、
文彦 「ここだ」
文彦が車を止める。住宅地から中心街に一番近いところのアパートが目の前にあった。
信二 「ここか」
信二が車から降りる。車から道路へ足を踏み入れたそのときだった。
信二 (!)
信二が今まで感じたことのなかった何かが、体中を駆け巡った。
信二 (何?この感じ…)
しかし信二は、それが何かであるかを感じ取った。
信二 (誰かが、僕を呼んでいるのか?) 本編へ続く
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