チリンチリン…

 信二の乗った自転車はベルを鳴らし今日も軽快に住宅地を抜けていく。週末にたまったごみを捨てに出ている人や、そのごみを収集しているごみ運搬車。それに、信二が卒業した高校の後輩。その合間をすり抜けるかのように信二の自転車は駆け抜けていった。しかし、

信二 (!?)

 思わずブレーキを握る。危うく壁にぶつかりそうになったからだ。いつもなら曲がりきれる角も、今日に限っては焦っているせいか、なかなかうまく曲がることができない。自然と自転車の挙動も悪くなる。前を歩いている人が思った方向に曲がってくれない。時間は刻々とすぎていく。そして、大変なミスを犯してしまう。

信二 「なに!」

 目の前の道は工事中で通れない。道順を間違えてしまったのだ。

信二 (しまった。なんでこっちの道来ちゃったんだ)

 信二の通った道は確かにバイト先への一番近い道であった。しかしここは昨年末から工事で通れなくなっていた。信二は焦りから別ルートへの曲がり角を曲がり忘れていたのだった。

信二 (くそう、間に合うのか?)

 自転車を反転させて再び走り始める。今度はルートに気をつけとにかく先を急いだ。

 

信二 (んっ、渡れるか?)

 目の前に見えた大通りの信号。あれを渡ればバイト先はすぐそこであった。しかし、

信二 (…だめか)

 無常にも交差点の少し前で信号は点滅。赤信号に変わってしまった。仕方なく自転車を止める信二。ここまで相当とばしていただけあって、息が上がっている。もちろん、ここ数日バイトを休めなかったと言うこともあるのだが…。

信二 (うーん、ギリギリと言ったところか)

 腕時計を目にした信二。刻一刻と時間は近づいている。寝坊と言う理由で遅刻したら、上司にお目玉食らうのは必至だからだ。

信二 (信号が変わって、すぐに飛び出せば間に合うか)

 信二はそう思った。はっきりいって時間がない。周りには通勤ラッシュのサラリーマンが数多くいるが、運良くその先頭に信二がいた。

 

信二 (…長い)

 こういう大通りの信号は、変わるのに時間がかかる。もちろん信二はわかっているが、焦っている分、余計に長く感じる。やがて横にあった歩行者用信号が点滅し始めた。

信二 (もう時間がない。車の信号が赤になった瞬間か?)

 もう一度腕時計を見た信二。予想以上に信号が長かった。信二は車の信号が赤になる瞬間を狙うことにした。

 車の信号を注目する信二。青だった信号がやがて黄色になり、そして、赤。左足が地面から離れ、右足でサドルを踏みこんだ。

 

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