道路の中央で、呆然とする唯。
「あのー、すいません。現場検証とかしないといけないので、ちょっといいですか?」
駆けつけた警官が、唯に話しかける。しかし、警官の声など届いてはいなかった。
「あのー」
少し困った様子を見せた警官であったが、唯の肩を軽く叩いてみた。
唯 「…あっ」
ようやく我に帰った唯。
「すいません。今から現場検証しますので、よろしいでしょうか」
唯 「あっ…、はい」
言われるがままにその場を離れる唯。しかし、歩道へ戻ろうとしたそのとき、本当の真実がそこにはあった。
自分が、「何か変だな」って思ったのは、どれくらい経ってからだろうか。自転車は動いていない。でも両足はサドルに載っている。良く考えて見れば自転車は倒れているはずなのに、どうして立っているんだろう?。それよりも、どうして動かなかったんだろう?。
(あっ…)
そのとき初めて気づいた。自分とは違う、誰かの腕が腰に巻き付いていた。誰かが僕を止めていた。これが無かったら、間違えなく僕は…。そして、
「えっ」
思わず小さく声をあげて驚いた。背中に感じたぬくもり。そのぬくもりを僕は知っている。でもその人は、ここには、この東京にはいないはずの人だった。僕は後ろを振り向いた。
「あっ…」
「…危なかったね」
僕は、思わず、抱きしめた。
「…ありがとう」
それを見た唯は、開き直ったようにこう言った。
唯 「フフッ、私の出る幕は、もうないみたいね」
そう言い残し、静かにその場を後にした。
Story is not period.
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