−Iga Fantasy−
Chapter 05 絶望と希望
「防御フィールド完成!
カラシはん、ブレーメンはん!こっち来てや!」
カラシ、ブレーメンは隙を見て
アシンの傍に寄った。
アシンは、それぞれの肩に触れ、防御フィールドを自分の手から移す。
二人の身体には薄い紫がかった膜が生じた。
「こいつは3分位しか、もたんから注意や。
その間に、消滅の法を作成し、ヤツを消し去る。
ただ、チョイ時間かかるよって、フィールド切れたら接近戦はせんこと!」
二人、無言で頷いた。
その隙を見て、モンスターがブレスを吐く。
彼らは、それぞれ別の方向に跳ぶ。
「ブレーメン、オレがおとりになる。ヤツをアシンからなるべく離すんだ!」
それだけ言うと、
カラシは胸元からクナイを取り出し、モンスターに投げつけた。
クナイはモンスターの喉に突き刺ささる。
矛を握りしめ、真正面に走りこむ。
モンスターは怒り、ブレスをまた吐くが、彼には効かない。
カラシは大きく跳び、敵の眼をついた。
その間に、ブレーメンは背後を取り、敵の尾を切り落す!
モンスター・ブレスオブコールドは、その激痛に喘ぎ、倒れた。
「これで、しばらくは大丈夫だろう・・・」
カラシは一息ついて、ブレーメンに微笑んだ。
ブレーメンも安心した様子で、微笑み返す。
――――――――!
アシンは、その光景を見て、ぞっとした。
倒れた敵が復活し、ふたりにブレスを吐いたのだ。
その頃には、もう、フィールドの効力は無く・・・。
ふたりは、蒼い炎に包まれていた――。
その頃、ナイ(犬)は・・・サモナーを発見していた。
サモナーに、にらみをきかせていたつもりだったが、
「ハ」の字眉には不可能だった。
さて、サモナーとの会話を聴いてみよう。
「ここで遭ったが、百年目。お命頂戴つかまつる!」
「まぁ、ナマイキなわんこね。
・・・・・、その図体からするとブタかしら?」
「なんだと、こんチクショー?!」
「まぁ〜!畜生フゼイが、ワタクシをチクショウですって?
なんて口の悪いブタなの?!ゆるせないわ!」
「また言ったな!このオカマ!」
「オカマですって?私の一番嫌いな言葉を!
益々ゆるせないわ!」
・・・・・・などと、延々と罵りあっている。
サモナーは、ナイの言ったように「オカマ」であった。
長髪・長身の男で女言葉を使っていた。
しぐさも女っぽく、内股ときている。
一見、女性に見間違うこともできたが、声が野太く、
男だとすぐわかる。
サモナーは武器を携帯しておらず、ただ、手には小さな鈴があるだけだった。
「みてろよー!変化の舞だ!」
ナイはそう言って、ステップを踏みはじめる。
何処からともなくメロディが流れ、
しばらくして、ナイのデベソがピクついた。
「何科?」とデベソが尋ねると、
「戦士科!」とナイは叫ぶ。
すると、瞬く間にナイの身体は、屈強な体格の戦士に変化した。
「まぁ・・・ステキな身体。惚れそう」
サモナーは顔を赤らめた。
戦士ナイは「覚悟!」と自信満々に斬りかかろうとした。
その刹那、サモナーの瞳が見開き、鈴の音が鳴り響く。
怪音波がナイを襲う。
それと同時に、ナイの身体は、自由を奪われた。
(操身術・・・!)
ナイは、胸中で叫んだ。
動けない。
「くふふふふ・・・」
サモナーは無気味に笑っていた・・・。
アースラヴ城では、
ひとり残されたプレアが、兄・アルクトウルスの研究室へと向っていた。
プレアは、国王であるリクティンが、戦場に向ってしまったことを、告げる気でいた。
兄ならば、この事態を、騒ぎにせずに何とかしてくれる・・・そう信じて。
アルクトウルスの部屋に着いたプレアは、扉をノックした。
ところが、返事が無い。
そうっと扉を開けてみれば、アルは本の山に埋もれて眠っていた。
「お兄様!」プレアはアルを揺さ振った。
―――――――。
「なんだって、リクが?!しかも、そんな状況に我が国が襲われていようとは!」
アルは驚愕した。
「今まで、報告もなかったぞ!」
叫ぶ兄に対しプレアは、
「兄様・・・ノックも気づかないほど熟睡してるんだもの。
報告も無いと思うわ・・・」
と、呆れた。
「そうか・・・。プレア、この事は少しの間、黙っていてくれ。
僕が何とかして、連れ戻して来る!」
そう言って、アルは窓から飛び出した。
(たしか・・・まだ、この国に居るハズだ、あいつが!)
そう考えながら、いつのまにか、「ディオ!」と口にしていた・・・。
1999/08/20
街酒場では、ディオニュソス(ディオ)が、眠りだしていた。
あれから更に、20杯ほど掻っ込んだ後、
何やらマスターに愚痴をこぼしたり、怒ってみたり、笑って泣いて、
百面相を見せてからだった。
「や〜っと、潰れてくれたよ・・・」
と、マスターは安堵の息をこぼし、カウンターを片付ける。
店には既に客も居らず、静まりかえっている。
「でもま、コイツも苦労してんだよ。ユナちゃんの小っさい頃に奥さんを亡くして。
男手一つで育ててンだからね・・・」
一人しかいない従業員に話しかけた。
従業員は、口がきけないのか、寡黙なのか、答えもせず微笑んだ。
「ディオがこうして大酒呑んでくれてるから、コッチもいい商売になってるし」
(いい見世物にもなってるし、コイツの大酒・・・)
と、一人つぶやきながら、笑った。
「さて、戸締りしようか。ナッシュ、のれん外してきてくれ」
そう言って、ディオに毛布を掛けた。
ナッシュと呼ばれた従業員は、外へ出、のれんを外そうとした。
そのとき。
「ディオ、いる?!」
アルが、息を切らし、かけ込んで来た――。
突然の来訪者に少し驚きながら、マスターは答えた。
「いるけど・・・このあり様さ」
そう言って、親指をディオに向って指した。
ディオはかなり寝込んでいた。大声で呼んでも起きはしなかった。
アルは深呼吸を一つした。
頬を何度も引っ叩き、
「ディオーーー!!」
胸ぐらをつかんで、
「起きてよーー!」
大声をあげ、頭をガクンガクンさせた。
すると、ディオはうっすらと目を開き、
「ううう・・・アタマを振るなぁ・・・」
と、うめいた。
「リクが大変なんだ!ディオ、一緒に来て!!」
「うぅ〜ん、もう呑めな〜い・・・」
・・・会話になってない。
「とにかく、来い!!!」
アルはブチッときて、ディオを引きずりながら、
外に運び、馬に乗せた。
馬が走り出すや否や、ディオは、
「うえぇ・・・き、きぼちわりぃ・・・止べでくれぇ〜〜」
と、わめいたが、アルはきっぱりと言った。
「問答無用!」
馬はひたすら国境を目指し、走る。
そして、
絵にも描けないような光景が、この後続いた・・・。
蒼白い月夜に、けたたましい蹄の音。
馬を走らせるのは、13歳の少年にして、一国の王。
リクティン・アースラヴ・アストロラーヴェ(=リクティン)だった。
「プレアには悪いけど、社会勉強の一環だと思ってもらおう!
“この世にあってはならぬもの”なんて、見とかないと損だし!
それに・・・自分の国は、自分で守りたい!」
・・・などと言っているが、実は、動きたくて仕方なかったのだった。
窮屈な城の中で過ごす毎日に、訪れたきっかけ。
なんでも良かった。
「・・・見えた。大きい!」
モンスターの頭が、森の中から飛び出していた。
「ブレーメンたちは無事か?!」
馬を街道から少し入った森の木につなぎつけ、
リクティンは先ほど見た方向へ、走りだした。
1999/09/20
蒼い炎とそれに因る凄まじい冷気が過ぎた後、
そこには、ふたりの姿があった・・・――。
ブレーメンに覆い被さるように倒れているカラシ。
カラシに抱かれ守られたブレーメン。
「兄さん・・・!カラシ兄さん!!」
焼け焦げた泣き顔、くしゃくしゃの髪。
ブレーメンは軽度の火傷だった。
「そんな・・・」
アシンは詠唱を止め、カラシに駆け寄った。
そして、絶望的な顔をした。
「・・・・・・っ!」
カラシは声を出さず、苦痛の表情を浮かべた。
その背中は、衣服と皮膚が溶け混ざり合っていた。
致命傷、と迄にはいかないが、放って置けば、
確実に感染症にかかってしまうだろう。
ブレーメンはカラシを、そのまま仰向けにそっと移動させ、
立ち上がった。
――そして。
静かに言った。
「・・・アシン、ロカを呼んできて。
私は、兄さんを守る・・・!」
剣を握り締めて、猛然と斬りかかっていった。
「そんなん無茶や!ブレーーーメン!!」
アシンが止める声も聞かずに。
―――そこへ。
「大丈夫!余が援護する!」
後方の声に驚いて、アシンは振り返った。
「アースラヴ・・・国王・・・ッ?!」
息を切らせつつ、ニカッと笑って、リクは答えた。
「いかにも。
・・・何処かでお会いしたかな?
こう見えても、剣技には自信があるのだ。
その負傷者を医者にみせることが先決!
ここは余に任せて、行くがいい!」
そう言って、剣を抜き、走って行った。
アシンは呆然としてリクを見送って、
「・・・よし、ここは国王の言葉を信じよう・・・」
そしてカラシを背負った。
カラシは激痛によって意識はなかったので、手首を紐で縛った。
そして、来た方向へ、走った。
2000/09/25