das Ende
トントントン、ガチャッ
階段を上がり扉が開くと美汐は部屋の中にへと入って行った。
部屋の中にはなまけもののぬいぐるみと狐のぬいぐるみがが棚の上に飾ってある。
「せっかくのデートだと言うのに遅れたらもともこもありませんね」
美汐はそう言いながらクローゼットからスカートやらセーターやらを取り出し着替え始めた。
「うんしょっと……大丈夫ですね。……あっ、化粧をしませんと」
そう言いつつも鏡台の引き出しから取り出したのは、薄いピンクの口紅一本だけだった。
美汐の部屋は今時の女子高生の部屋とは思えないほど落ち着いた雰囲気だが、本棚には綺麗なカバーを掛けられた漫画が数冊、文学小説らに混じって置かれていた。
そして棚にはぬいぐるみと並んで狐の絵柄がついた可愛いオルゴールがなまけもののぬいぐるみと寄り添うように置かれていた。
よく見るとその上の壁には人の絵らしきものが描かれた絵が飾られていた。
と言っても絵のレベルは拙くあまり高くは無い、良くて中学生レベルと言った感じである。
ただ描き手がモデルとなった人のことがとても好きなのが分かる、そんな暖かい印象を与える絵であった。
「良し、大丈夫ですね」
美汐はそう言うと鏡台の前から立ち、別のクローゼットを開けた。
「これと……これですね、やはり」
美汐が取り出したものは白い薄手のコートと薄紫色のマフラーだった。
マフラーのほうは手編みなのか少し目が粗かった。けれど美汐はそんな事は気にしていないかのようにコートを着、マフラーを巻いた。
クローゼットの中を注意深く見るととても綺麗なデザインのスカーフが数点仕舞われていた。
それはパリの有名なデザイナーの作ったもので、普通の高校生はまず持っていない高級品だった。
「ブローチは……これは合いませんから……やはりこれでしょうね」
そして机から取り出したのはシンプルな造りのブローチだった。
「後はこのイヤリングを着けてっと………手袋を着けるから見えないですよねぇ。……まぁ、構わないですね」
美汐はそう言うと落ち着いたデザインのイヤリングを着け、手袋で隠れるにも拘らず青く光るラピス・ラズリがあしらわれた指輪を嵌めた。
「うん、こんなものですかね」
美汐は壁に掛かっている姿見を見て言った。
そこに映っていたのは歳以上に落ち着いた雰囲気を纏った大人の女性だった。
「ふふ、祐一さん、なんて言ってくれますかね。……あっ、時間」
美汐は机の上の時計に目をやると時計の針は8時半を指していた。
「いけません、10時に待ち合わせだというのに。このままだとあの人に先を越されてしまいます」
待ち合わせ場所は祐一たちの住む駅のベンチ。美汐の家からなら3、40分で行けるというのに美汐は慌てていた。
「あの人の事です、絶対1時間は早くに行って私のことを遅いとか言うつもりに違いありません。そんな酷な事は無いです、いつも遅れるのはあの人なのに……」
そう言ったかと思うと美汐は急いで部屋から飛び出した。
誰もいなくなった部屋の中にきらりと光る物があった。
それは壁に貼られた幾つかの写真が光で反射した所為だった。
祐一たちと山に行った時の写真。海に行った時の写真。そのほか様々な写真が貼られていた。
そして、プレゼントに囲まれた美汐を中心に真琴や名雪、その他美汐が親友だと言っている人全員で撮られた写真が一番目立つところに貼られていた。
名雪や佐祐理などはさほど顔が赤くなっていないが、真琴や栞などは真っ赤な顔をして写っている。
そして祐一は何故か息も絶え絶えと言った感じで写っていた。
けれどその時の美汐の顔は他のどんな写真よりも優しく、可愛い笑顔を浮かべていた。
あとがき
終了です。ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
当初はもっと短く書くつもりでしたが、Kanonのヒロイン、サブヒロイン、全てを出すことにしてしまったため
予想以上に長くなってしまいました。
最後はこういう風にまとめましたがどうだったでしょうか。
<PS>
4日目前編の最後にあゆが狐のぬいぐるみを見て不思議に思ったのは祐一が買ったはずのアクセサリーではなかったからです。
また、ぴろの扱いですが、作者はぴろは美汐が出会った狐の生まれ変わりだと思っているので
陰ながら見守っていると言った感じにしました。
まっ、途中まで忘れていましたけどね。
そしてエピローグ。
時間設定ははっきりと決めてはいませんが、まぁ春休み頃と考えています。ずっと未来でも良いんですけどね。