バレンタインな舞踏会
空を見上げる。
高い空から降り注ぐ雪。
白く冷たい雪。
心の底までも冷たくならないように祈る。
つらい日は、もう繰り返したくないから…。
新雪を踏みしめながら、とある屋敷へと向かう。
優雅な舞踏会。
満月の下、着飾った男女が踊るのです。
女性はこの日のため、きらびやかドレスが、
男性は気品高くキリッっとしたタキシードが用意されます。
舞踏会の会場は野外です。
そう、この寒い中踊るのです。
でも何故こんな寒い時に…。
会場に辿り着くとまだ、参加者は来ていないようです。
ただ、テーブルが置かれているだけです。
一緒に来た真琴は、そわそわしているようです。
どうやら、この会場に置かれている鍋が気になっているみたいです。
鍋は火がかけられて、いい匂いがします。
これは牛丼だと思います。
庶民的な味が大好きな舞さんの希望により
牛丼を用意することにしたのでしょう。
もちろん、牛丼だけでなく、美味しいご馳走も待っています。
腕利きのシェフの料理だそうです。
野外だとどんなに美味しい物も冷めて台無しになりそうです。
色々と考えている間に真琴は鍋の手を入れようとしています。
あ…。
手は素早いです。
水瀬家でもつまみ食いの常習者なのでしょうか?
ド〜ン…。
カラカラカラ…。
鍋の中身をぶちまけたようです。
…。
ドレスは瞬く間にシミが出来てしまいました。
これでは、折角のドレスが台無しです。
家からドレスを着てきた私と真琴。
真琴のドレスは秋子さんが用意してくださった物だそうです。
私はすぐに真琴の手を取ると走り出していきました。
鍋をこぼした責任を問うよりも身なりを気にしてしまったのです。
「あぅー、に、肉ー」
当人は反省してないようですが…。
無理やり連れて行くことにします。
行き先は主催者のところです
『どうも申し訳ありませんが、真琴に一着貸していただけませんか?』
「あはは〜。構わないですよ」
佐祐理さんはおおらかなようです。
嫌な顔ひとつせず、ドレスを用意してくれました。
この主催者の倉田佐祐理さん…。
以前、学校の体育館にて踊った生徒会主催の舞踏会では
あまり楽しめなかったみたいです。
それならば楽しくみんなで踊りたいと舞さんの提案だったそうです。
広大な敷地を持つ倉田家はパーティにはぴったりなわけです。
本人は大きくは無いと言ってはいましたが…。
とりあえず、真琴の着替えのためにひと部屋借りることになりました。
早速シミのついたドレスを脱がそうと手をかけました。
スーっと簡単に脱げ落ちます。
まだ、小ぶりとはいえ今後成長するであろう
2つの膨らみがあらわとなった。
真琴は綺麗だなと思い、しばらく私は見入ってました。
いつかは祐一さんに取られるなと。
「あぅー、寒いよー」
あ、そうでした。
新しいドレスを手に取り…。
トントン
手に取ったと同時でした。
ガチャ
「入りますね」
早ッ…。タイミング悪過ぎで、早過ぎです。
応答の間も取ってません。
答えたとしてもシドロモドロでしょうが…。
「あ…あは…は、ま、まだ着替え中でしたか?」
狙っているのでしょうか、このヒトは。
こういう時は、どういう顔をすればよいのでしょう?
とりあえず…。
『あははっ』
満面の笑みで。
「それは佐祐理のです」
う、うーん…。
『あぅー』
こうなればやけくそです。
「え、それは真琴のー」
「とりあえず、もうすぐ舞踏会が始まりす
場所が変わりましたのでお知らせしに来たんです」
いつのまにかハンカチを片手に持ち、汗を拭いているようです。
早く準備をしてくださいねと付け加えると
早々と退出されました。
さてと、更なる誤解を招かぬ前に…。
すぐに新しいドレスを着せました。
前のドレスは胸元が少し覗けるような真っ白のデザインでしたが、
新しい方は色は情熱の赤で、胸元が、けっこう大胆です。
背中も大きく開き、大人っぽく見えるはずです。
言動がアレなので、無理かもしれませんが…。
でも私はこっちの方が好きです。
ちなみに私のドレスはピンクのふりふりなやつです。
可愛いデザインだと思います。
真琴の手を引き、新たな舞踏会場となった場所へ向かいます。
ふと窓を見ると日も落ち込んできました。
冬の夜空では寒いでしょうが、月夜の明かりにて踊ると
絵になると佐祐理さんは提案されたそうです。
確かに凛とした冬は威厳がありますので、いいかもしれません。
冬の夜空にみんなでドレスやタキシードですから…。
寒さには勝てないでしょう。
決め手は舞さんにあったみたいです。
一言
「寒い」と。
会場には時間が掛かりました。
倉田家の敷地は学校よりは大きいみたいですね。
会場、広く天井は高いです。
そしていつでもパーティが開けるのではないでしょうか?
そんな感じさえします。
入り口の辺りで人だかりができています。
ほとんど知っている人ばかりです。
祐一さん、名雪さん、秋子さん、あゆさん、
栞さん、香里さん、北川さん、
舞さん、佐祐理さん、そて真琴と私。
軽く挨拶を済ませると、すぐに曲が流れてきた。
いきなり踊れってことなんでしょう。
「あははー、みなさん楽しんでくださいね」
佐祐理さんの一声を皮切りに参加者は距離ととって踊りだした。
だいたいはパートナーがいるらしく
踊る人がいないなど問題は無かった。
クラシックに合わせて
軽いステップを利かせて踊っていた。
真琴は私と踊っています。
もちろん、たどたどしいです。
私が真琴を見つめると
あぅーあんまりだーという目で見られます。
なんか可愛いです。
所々で真琴は転びそうになったり、
他の人に当たりそうになったりします。
狙っている気もしないでもありません。
ここは周りの人に当たらないように誘導するのが私の役目なのでしょう。
私は真琴の手を取り、空いていそうな場所へと移動しようと思いました。
「あぅー危ない」
名雪さん、秋子さんの組に当たりそうです。
名雪さんはほとんど気がついてないようです。
もしかして半分眠っているのでは?
秋子さんは、とっさの判断でさっと身を翻しました。
秋子さんは笑っていました。
大丈夫よと言っているそんな感じの表情をするのです。
一安心です。
秋子さんは名雪さんを引き寄せると、私達から離れていきました。
他にもモンキーダンスを踊る舞さん、佐祐理さんや
栞さん、香里さん、北川さんの組(三人で手を繋いで踊ってます)
にぶつかりそうになりました。
やはり、真琴が人にぶつかって行こうとするのは
構って欲しいからなのでしょうか?
私は真琴の目を見て踊ることにしました。
もっと楽しみたいのです。
この一瞬を。
と、その瞬間です。
ドンっと。
ついにやっちゃいました。
うぐぅ。
あぅー。
ほぼ同時です。
まだクリーンヒットは無かったのですが、
今回はぶつかってしまったようです。
真琴とあゆさんの衝突です。
しかも正面衝突です。
二人ともターンをしてぶつかりました。
とりあえず、真琴を私が、あゆさんを祐一さんが起こすことにしました。
『大丈夫?』
「おい、大丈夫か?」
私と祐一さんは同時に声をあげました。
「うぐぅ。大丈夫じゃないよ」
「あぅー。大丈夫じゃないっ」
こちらも同時です。
「返事ができるから大丈夫だ」
いつもながら、なんの根拠も無いことと
いつもの自信に溢れる祐一さんは笑ってます。
「お互い大変だな」
『ええ』
私はそう答えるしかなかったです。
「ぶつかるのと転ぶのが得意だからな」
「うぐぅ、ひどいよ祐一君」
「あぅーひどいよ」
辺りは修羅場と化したようです。
「泣かないで、泣かないで」
子供をあやすように(実際、子供ですけど)
秋子さんは真琴とあゆさんに
小さな赤いリボンのついた袋を渡しました。
「えっ?これは?」
「えっ?これは??」
「チョコです」
「空けてもいい?」
真琴は秋子さんの「いいですよ」の一言よりも先に
袋を空けて食べ始めました。
ハート型のチョコは小さな手で鷲掴みにされて
いっきに口の中へ。
すぐになくなりました。
隣で見ていたあゆさんも驚いてます。
うぐぅと。
「私のもありますよ」
もっと後で渡す予定でしたが、
チョコを食べている真琴の目を見ていると
今すぐにでもあげたい衝動に駆られました。
嬉しいのです。
この時が…。
「ありがとう、みしお」
その後、皆さんチョコを渡していました。
ダンスはそっちのけで。
祐一さんは沢山貰っていましたが、
北川さんは香里さんの小さなチョコ一個です。
「これだけか?」の問いに
「当然よ」の一言で済まされたみたいです。
なんだか小さくなり、存在まで消えそうな勢いです。
「私の祐一さん用のチョコですか?
真琴が食べちゃいました」
〜後書き〜
急いで書きました。
もっと時間かけたかったです。
でも追い込まれないとダメなんですよね(^^;
舞踏会の話は初め美汐の妄想にしようか迷いました(笑)
バレンタインの話なのでチョコ作りをするところにしようと
思いましたが、いつの間に変わってました。
最後は真琴のことだから、祐一にあげないって
いじわるしてみました。