2月9日16:37商店街
某ファーストフード店にて
ねえねえバレンタイン、チョコレート誰にあげる?(^○^)
ん〜T田くんかな〜<キャー(>_<)
しおりんは〜(^_^)
それは秘密です(はあと)
ずる〜い〜、教えてよ〜(T_T)
えへへへへへ。そういえば天野さんは(^_^)
・・・え(・o・)
『この両手いっぱいに百合の花束を』
〜Please sing the love song〜
そういえばもうすぐバレンタインデイ。
好きな人に自分の思いを告げる日。
今までは父にチョコレートをあげるくらいで、特別にだれかにあげることなんてありませんでした。
でも・・・私は・・・
そう・・・
今、好きな人がいます。
心がはち切れそうなくらい・・・
最初はそれほど意識していませんでした。
だけど、何時からか、あの人から目を離せなくなった自分に気付きました。
あの人の笑顔ばかり思い出して、他の事には全く手をつけられなくなっている自分に気付きました。
そして、あの人に抱きしめられたいと思うようになっていきました。
私は最初、自分はおかしくなったのかと思いました。
だけど、この気持ちを言葉に表すとしたら
『I LOVE YOU』
だから・・・伝えたい、この強く熱い想いを
でも・・・
あの人は私のことをどう思っているのでしょうか?
目立たない暗い下級生程度にしか思っていないのでしょうか?
でも、たとえそうだとしても
伝えたいのです
この気持ちを・・・
「はいもしもし。美坂です」
「・・・美坂、栞さんですか」
「はい、そうですけど・・・天野さん?」
「・・・・・・・・・・・・はい」
「私に何の用ですか?」
「・・・実は折入って頼みたいことがあるんです・・・・・・・・・・・・・・・」
2月14日8:27
学校校門前
「ねえ、香里。今日はバレンタインだね」
名雪が偶然一緒になった親友に話しかけた。
「ええ。それがどうかしたのよ?」
「香里って誰かにあげないの?」
名雪はちょっと意味ありげな笑みを浮かべて香里に話しかけた
「・・・名雪、あたしがそういうのに興味が無いって知っているでしょう?」
あきれた顔で香里は答えた。
「あ、意外にもらう側の方だったり」
「名雪、あんた最近相沢君の変な影響を受けすぎてるんじゃない?」
「そんなことないよ、香里って下級生からすごく人気があるんだよっ。私の部活の後輩からも『香里先輩ってカッコイイ』って言われてるんだよっ」
「そうなの?」
「うんっ」
名雪はまるで自分のことのように誇らしく語った。
香里のとってそれは意外な真実だった。
「ま、確かになー。スタイルもいいし、どこか大人びてるし、成績も優秀だし・・・。なにより香里って奇麗な女の子だしな」
「・・・な!?そ、そんなことないわよ!」
祐一の台詞に対し、香里は少し頬を紅潮させて反論した。
「(えへへ・・・実は昨日、お姉ちゃん、こっそりとお店でチョコレート買ってきたんですよ)」
「(へぇ〜。やっぱり?)」
その様子を見た栞はこっそり名雪に姉の秘密を告げ口した。
「栞、何を言っているの?」
少し脅し気味に香里は栞に問いかけた。
「わ、わ、何でもないですよっ。あっそうそうお姉ちゃん、今日の放課後中庭に来てくれませんか?」
香里は少し不満そうな顔で栞を見た。
「何の用があるのよ?アイスクリームを一緒にたべるのはお断りよ」
「そんなことしませんよ」
「じゃあ何よ?」
「それは来てのお楽しみです」
栞はお決まりのポーズをとって少し笑った。
同日放課後。中庭
「ねえ栞。一体こんなところになんの用があるのよ」
「お姉ちゃんに会いたいっていう子がいるんです」
「あたしに?」
「はい」
栞はにこにこした顔で姉の質問に答えた。
「おいで天野さんっ」
妹が振り返った先には一人の女の子が少し緊張気味な顔で立っていた。
香里はその少しおどおどした感じがとても愛らしく可愛いと思った。
「それじゃ私はこれで」
栞はそういうと校舎への扉のほうに向かって歩き、二人がいる方向へ振り返った。
「ふぁいっと」
そう女の子に言い残して栞は校舎の中へ帰っていった。
香里とその女の子はしばらく沈黙したままお互いの顔を見合わせた。
その顔を、香里はよく栞が友達として家に連れてきた子なので知っていた。
少しウェーブのかかったピンク色のショートがとても可愛かった。前からこの子は自分とは違って随分と女の子らしくて可愛いと香里自身も思っていた。それに時折見せる憂鬱な瞳を見るたび、何故だか守ってやりたいと思う気持ちが芽生えていた。
たしか名前は・・・
「あの・・・こんにちは・・・私、天野といいます」
「ええ・・・こんにちは。あたしは美坂香里、栞の姉よ」
とりあえず社交辞令として挨拶を交わし、互いの名前を名乗った。
そうだたしかこの子は天野美汐という子だった。
香里はこの少し憂いな顔をした少女の名前を思い出した。
「あの・・・なんの用かしら」
「実は・・・これを・・・」
「えっ・・・・・・」
美汐は手に隠し持っていたチョコレートを香里の手に渡した。
薄いピンクに可愛らしい絵柄の入った包装紙が彼女らしいと香里は思った。
「これを・・・受け取ってください」
「へ・・・・」
少し香里は動揺した。
「これを、食べてくれませんか」
「別に、いいけど・・・」
「この場で」
「この場で?」
「だめですか・・・?」
「いや、駄目ってことはないわ」
早速、彼女の作ったチョコレートを試食することなった。
甘過ぎることがなく、どことなく上品な風味、そしてこの繊細なデコレーション。素晴らしい出来栄えだった。
「あの・・・お味の方はいかがでしょうか?」
「ええ、おいしいわよ。あたしはこういったの好きよ。これ、あなたが作ったの?」
「・・・・・・・はい」
「どうやってつくったの?」
「隠し味に・・・」
「隠し味に?」
「私の・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そのまま美汐は赤面したまま硬直してしまった。
一体、何を入れたんだろうか・・・?
「まあいいわ、話したくないのなら」
少し気になったがこれ以上詮索したら彼女が可哀想なので止めておいた。
「そういえばどうしてこんなものあたしにくれたの?」
「・・・・・・それは、実は」
彼女の頬が柔らかい桃色から真っ赤な林檎の様な色に変わった。
「私、ここを入学したときから先輩のこと見ていました」
彼女は少しためらいがちに呟いた。しかし、そのか細い声の中にははっきりとした強い意識があった。
「栞さんの家に行った時も、あなたのことを見てて・・・こんな姉がいたらいいな、とか思っていたんです」
香里はなんだか話しが変な方向に走っているのを感じた。
「・・・すごく迷惑なことだとは分かっています。・・・でも私、先輩のことが、す・・・」
「すとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぷ!!」
香里は大声で彼女の台詞を制止した
女の子とはいえ、自分に対してこんな贈り物をしてくれるのはとても嬉しいことだった。女の子は嫌いじゃない。特にこんな可愛い子は見ていて楽しい
しかし・・・
「あなたの言いたい気持ちはよく分かったわ。でもこれはちょっと受け取れないわ」
そういって香里は美汐から受け取ったチョコレートを返した
すると美汐は今にも泣き出しそうな顔で下を向いた。
「やっぱり・・・そうですよね。自分が可笑しいことをやっていることしているのは知っています。でも・・・」
ああ、駄目よそんな悲しい顔されちゃ、ああなんて可愛らしいのっ。もぉ〜萌え萌え!お姉ちゃんあなたみたいなかわゆ〜い子だーい好きっ。てへっ。・・・って何LOVE電波に侵されてんのよっ香里。相手は女の子であなたも女の子よ。あの子は先輩としてあたしに憧れているのであって別に恋愛として好きじゃないの。まったく何その気なっちゃてんのかしら。
・・・やっぱり、最近相沢君の影響を受けすぎてるのかな。
・・・・・・・はぁ
さあ、ちゃんと彼女の思いこみをなんとか解かなきゃ
「あのね・・・」
「わかっています。でも・・・そうですよね。先輩には相沢さんがいるんですよね」
「えっ・・・ちょっとなんで相沢くんが・・・」
彼女の意外な台詞に香里は一瞬戸惑った。
あたしが相沢君を好き?
「さよなら」
はっと気がつくと彼女は涙の雫があたりに飛ばしながら何処かへ走り出そうとしていた。
「ちょっと待ちな・・・ふわぁ!?」
「きゃっ!」
その刹那、美汐の腕をを思いっきり掴んで引いたため彼女は香里の方に向かって倒れてしまった。
「あ痛たたた・・・・・・・・・・って、ぁわっ!?」
美汐の下敷きになる香里。ふと視線を上にあげてみる。
そこには美汐の顔、しかも今にも唇と唇が触れそうな距離で。眼と眼が互いの瞳を写ってあって、眼を逸らすことはできなかった。
二人の足と足とが絡みついている。
お互いの吐息が激しくなっているのが唇を通して感じることができた。
香里は雪で湿って濡れてしまった制服の冷たさと、彼女が火照った体温の温もりの両方を感じ取っていた。
「あっ、わっ、わっ、わっ、わっ、わっ、わっ、」
いきなりのことで、学年一位の頭の回路でもパニック状態に陥って次の言葉が出なかった。
「ホラ、おいで」
美汐は体の上体を起こし、座り込んだ姿勢のままで両手を開いた。
その両腕の中に香里はつい入り込んでしまった。
「こうすると落ち着くんです。」
美汐が優しく香里を抱きしめる。
ああ、何故か心に安らぎ感じる。きもちいい・・・もう、このまま・・・
「はぉつっ!!」
「きゃっ!」
急に美汐の手を払い、立ち上がる香里。
(危ないところだったわ・・・。後もう少しで百合の花園の扉を開門するところだったわ)
その先に何処かで見覚えのある二人の先輩方が『お戯れて』いたが気にしないでおこう・・・。
「・・・・・・・というわけで、残念だけど諦めてくれない?」
香里は美汐の自分への思いを断たせるためなんとか説得した。
そうしないと自分もどこか耽美の世界に飛び立ちそうだから・・・
「・・・・・・・・・やはり駄目ですか」
この世の終わりを見たかの如く、美汐は暗い表情で落ち込んでいた。
そんな美汐を見て可哀想だと思った香里は美汐に優しい言葉を投げ掛けた。
「でも、『恋人』はお断りだけど『お友達』ならいいわよ」
「え・・・」
「それに、別にあなたのこと嫌いじゃないわ」
「・・・・・・・あ、ありがとうございます」
「いや、そんな畏まらなくていいのよ」
「あの・・・一つお願いしてもいいですか?」
美汐は上目遣いで香里の顔の様子を伺う。その表情は強烈的に可愛らしかった。
「いいわよ、何?」
「お姉さまと呼んでいいでしょうか?」
「ソ・レ・ハ・チョ・ッ・ト・ヤ・メ・テ・ク・ダ・サ・イ」
思わず機械音性で返答してしまった香里であった。