「いらっしゃいませー」
今日、香里と栞の二人は百花屋にやって来た。
普段ならこれに祐一と名雪が加わるのだが、今日は名雪が『一日祐一所有権』を宣言して何処かへ行ってしまったので姉妹二人だけでこの店に行くことになった。
「あ・・・」
「あ・・・」
思わず静止してしまう香里とショートウェーブの少女。
しかし、ショートウェーブの少女の姿はメイド服。
「あ、天野さん!?」
「か、香里お姉様!?」
ゴンッ!
「わ、すごい音・・・」
香里は思わず玄関のドアに頭をぶつけてしまった。
(少し相沢君の気持ちが分かった様な気がするわ・・・)
『maid in heven』
彼女、天野美汐が美坂香里に告白して以来、彼女はずっとこんな感じである。
お昼には香里のために弁当を作ってきて、それをわざわざ美汐自らお箸で香里に食べさせてあげたり、香里がお風呂に入っているとき「背中を流してさしあげます」といっていきなり乱入たりと香里にとってははた迷惑なことをしていた。
しかも家族の誰一人として彼女を止めようとしない。
「あら、いらっしゃい、香里ちゃんに栞ちゃん」
そこに現れたのは顔馴染みのウェイトレスだった
ちなみに彼女の衣装もメイドだった
「あの〜どうしてそんな格好をしているのでしょうか・・・」
「あら、これはメイドさんよ」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「可愛いでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・」
思わず無言
「お姉さん、こんどはお宅の制服着てみたいわ」
「やめてください」
いろんな意味で・・・
「残念、がっくし・・・」
あんた誰や
「これ、残念させたで賞」
「そういうパクリネタはやめんかい!」
同じ会社だけど・・・
「ちなみに『天野美汐ちゃん一日所有権』」
ズガッ!
思いっきりずっこけてしまう香里
「わ、すごい音・・・お姉ちゃん大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ・・・・・・」
とりあえず席につく二人。
同伴して二人のメイドさん
「今日から制服を替えて見たんです」
「へぇ〜そうなんですか」
「で、これは何なの?」
香里は自分にベッタリくっついている少女に指を差す
「それは天野美汐ちゃんよ♪」
「そうじゃなくて・・・」
「今日からここで働くことになったの」
「はぁ・・・、で、どうしてベットリあたしにくっついてる訳?」
「あら、彼女じゃなかったの?」
にこやかに答えるウェイトレス
香里には嫌みにしか見えない
「・・・・・・どうして、それを」
香里は急に頭を抱え込んだ
「なゆちゃんが教えてくれたわよ♪」
「あの子は・・・まったく・・・あれほどいうなと言ったのに・・・」
口止めとしてイチゴサンデーを死ぬほど食べさせたのにしっかり忘れやがって・・・
名雪一週間苺禁止令、発令。
心の中でそう決心した
「あ、そうそうもう上がってもいいわよ天野ちゃん」
香里が悩んでいる中ウェイトレスは美汐の方に顔を向けてそう言った。
「え・・・でも、まだお仕事が」
(そうよさっきからあんたたちお仕事はどうしたのよ!)
「今日はもういいのよ♪あ、それからその制服今日は持ち帰ってもOKだから」
「ちょっと待てや」
香里が制止しようとするがいっこうに止まらないウェイトレスさん
「あら何ならネコ耳も貸してあげましょうか?ねぇ香里ちゃん」
「なんであたしに振るのよ・・・」
「デ・ジ・キャラット風と魔法少女猫たると風どちらがいいですか?」
「やめんかい!」
「じゃ、わたしもそろそろ・・・」
栞は席から立ち上がって出て行こうとする
「あ!!ちょっと何出ていってんのよ栞!」
「お姉ちゃんっ」
「何よ・・・」
見覚えのあるポーズをして
「ふぁいと!だよ」
「・・・・・・・・・何をがんばるのよ」
香里は思わず体勢を崩して席から滑り落ちてしまった
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
お互い沈黙したまま様子をうかがっている
やっぱし美汐は可愛い。
しかも今、彼女はメイド姿だ。
こんなダブル攻撃があっていいのだろうか?
もしこんな姿で・・・
『御主人様、今日一日美汐がご奉仕してあげます』
な〜んて言われたも〜うサイコッじゃない♪
むしろウェルカム?
はにゅ〜〜〜〜〜〜〜〜☆
・・・・・・ってやっぱしなんかおかしいいわ、最近のあたし。
昔はもっとクールな感じだったのに・・・
「あの・・・」
天野が最初に口を開いた
「・・・こういう場合は『御主人様』とお呼びすればよろしいのでしょうか?」
「いや、呼ばなくていいわよ・・・」
危うく体を崩しかけてたが何とか持ちこたえた
「・・・では、『香里様』?」
「『?』って聞かれてもこっちがこまるわよ・・・」
さすがに香里も段々こういうのにも慣れてきた
「・・・私はいつだって本気で言っています」
余計たちが悪いわ!
「あのね、前にも言ったけどあたしは普通なの。そういうのには興味が無いの」
「それは嘘です」
「え・・・?」
曇りなき彼女の眼が香里を見つめる。
そう、まるであたしの心の奥底を見透かしたような瞳
__もしかして全部、わかっている?
「香里様のお部屋に妹様の特別御写真集があることくらい」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
え〜と
「その『香里様』ってのは何?あとなんであたしのそんなものがあるって知っているの?それ以前にいつあたしの部屋に入ったの」
「・・・・・・・・・・・栞さんの体操服姿から隠し撮りの着替えシーンまで」
「あ!!あんた中身まで見たのね!?」
「現在5巻めに突入・・・」
「あんたは他人の家で何をしている・・・」
「・・・ちなみに見つけたのは名雪さんです・・・私はそれをちょろっと・・・」
名雪1ヶ月苺禁止。
「あのね、もうこういうの止めてくれる?」
__なんだかカップルの破局みたいな切り出しかただわ・・・
自分の心の中でつっこむ香里
「え・・・・・・・・」
「私のこと・・・嫌いになったのですか・・・」
美汐は今にも泣き出しそうな顔をしている
それをみているだけで、セツナイ。
「いや、嫌いとかじゃなくてね・・・」
つい慌てて香里は否定しようした。しかし美汐のニの言葉は早く出た
「では、なぜ私のことを拒むのですか?」
「いや、拒むとかじゃなくてね・・・」
「曖昧な言葉でごまかさないでください!」
とても(普段)内気な彼女とは思えないほど強い口調ではっきり言う
しばらく沈黙の後、香里は残っていたコーヒーをいっきに飲み干す。
それでも香里はどこか渇きを感じた
「あのね・・・あたしに好意を持ってくれるのはうれしいわ。でもね、過ぎた想いは人を傷つけるだけなのよ。それに誰にだって心の中に触れられたくない聖域があるの」
「それでも・・・あたしは・・・貴方のことを」
「それに・・・はっきり言うけどあたしはね、他人に干渉されるのが大っ嫌いなの」
静寂。
__なんかあたしって女を簡単に振る悪い男みたいだわ・・・
百花屋を出た後、香里はあてもなくあたりをふらついた。
帰ってきたとき、夕日はすっかり沈んでいた
ふう、今日は散々な日だったわ・・・
早くシャワー浴びてぐっすりと眠りたいわ・・・
「お帰りなさいませ、御主人様」
玄関には美汐。
しかもメイド服を着たままで
「・・・な、なんであんたがここにいるのよ・・・」
「快く栞ちゃんが入れてくださいました」
「あの愚妹め・・・」
「ちなみに栞ちゃんから伝言です・・・」
「栞から?」
「『みっしーいぢめた罰としてお姉ちゃんの幼い頃の写真を水瀬家にバラす』だ、そうです」
「・・・・・・・・・」
栞1ヶ月アイス禁止令&美坂家刺激物増強週間発令
「どうなさいました?御主人様」
「・・・あのね、その『御主人様』ってのやめてくれない?普通に香里でいいから・・」
「・・・では・・・香里、さん・・・」
「・・・・・・な、何よ」
「今日、一日・・・美汐が御奉仕さしあげます・・・」
Fin.