「ぷろじぇくとみっしー。」

作:MayUkI_YanASe
注:またもや恋人同士の設定です。
  前回とは呼び方違いますが気にしないで下さい。(笑)
注2:通常の三倍ヘタレです。赤色です。

「なんなんだこりゃ………」
 部屋に入ると、馬鹿でっかいダンボール箱が目に飛び込んできた。
 それは堂々と部屋の中心に据えられており、リボンで丁寧に包装されている。
「………とりあえず、開けてみるか」
 俺は開封作業にかかった。
 特段、密封してあるわけでもないようなので、リボンを解くと、簡単に蓋が開いた。
「一体何が入って……」

 ぱたん。
 覗き込んだ瞬間、無言で閉めた。
 何かの見間違いがも知れない。
 そして悪い夢なのだろう。きっと。たぶん。そうであって欲しい。
 もう一度、覗き込むことにした。

 ぱたん。
 見間違いじゃないらしい。
 しばらくの間を置いて、俺は一つの結論に達した。
「よし、棄ててくるか」
「酷いです相沢さん」
 間髪入れずに言う。
「あのな………」
「はい、何でしょう」
「その格好は何なんだ? 美汐」
「相沢さんが気にいるかと思いまして………」
 顔を赤らめて俯く。いや、遅いし。
「とりあえず」
「はい」
「服を着てくれ………」
 俺が箱の中で見たもの、それはリボンだけを身に纏うという、きわめてベタな格好をしている美汐だった。

 *

「で?」
「はい」
「いや、はい………じゃなくて」
「いいえ」
「そういう意味じゃない」
 最近、美汐が真顔でボケることを覚えた。なんか腹が立つ。
 じゃなくて、
「何であんな真似を?」
「どんな真似ですか?」
「………リボンだよ」
「仰ってることが解りませんが」
 コノヤロウ、あとでシメる。
「リボンだけの服装であの箱の中に入ってたことだよっ!」
「ああ、アレは秋子さんに手伝ってもらったんです」
「マジか」
「マジです」
 あのヒトはナニを考えているんだ。
 いや、そうじゃなくて。そこに問題ありそうな気もするけどそうじゃなくて、
「どういう理由で、あんなことをしたんだ?」
「さっきも言ったでしょう、相沢さんが喜ぶかと思いまして」
「………本気で言ってるのか?」
「本気です」
「何で突然………」
「相沢さん、今日が何の日か、ご存知無いんですか?」
「今日? ……………何月何日だ?」
「カレンダーくらい見て生活して下さい………」
 心底呆れたように言う、………俺の方が呆れてたはずなんだが………。
「二月十四日です」
「ああ、節分か」
「それは三日です」
「なら、建国記念日か?」
「それは十一日」
「じゃあ、みどりの日」
「四月二十九日です」
「重陽の節句とか」
「九月九日です」
「むむ。やるなみっしー」
 ………しかし、何の日だったか思い出せん………何の日だっけ?
「なあ、何の日だ?」
 美汐は、はあと溜息をつき、俯く。心なしか肩が震えているように見える。
「…………です」
「ん? 何だ?」
「もういいですっ!!」
「おわっ!?」
 美汐は突然立ったかと思うと、どかどかとドアに向かって歩き出した。
「ちょっ、ま、待てよ! 何だよ急に!」
「もう知りませんっ!相沢さんの馬鹿っ!!」
「ちょ、落ち着け! 何か俺、悪いこと言ったのかよ!!」
「いつもですっ!」
 うむ。それもそうだ。
 ………………じゃなくてっ!
「待てってば!」
「離して下さいっ!!」
 美汐は肩を掴んだ俺の手を振り解こうともがく。
 と。

 ぽと。
「あ……………」
「ん?何だこれ」
 美汐のスカートのポケットから落ちたもの拾い上げる。
 赤地に、紺の細いストライプの入った包装紙で包んであり、丁寧にリボンのかけてある箱だった。
「St.Valentine's day………?」
 あ、そうか。
 そういえば、今日バレンタインデーだっけ。
 帰り道に北川と、誰からも貰えない寂しさを友情の証として分かち合っていたな、そういえば。
 寂しい奴らとか言うな。
 しかし………、
「なるほど…………」
 呆れが先行して、完全に忘れてた。
 第一、美汐はそういうのくれるタイプじゃないと思ってたからな……。
「か、返して下さい!」
「嫌だ」
「それは相沢さんのじゃありませんっ!」
「じゃあ、何で持ってきた」
「それは………その………あの………」
「ん? 言ってみろ」
「そ、それは非常食ですっ!」
 山田君、座布団一枚持っていきなさい。
「なるほど………これを持ってきてくれたのか」
「だから違うと何度も言って………!」
 ぽん。と、手を美汐の頭に置く。
「ありがとな」
「え………」
 しばらくして、美汐の顔が真っ赤になった。目が涙ぐんでいる。
 ぎゅっ、と。手で美汐の頭を、自分の方に押し付ける。
 ………馬鹿だな、俺。
「……………」
「あ、それと」
「?」
「リボンのほう、ちょっと嬉しかったぞ」
「………………馬鹿」

 日々はゆっくりと過ぎ去っていく。
 平和に、退屈に、そして、大切に。

Fin

その後の話。

秋子:「あ、美汐ちゃん、上手くいった?」
美汐:「はい、おかげさまで」
秋子:「えっ………」
美汐:「? どうかされましたか?」
秋子:「あ、な、なんでもないのよ?」
美汐:「そうですか。今日は本当にありがとうございました(ぺこ)」
秋子:「そう………気をつけて帰ってね?」
美汐:「はい」
SE:『バタン(ドアの閉まる音)』
秋子:「………失敗したわね………
    美汐ちゃんの失態で、名雪を有利にしようと思ったのに………」

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