| 銀のラトゥラ |
<10> 未来への扉
保護者探しが始まった少女の事は、女王名の通達で、すぐに守護聖達の知るところとなった。
前日にゼフェルや少女自身からの断片的な情報があるせいか、これといった波風が立つということもなかった。
ただ、ジュリアスだけはゼフェルの仕業だということについて何やら言いたげであったが、そこはルヴァが間に入るという事で、事なきを得たのだった。
そして、まだゼフェルが謁見の間にいる頃、庭園にいた少女にランディとマルセルが近づいていった。
「こんにちは! 君だね。ゼフェルが連れてきた子っていうのは」
覗いていた花壇から振り返り、伺うような視線で少女は二人を見上げている。
「俺はランディ。ゼフェルと同じく守護聖なんだ。ゼフェルは鋼の守護聖だけど、俺は風の守護聖さ」
「僕はマルセル。同じく緑の守護聖なんだよ、よろしくね」
少女は少し微笑むとスカートを少し持ち上げ静かに礼をした。
「そんなにあらたまった挨拶しなくたっていいんだ」
「そうだよ。ちょっとお話ししてもいいかな?」
うなずいた少女は、花壇の端に腰を下ろす。
二人は少女の前に並んで座ると興味津々で話しかける。
「ねぇ、聖地には少しは慣れた?」
やさしく尋ねるマルセルに少女は少しうなずく。
「ゼフェルの屋敷に居たんだって? じゃあ、まわりはメカや部品だらけだったろ?」
ランディの問いかけに、本当にそうだとでも言いたげに2回うなずく。
「あははっ、やっぱりそう思う? 今までと環境が違うだろうから大変かもしれないけど、お父さんやお母さんが見つかるまで頑張ってね」
「そうさ、早く見つかるように俺達もがんばるからな!」
さわやかに話しかけたランディだったが、少女の表情は徐々にこわばっていく。
「大丈夫だよ、きっと見つかるよ。ね?」
マルセルの語りかけにも表情が変わる様子はなかった。
「おめーら、何も知らねーからそんな事が言えるんだ」
「ゼフェル!」
ランディが驚いたのもムリはない。
そこに音もなく現れたのは、謁見の間から解放されたゼフェルだったからだ。
しかし、何故かいつもより元気がない。
「だって、僕たちこの子を励まそうと・・・」
「そいつにはそいつの事情ってもんがあるだろー・・・おい、おめーはその辺で遊んどけ」
「ゼフェル〜。そんな言い方しなくたって」
マルセルは少女をかばうように肩に触ろうとしたが、少女はするりとマルセルをかわすと噴水の方へ駈けていった。
「ゼフェル。どういうことなんだ? 俺たちが何かいけないことを言ったっていうのか?」
問いかけるランディに、暗い表情のゼフェルはいつになく震える声で言った。
「あいつ・・・もしかしたらオレたちと一緒かもしれねー・・・」
「僕たちと一緒って、どういうこと?」
「それは・・・それはだな。もし両親が見つかったとしても、あいつには戻れる場所が無いかもしれねーってことだ」
「そんなバカな・・・」
真剣な表情のゼフェルを見て、しばし言葉を失った二人だった。
◇
時を同じくして、噴水近くのバラの生け垣に佇んでいたのはオスカーである。
「やぁ、お嬢ちゃん。もう具合は良くなったのか」
早足で駈けてくる少女に向かって声をかけた。
少女はオスカーに近づくと、にっこりと微笑んで静かに会釈をする。
「ははは、そんなにかしこまらなくてもいいんだぜ。お嬢ちゃんが元気ならそれでいい」
オスカーは、近くにあったオレンジ色のバラを一輪手折ると、そっとひざまづき少女へ差し出した。
「あ〜ら、オスカー。あんたの守備範囲も広がりまくったもんだねぇ」
通りかかったオリヴィエが、冷やかし半分に近づいてきた。
「なぁに、ちょっとした縁があったんでな。な、お嬢ちゃん?」
少女は両手でバラを握りしめ、じっとオスカーの顔を見つめている。
「あんたなら世界中の女性に縁があるって言いたいんじゃナイの?」
「オリヴィエ。今朝の陛下からの話、それがこの小さなレディなんだぜ。れっきとした縁じゃないか」
「じゃあ、ゼフェルが連れて来て、昨日あんたが助けたっていうのがこの子だってワケ?」
ふいの大声に驚いた少女が、オリヴィエの方を向いた。
「まっ! オスカーそっくりじゃない。ま・さ・か、隠し子じゃないでしょうねぇ?」
オスカーは額に手をやり、小さな溜息をつく。
「はぁ・・・これで3人目だぜ。そんなに似てるのか?」
「似てるも何も、ウリ2つ・・・いや3つや4つくらいはあるね」
「なんだそりゃ。これから先、聖地中に「この子は私の子ではありません」って宣伝しなきゃならないっていうのか?」
「もしかしたら、その必要あるかもよ〜。キャハハハ・・・」
二人の様子に少女も肩を震わせている。
「おい、オリヴィエ! はぁ、お嬢ちゃんまで・・・ははは」
三人の楽しそうな笑い声が噴水の音に混じっていった。
◇
占いの館では昨日から元気のないメルが、水晶球を前にぼーっとしていた。
「ごめんくさ〜い・・・って、メルちゃ〜ん。おるんか〜?」
入り口の布を跳ね上げて入ってきたのは謎の商人ことチャーリーだった。
「え? あ、あの・・・商人さん?」
メルには一瞬何が起こったのか解らなかった。
「ははぁ、驚くのも訳ないわなぁ。週末でもないのにオレがおるんやもんな」
「うん。メル、びっくりしちゃった! でも、商人さんはどうしてここへ来たの?」
「なんや、今朝早うに女王陛下からお呼びがかかったんや。で、訳も解らず聖地に飛んで来たらな、朝のトレーニング中のヴィクトールはんに偶然遭うてしもうてな」
「え? ヴィクトールさんに?」
「せや、メルちゃんがオレにメチャメチャ会いたい言うとったって聞いたさかいな、こうして来てみたっちゅう訳や」
「そうだったんだ。でも女王陛下のご用はどうしたの?」
「あぁ、それならもう済んでしもうた。せやから来れたんやて。で、メルちゃんの用事ってなんやったん?」
「そ・・・それがね」
メルは昨日の水晶球の経緯を、チャーリーに話して聞かせた。
「・・・だからね、踊る影が被ってたその帽子ってどんなものか商人さんなら解るんじゃないかなぁって思ったの」
「帽子って、メルちゃん。その水晶に映った影ってゼフェル様の所におるっちゅう、子供のことなんちゃうか?」
「え? ゼフェル様の子供?」
「ちゃう、ちゃう。一昨日の夜からゼフェル様の所に身元不明の子供がおるらしいんや」
「じゃあ、クラヴィス様が言ってた「もう聖地にいる」っていうのはそのことだったんだ!」
「メルちゃん知っとったんか。さすが、占いの館をあずかっとるだけあるわ」
「そ・・・そうでもないよ・・・メル、恥ずかしいな・・・」
また例のモジモジが始まった。
「ま、両親を探してる最中やっちゅう話しだったさかい、協力してあげるのもええんちゃう?」
「そうだね。メル、その子に会いに行ってみるよ!」
「そや。そうしてやり。ほな、オレは帰るわ」
「ありがとう。商人さん」
さっきまでの様子が嘘だったかのように元気を取り戻したメルは、意気揚々と占いの館を出ていった。
つづく。
チャーリー登場!!(やっと私の分身が…違う)
しかも「ごめんくさ〜い」で登場とは!!! えでぃさん、やってくれるわ。
これでキャラ全員登場です。とにかくご苦労様ですが、続きもよろしくね!!えでぃさん♪
こちらはえでぃさんの小説の第10部です。