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『Keep Your View』


「ん・・・雨・・・?」
 いつから降っていたのだろう。カンバスから顔をあげると見計らったように雨あしが強くなった。部屋の中はすでに薄暗く、振り返ると窓には幾筋もの雨が流れ落ちている。持っていた筆の色もこれ以上画面を彩るには明る過ぎるようだ。
「やれやれ、休息の合図か、空のやきもちかい?」
 風景画用の少し横長なカンバスには、今にも暑い風が体にまとわりつきそうな熱帯の森が描かれている。木々の葉に輝く日差しの明るさは、そこがまるで異次元の世界にそのままつながる窓のようだった。
「騒がしき森に、捕らわれの極楽鳥か・・・クックックッ・・・」
 薄闇のなかで静かに思い出し笑いをしていても、その記憶の大半を占める者の笑顔が、優しく、でも確実に心のどこかを締め付ける。
「!」
 彼は何かを振り切るように立ち上がると、少し怒ったように部屋を出ていく。何のためらいもなく外へと続くドアを開け、降りしきる雨の中に立っていた。
「君の星にもこんないじわるな雨は降るのかい。行く末は優しく大地を潤す河の流れに変わるとしても、今は僕の身体の奥の大切な記憶を流し去ろうとしている・・・」
 睫毛を伝って頬を流れ落ちる雫を拭いもせず、両手を握りしめ、ただ立ち尽くす姿は、周りの空気をすべて敵にまわして立ち向かっているようにも見えた。
「でもいいさ、僕はいつだって自由なんだ。その先の大海原までだって、君
の思い出を取り戻しにいくさ。必ずね・・・」
 彼は一度だけ髪をかきあげ、何事もなかったように振り返り家の中へと消えた。
 いつしか雨もあがり、雲の切れ間から射した夕刻の日差しがついさっきまで彼のいた場所を照らし出していた。
                         Fin
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名前は一切使っていませんがセイランものなんです。アンジェでショートストーリー書くの初めてなんで、どんなもんかと思いつつも送ってみます。
タイトルは私が大好きだったPINKというアーティストの曲です。この曲を聞きながら思いついた話なので、もし何かで見つかれば聞きながら読むとより臨場感が増します。


えでぃさんありがとうございました。また素敵な作品出来ましたらよろしくお願いしますね♪

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