| SLEEPING BEAUTY |
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キッチンのテーブルに俯せて、彼女は眠っていた。 『今日は個展の準備で遅くなるから、先に寝てて』 朝早く出るときに、僕が言った言葉だ。 確かに先に寝てはいるけど、意味が違う。 「風邪ひくよ、アンジェリーク」 そう声をかけてみたが、何の反応も示さずに寝息をたてている。 見慣れている寝顔。海を讃えた大きな瞳は閉じられ、少し上気した頬が愛らしさを強調していた。 おとなしく、でも表情豊かな少女。 本当は新宇宙を統べる、柔らかく大きな翼を持つ天使だった。 その素質は十分にあったし、女王になっていたら慈愛に満ちたその笑顔で、全ての惑星の民から愛されていただろう。 その光り輝く未来を捨ててまで、僕を選んでくれた。 否、今がその『光り輝く未来』だと、彼女は笑っていたっけ。 手を伸ばし、柔らかな髪を梳くと、少し身じろぎをした。 「ん……セイラン様……」 寝言だということは分かり切っていた。だけど、あの頃に戻ったのかと思って、少なからず驚く。 そして、とても嬉しかった。 「アンジェリーク」 少女の名前を呼ぶ。まだ開かない瞳に、唇を落とした。 異変に気づいたのか、ゆっくりと目を覚ます。 目を擦り、僕を見て、彼女は微笑んだ。 「お帰りなさい。セイラン」 きっと僕は、君に逢って初めて、人を愛することが出来た。 この笑顔が、僕の居場所。 「ただいま、眠り姫」 彼女こそが、僕の『光り輝く未来』−。 | ![]() |