後編

 

 

あれから秋も終わり、冬のなかばに入った頃、俺たちは寒さも忘れてロボトルの練習をしていた。
今日は2体でのロボトルをすることにしていた。

まさかそこででてきたのがあのヘッドシザースだったとは・・・。
ヘッドシザースはメタルビートル同様、俺の住む町では売っていないメダロットだった。
もちろん俺と太助が大はしゃぎしたことは言うまでもない。


  そして練習するうちに日が落ち始める。
「お、もう暗くなってきたな。じゃあ今日はこの辺にするか」
太助はそういうと自分のメダロットをしまう。
「今日は急がないといけないから、じゃあな〜」
太助はいつものように走っていく。
「あ、俺、隆史ん家の近くまで用事があるから一緒に行くか」
「うん、そうだね」
そして俺たちは薄暗くなった道を歩き始める。
その間、隆史とはいろんな話をしていた。
ロボトルのこと、学校のこと、遊びのこと、そして・・・
「あ、裕介君。ここってさ、雪降るの?」
隆史は突然思いだしたように言う。
「ん?ああ、結構降るよ。もうすぐ冬休みだからそろそろ降るんじゃないかな」

俺は空を見上げながら言う。
「ふ〜ん、そっか。前、僕が住んでた所は全然雪が降らなかった。だからまだ本物の雪は見たことがないんだ」

「雪はいいぞぉ。特に雪合戦だな。メダロット対人間!とかやってさ」
「僕もやってみたいな〜」
「じゃあ雪が降ったら学校のみんなと一緒にやろうぜ。ただ結構痛いんだよなぁ」
「大丈夫だよ。楽しみだな〜」
隆史は嬉しそうに喜ぶ。
そして隆史の家に近づいてきた。
「お、じゃあここで俺はむこうにいくから、じゃあな」

「うん、じゃあね」
隆史は手を振りながら家へと向かっていった。


  俺は用事もすまし、小走りで家に入っていった。
「う〜〜〜。寒い・・・」

俺はすぐに居間のこたつの中に滑り込む。
「あ〜〜〜、極楽極楽♪」

「なにじじくさいこと言ってるのよ」
母親があきれながらこたつに入る。
「いいじゃんかよ〜。べつに」

俺はむくれながら反論する。
「あ、そうだ裕介。あんたのクラスメイトに上野隆史って子いる?」

「ん?いるよ。隆史がどうかしたの?」
「ん〜〜、近所の人から聞いたんだけど隆史君、エイズのかかってるみたいなのよ」
それを聞いて俺は体を起こす。
「エイズってあのやばい病気の?」

「うん。まぁこれは聞いた噂だから。でも本当だったらあんた、仲良くしてあげなよ。エイズはふつうにしてれば移らないから」
「うん、わかってるよ」
そして今日が終わる・・・。


  次の日、俺が学校に向かっていると
「お〜〜〜い!裕介〜〜〜」
後ろから聞き覚えのある叫び声が聞こえた。
そして俺に体当たりをしてきた、が俺は紙一重でかわした。
「おう!やるな、裕介!」

「何回もやられてりゃ、かわせるようになるよ」
太助は俺を見つけるといつも体当たりをしてくる。いったい何のつもりなんだか・・・。
「それより裕介、太助のこと聞いたか?」
「おお、エイズのことだろ?」

「さすが、お前の母親は情報通だね〜。ま、俺の母さんもだけど」
「はは、たしかに。でもふつうにしてれば移らないらしいから大丈夫だよ」
「そうだな。隆史は友達だからな。そんなことで離れはしないよ」
そして俺らは学校へと向かう。


  教室にはいるといつもとは違う光景が目に入った。
そこではなんと隆史がほうきではたかれていた。
「こっちに来るんじゃねえ!エイズやろう!移るじゃねえか!」
うちのクラスの男子が叫んでいた。
周りの奴らもいやな目で隆史を見ていた。
「おい!やめろよお前ら!!」

俺はその男子からほうきを取り上げた。
「なにすんだ!こいつはエイズなんだぞ!移っちまうじゃねえか!」

「いいからやめろ!!」
俺が怒鳴るとその男子は渋々席に着く。
「おい、隆史。大丈夫か?」

「うん・・・」
そういうと隆史はゆっくりと席に着く。
そして先生が入ってきた。
「よ〜〜し。始めるぞ〜。ん?吉田、どうしたんだほうきなんかもって」

「え?あ、いや別に・・・」
「?、いいからさっさと席に着け」
「あ、はい」
そしていつものように学校が始まる。
しかし隆史のいつもの元気はなかった。


  そして放課後。
みんなはゾロゾロと教室からでて行く。

俺は隆史に話しかけた。
「なぁ、隆史。きょう元気なかったな。朝のことでか?」

しかし隆史は何も答えなかった。
「あんな事言われて悔しくないのか?」

すると隆史がゆっくりと話し始めた。
「僕がエイズだって事知ってるんでしょ」

「え?ああ、母さんから聞いた」
「僕と一緒にいると移ると思ってるんでしょ」
隆史の口調が少し強くなった。
「そんなこと、思ってない」

「嘘だ!!みんなみんな、僕のことを嫌ってるんだ!!だから僕はもう誰とも関わらない!」
いきなり隆史は叫んだ。
「な!?そんなわけないだろう!!俺は嫌ってなんかない!」
「もうほっといてくれよ!!僕はもういやなんだ!!」
隆史は少し泣いているようだった。
「・・・わかったよ。ならもうお前とは友達じゃねえ。・・・強いやつだと思ってたんだがな・・・」

隆史は少し顔を上げた。だが今の俺にはどんな表情だったかはわからなかった。
俺は教室を出ていった。
そして俺は胸くその悪いまま家へと帰った。
しかし俺は冷静になって後悔しはじめた。
・・・何であんな事いっちまったんだ・・・

・・・あいつとはいつまでも仲良くするつもりだった・・・
・・・なんで、おれは・・・


  気づくと俺はベットの上で寝ていた。
時計を見ると針は3時を指していた。
・・・俺は寝てたのか・・・

俺は起きあがりカーテンを開ける。
外は暗かった。俺は自分の心の中を見ているような気がした。
しばらく眺めていると、空が少しずつ明るくなってきた。
・・・そうだ、今日隆史に謝ろう・・・
そして俺はベットに潜り込み再び眠りについた。


  翌朝、俺はいつもより早めに学校に着いた。
教室には誰もいなかった。

俺は自分の席に着くと隣の隆史の席を眺めていた。
しばらくするとクラスメイトが一人二人と入ってきた。
そして始業のチャイムが鳴る時間が近づいてくる。
しかし隆史は姿を現さなかった。

「なあ裕介、隆史来てないな」
前にいる太助が振り向いて話しかけてきた。
「ああ、そうだな・・・」

そしてチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
「みんな、おはよう。え〜、今日は上野は休みだそうだ。最近は風邪が流行ってるからな。みんなも気をつけろよ」
そして授業が始まる。
・・・隆史は休みか・・・謝るのは明日にしよう・・・

 
しかし、次の日も、また次の日も隆史は姿を現さなかった。
そして一週間がたつ。
今日の授業も終わり、みんなは帰っていく。
「今日もこなかったな、隆史」
太助は隆史の席の見ながら言う。
「じゃあ帰るか」
・・・隆史、本当にどうしたんだろう・・・そうだ、あいつの家に行ってみよう・・・

「なぁ太助。先に帰っててくれないか?俺ちょっと用事があるからさ」
「ん?わかった。じゃな」
そういうと太助は早々と教室を出ていった。
・・・さて、行くか・・・

そして俺は隆史の家に向かった。


  俺は隆史の家の前に立っていた。
そしてゆっくりとインターフォンを押す。
しかし押しても誰もでてこなかった。
何度か押したがやはりでてくる気配はなかった。
・・・どうしたんだ?・・・
すると隣の家のおばさんが話しかけてきた。
「あら?裕介君どうしたの?」

「あ、隆史いないんです」
俺がそういうとおばさんは少し顔を暗くした。
「・・・隆史君ね、先週エイズが発病して入院してるのよ」

「え!?だって学校の先生はそんなこと言ってなかった・・・」
「あの子がみんなには言わないでくれってお願いしたらしいわよ」
「おばさん!隆史はどこの病院にいるの!?」
「え・・・中央病院だけど・・・」
「わかった!ありがとう!」
そういうと俺は走り出した。病院に向かって、ひたすら・・・。


  今日の空は曇っていた。あたりは少し薄暗かった。
しかしそんなことにはお構いなしに俺は走り続けた。
そして病院に着く。
俺は受付に向かって走る。
「すいません!上野隆史君の病室は!?」

「え?あ・・・ちょっとまっててください・・・え〜と302号室ですね」
それを聞くと俺はまた走り出した。
そして302号室の扉を開ける。
そこには暗い顔をした隆史の家族がいた。
「・・・裕介君?」
隆史の母親は少し驚いたようにこっちを見ていた。

「隆史君は?」
俺は荒れた呼吸を整えながら訪ねた。

「・・・こっちに来て」
隆史の母親は手招きをする。
俺はゆっくりとそこへ向かう。
そこにはベットの上に力無く寝ている隆史の姿があった。
「隆史・・・裕介君が来てくれたわよ」

すると隆史が目を開けた。
「裕介君?何でここに・・・?」

隆史の声はとても弱々しかった。
「隆史、大丈夫か?」

「裕介君・・・ごめんね・・・。この前あんなこと言っちゃって・・・」
「いや・・あれは俺も悪かったよ。ごめんな・・・」
すると隆史は笑顔をつくった。
「これで仲直りだね・・・」
と、手を出して言う。

「ああ、仲直りだ」 俺はその手を握る。
そして隆史は窓の方に目を向ける。
「あ・・・・。雪だ・・・」
外ではちらほらと白い雪が舞っていた。
「よかった・・・。最後に雪が見れて・・・。裕介君・・・じゃあね・・・元気で・・・」

そういうと隆史はゆっくりと目をつぶる。
「・・・隆史・・・?おい、隆史・・・」

俺は隆史を少し揺さぶるが返事はなかった。
「おい!隆史!!隆史ーーーー!!」
・・・それから隆史は目を開けることがなかった。
しかし、隆史は安らいだ顔で眠っていた。


    ・・・そうか、あれから10年もたつのか・・・
俺は白い部屋のベットの上で思い出していた。
周りには俺の家族が心配そうに見つめている。
・・・まさか俺もエイズだったとはな・・・

俺が8歳の時に事故で入院した事があった。
そのときに使われた輸血用の血液にエイズウイルスが入っていたそうだ。
全く人生何が起こるかわかったものではない。
俺は外を見た。外ではたくさんの雪が降っている。

・・・じゃあ俺はあいつの所に行くとするか・・・
そして俺は目を閉じる。
あたりは真っ暗で音も聞こえない。
しかししばらくすると目の前に白いものがゆっくりと落ちてきた。
・・・雪だ・・・あいつが来たんだな・・・

そしてあたりは明るくなる。
俺の前にはあいつがいた。
「やあ。裕介君」

あいつがあのころの姿で話しかけてきた。
そして俺もあのころの姿になる。
「遅れちまったな、じゃあロボトルの練習、始めようか」

  そして二人はいつまでも同じ時間を過ごし続ける。
いつまでも・・・変わることなく・・・

 

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