赤魔ちゃんと一緒に

これは92年夏に発行した同人誌に描いた
漫画を小説化した物です。(一応大好評だったので)
初版400部、以後5版まで再版し、
印刷代に苦労したのは懐かしい思い出です。
舞台はファイナル・ファンタジー2の世界。
少しでも楽しんで頂ければわたしはとても幸せです。



ミシディアの村には、両親のない小さな二人の魔法使いが長老の家に養われておりました。

白魔法使いのマリカは「白魔ちゃん」黒魔法使いのシアナは「黒魔ちゃん」とみんなから呼ばれておりました。
二人は魔法らしい魔法は何も使えないへっぽこでしたが、心だけは誰よりも純粋でした。

さて、今日は朝から雨です。お屋敷の人たちはどこかへ行ってしまったらしく、家も村もしーんと静まり返っていました 。
「みんなどこにいっちゃったのかな」と白魔ちゃんが言いました。
でも黒魔ちゃんはそれには返答をせず、ぼんやりと一年前の 事を思い出していました。
そして、「雨見てると赤魔ちゃんの事思い出しちゃうね・・」と言いました。
その言葉を聞いて白魔ちゃんもうなずきました。「うん、そうね・・、こんな雨の日だったね・・」と。

それは丁度一年前の事です。
今よりもさらに幼かった二人は、長老のお使いでほんの隣の森まで行くはずが、何故か遠い海の近くへと来てしまっていました。
「わたしおなかが空いてもう動けないわ」と白魔ちゃんが泣きそうになりながら言いました。
「でも歩かないと魔物のご飯にされちゃうわよ」と涙をこらえて黒魔ちゃんが言いました。

するとその時です、「おなかが空いたならこのスープを飲むといいわ。魔物が出たらわたしが退治してあげるから。」と優しい声が響いて来たのです。
ふたりが声の方に顔を向けると、大きな木の下に二人より3才くらい年上の可愛い赤魔導士が微笑んでいました。
「わたしはカルミンて言うのよ、ここで人と待ち合わせをしてるの、ほら丁度スープを作ったところよ。」

「あ、ありがとう!!」と二人はおなかの虫を鳴らしながら 赤魔導士のそばへ駆け寄り、早速スープをいただきました。そして幸せ一杯の笑顔でべらべらと話し始めました。
「私たちこんなところまで来てしまって心細くて泣きそうだったのー、だから赤魔ちゃんに会えて良かった。ねぇ、赤魔ちゃんは一人でこんな所にいて恐くないのー?」
いつの間にか赤魔ちゃんと呼ばれるようになったカルミンは 笑いながら言いました。
「ええ、わたしは白魔法も黒魔法も使えるし・・」
「ええっ、白魔法と黒魔法??」
「それに剣も使えるしね。」
赤魔ちゃんの言葉に二人はびっくりしました。へっぽこな二人から見たら、赤魔ちゃんはまるでスーパースターのようだったのです。
「すごーい、サインもらっといた方がいいかなー」と二人は 顔を寄せて囁きました。

でも、二人の真剣な顔を見て赤魔ちゃんはクスクス笑いながら言いました。
「わたしなんか全然ダメよー。ミンウ様に比べたら・・。」 「ミンウ様?」
「そうよ、ミンウ様はそれは偉大な魔導士なのよ。わたしは ミンウ様が大好きでいつもくっついて歩いてたの・・。ミンウ様がいればわたしはいつも幸せで・・・。でもね、ある日 戦争が起こってしまったの・・・。ミンウ様は世界を救う手助けをする為にカシュオーン城に行ってしまって・・。」
赤魔ちゃんは一瞬言葉につまりましたが、「でもね、その戦争もやっと終わったでしょう? だからわたしここで待ってるの!もうすぐ ミンウ様に会えるのよ!」と嬉しそうに言いました。

ふたりは、優しく可愛いその笑顔と赤魔ちゃんの話に感動ました。
「赤魔ちゃんはすごいのねー。でもこんな所で寂しくなるこ とはないの・・?誰かと遊びたくなることはないの・・?」 「うん・・。それは時々ね・・でも、ミンウ様が帰って来る までだもの・・。もうすぐだもの・・、ねぇ、ミンウ様が帰って来たら白魔ちゃん黒魔ちゃん一緒に遊んでくれる・・?」
「うん、もちろんよ。その代わりわたしたちにもミンウ様を紹介してね。」
「ええ、約束よ。」と赤魔ちゃんは笑顔で言いました。
「約束よー。」二人も笑顔を全開にして言いました。
そして二人は心もおなかもいっぱいになり、手振りながら元気に元来た道を帰って行きました。

そして一時間も過ぎたころには、二人はお使い先の森へ元気に到着していました。その上長老からの手紙を渡した主へ怒涛の喋りを展開していました。
「あのね、わたしたち海のそばまで行っちゃったの! とっても恐かったのよ! でも、 大きな木があって・・ ねぇおじさん赤魔ちゃんて知ってる?」
主は小さな機関銃たちに閉口しつつ言いました。

「ああ、わかったわかったからゆっくり喋りなさい。・・・ふぅ・・。それにしても海のそばとはえらく遠くまで行ったものだ・・。あの辺りは魔物は出るわ幽霊は出るわ、恐ろしい所だというのに・・・ま、なんにしろ無事で良かった。お前たちは本当にツイてるよ。・・きっと、今は亡き大魔導士ミンウ様の魂が守ってくだすったに違いない・・。」
「えっ・・・?」おじさんの言葉に、二人は固まりました・・・。
「おじちゃん・・ミンウ様を知ってるの・・?」
「勿論だとも・・・、本当に偉大なお方でねぇ、先の戦争では、世界を守る為に自分の命さえ犠牲にしたのだよ・・。」 ・・・・白魔ちゃんと黒魔ちゃんは何も言えませんでした。
おじさんは続けて言いました。「ああ、本当に惜しい人を亡くしたよ・・。そういえば・・、あの赤魔導士はどうしたかね・・いつもくっついてた・・可愛い子だった・・熱病で死んだって噂もあったけど・・元気にしてればいいけどねぇ・・。」
外には・・外には雨が降り出していました・・。

小さな二人の魔法使いは泣いていました・・。泣きながら走っていました。どうしても、赤魔ちゃんがいたあの大きな木のところへ行かずにはいられなかったのです・・。

そして・・ふたりがあの木のところに行くと、赤魔ちゃんまだ前と同じように、ミンウ様の帰りを待って道の向こうを見つめていました。
「赤魔ちゃん!」二人は大きな声で叫びました。
赤魔ちゃんはゆっくり振り向き、二人の涙で濡れた瞳を見て少し悲しそうに言いました「雨が降ってるのに・・こんな所に来ちゃ駄目じゃない・・・。」

二人は涙で何も見えませんでしたが・・苦しくてうまく声が 出ませんでしたが・・やっとのことで一言だけ言いました。 「赤魔ちゃん・・・ミンウ様・・ミンウ様はね・・」
赤魔ちゃんは黙っていました。
「ミンウ様はきっと帰って来るわ・・。きっと赤魔ちゃんの ところに・・」と・・。
「黒魔ちゃん・・」赤魔ちゃんはびっくりして言いました。
「そうよ・・、赤魔ちゃんがこんなに待ってるんだもの・・ きっと帰って来るわ・・。」泣きながら白魔ちゃんが続けました・・。

そして、それを聞いた瞬間、赤魔ちゃんの目から涙がぽろぽろと流れ落ちました・・。二人は・・赤魔ちゃんの笑顔が初めて崩れたのを見ました。
「ありがとう・・あなたたちがそう言ってくれたから・・わたし・・やっと・・天国に行く気になったわ・・。」
赤魔ちゃんは辛そうに泣いていました。
白魔ちゃんと黒魔ちゃんも泣いていました。

「だって・・だって・・みんな言うんだもの・・。ミンウ様 は死んだって・・。もう帰って来ないって・・。だから・・ だからわたし・・。」顔を覆って泣く赤魔ちゃんの姿は、その時少し薄くなりました。

そして・・、赤魔ちゃんは涙を拭い少しだけ笑って言ったのです・・。「でも、あなたたちに・・会えて良かった・・。良かった・・。」
その言葉を最後に、赤魔ちゃんの姿は雨の中に消えました・・・。
涙で目がかすんだ二人は、消えていく赤魔ちゃんにやっと一言だけ言いました・・。
「今度・・今度生まれたら一緒に遊ぼうね・・!!」
戦争の意味も・・人が死ぬ事の本当の意味もふたりにはまだ わかりませんでしたが・・赤魔ちゃんが楽しい事だけで埋められなければならない子供の時を、もう過ごせないことだけは痛いほど心に響いて来たので・・。

そして・・・そして、一年後の今も、二人はあの優しい笑顔をした赤魔導士の事を忘れることはできず、特にこうして雨の降る日には小さな胸を痛めていたのです・・。

さて、静かな雨の降る中、二人はいつの間にか赤魔ちゃんの夢を見ながらカウチで寝入ってしまっていました。

すると、静かな家の中に急に数人の人が賑やかに入って来る声が響いて来ました。
いつの間にか帰って来ていた長老様の所に来た人達です。
人の声に二人はやっと眠りから覚めました。
そして、楽しそうな人のざわめきにつられて二人が長老の部屋を覗きに行くと、村のおばちゃんの一人が二人を見て嬉しそうに言いました。
「白魔、黒魔、いいところに来たわ!今朝マリアのところで 赤ちゃんが生まれたのよ。この子はお前たちの友達になるのよ!さぁ、挨拶しなさいな。名前はカルミンて言うのよ!」
その言葉を聞いて二人は顔を見合わせました。そして、あわてて、生まれたばかりのその赤ちゃんを見におばちゃんに駆け寄りました。」

赤ちゃんは・・にっこり笑っているように見えました・・。 まるで赤魔ちゃんのように・・。

『今度・・今度生まれたら一緒に遊ぼうね・・!!』

終り。

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