戦闘に関して言えば、絶対的といっていい程の自信があった。

 力であれば、弟である張飛に劣るであろう。けれど経験に基づく判断、そし
て武芸に関しては自信があったのだ。

 そしてその自信故、大事な人を守っていけるのだとずっと信じていた。





「また行く気ですか。」

 関羽は半ば呆れ、外に出かける準備をしている劉備を見た。そんな関羽の横
では張飛が不満を顕わにしてふてくされている。

 二人とも、面白くないのだ。
 
 劉備は自分たちが守り、自分たちがもり立てていくのだとずっと思っていた
から。そして劉備も二人を特に信頼し、常に側にいたから。

 だからこそ、劉備が別の人間にご執心というのが面白くない。

「そう嫌な顔をするな。」

 張飛の頭を軽く叩くと、劉備は困ったように苦笑いをした。

「我が軍には軍師が必要だ。それはお前達も分かっているだろう。」

「…そりゃ、一応は…。俺は個人戦なら強いけど、全体の動きに関しちゃから
っきしだし…。」

「そうだな、お前は強い。けれどその力が軍全体に活きてこないのは私の力が
足りないせいなのだ。」

 ハッとしたように、張飛が顔を上げる。

「ここの所もずっと負け続きで辛かったろう。」

「…そんな!俺なんかより大兄のが……。」

 今にも泣き出しそうな貌をしている張飛を、劉備がそっと抱きしめる。

「…もう負けるわけにはいかない。だからこそ、軍師が必要なのだ。」

 きっぱりと言い切る劉備の目には意志の強さが宿っている。張飛が、そして
関羽が惹かれた目だ。男なら、この人の為に命を投げ出さずにはいられない様
な目。

 こんな時に見たくなかった。関羽は目の前で膝を折って抱き合う兄弟を見な
がら、一人そっと目を閉じた。






 劉備は結局、三度にわたる訪問を経て孔明という軍師を手に入れた。
 
 関羽は劉備を三度も尋ねさせた若造である孔明の事が気に入らなかったし、
その若造をひどく気に入ってる劉備も気に入らなかった。

 自分はもう、用無しなのでは。

 周囲の人間全てを遠ざけ、夜通し孔明と話し込む劉備を見ているとそんな事
まで考えてしまう。

 これはつまらない嫉妬だ。それは十分に承知している。

(…私は小さな子供の様ではないか。)

 関羽は一人、自嘲する。
 
 けれど子供の様に叫き散らす事も出来ず、ただ鬱々と沈む事しかできない。

「…兄上……。」

 私は、不安なのです。漸く思いを声に出した瞬間だった。

「どうした関羽。」

 後ろから声がした。振り返れば上機嫌の劉備が立っている。

「…兄上…、この様な時間にどちらにいらしたのです。」

 聞かなくとも、答えは分かっている。けれど聞かずにはいられなかった。

「ああ、孔明の所だ。彼は実に素晴らしい知識の持ち主だな。」

 予想通りの答えに、関羽は唇をかみしめた。

「私では、貴方の水にはなれませんか?」

 劉備は孔明を水と例えた。「彼は私にとって水である。彼が来てからの私は、
水を得た魚の様だ」と。

 不安げな顔を、していたかもしれない。劉備は驚いたように目を見開き、そ
れから直ぐに微笑んで見せた。

「水だと?馬鹿を言うな。…私は、お前という空気がなければ生きていけない
よ。」



   うっかり電車の中で「関羽聖誕祭」というポスター見つけたのでこんなん書 いてみる。…これで十分、関羽は幸せだろう。あー、甘かった。  しかしここ数ヶ月三国志を読んでいないので色々忘れてる。…そのうち、ま た読もう。

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