「あんたのご主人様って、どんなヤツなんだ?」
火の番をしながらレブロブスは何気なくアベルに問いかけた。アベルから返
事はない。
しかしアベルが喋らないのはいつもの事なのでレブロブスは気に留めなかっ
た。別に返事が返ってくるのを期待して話しかけたわけじゃない。ただ、暇だ
ったのだ。
火に新しい薪をくべながらちらりとアベルの方を見る。アベルは相変わらず
の無表情で剣を磨いていた。
彼が何のためにご主人を救い出そうとしているのか、正直な所よくわからな
い。アベルのご主人はアベルを愛し、その為に総本山へと連れて行かれた。だ
がアベルがご主人を愛しているのかという点は甚だ謎だった。
「愛を語る少年」
アベルの事をそう称するヤツもいたが、レブロブスはアベルが愛を語ってい
るのを聞いたことがない。彼は常に無表情で、無口で、何を考えているのかわ
からない様な男なのだ。
それが悪いとは言わない。寧ろこういった状況において、アベルの無表情な
顔は頼りがいがあるように思えた。
「…極悪な、面してんのかよ…。」
愛を語っているのは、アベルではなくその主人である男の方だ。このご時世
愛を語るなんて酔狂な真似をするやつが、一体どんな顔をしているのか。レブ
ロブスは気になって仕方なかった。
アベルの、ご主人。まだ話にしか聞いたことのない男。あの看守の弟だとい
うのなら、大層な美形に違いない。
「なぁ、アベル…。」
アベルの暗い色の瞳がレブロブスを捕らえる。二人の間を一陣の風が通り抜
けた。
「お前は、ご主人様を愛してるのか…?」
やっとの思いで吐き出した問いは、風の音にかき消されてしまった。
不思議そうな顔でレブロブスを見つめるアベル。レブロブスはゆっくり首を
横に振った。
愛とは何なのだろう。
自由とは
平等とは
耳に心地よいその言葉。けれどその言葉が示す真実は、まだ知らない。
「ねぇ〜〜、カインく〜〜〜ん。」
ミッシェルの甘ったるい声が耳に飛び込んできた。見ればミッシェルはアベ
ルに思い切り抱きついている。アベルもアベルで抵抗するでもなく、ミッシェ
ルのなすがままに委せていた。
「だ・か・らっ。そいつはカインじゃないって言ってるだろが…。」
「あたしがカイン君って言ったらカイン君なのぉ〜〜〜。ねぇ、カイン君。」
嬉しそうにアベルに頬ずりするミッシェル。彼女は何を想い、アベルをカイ
ンと呼ぶのだろうか。アベルがカインである可能性も捨てきれないが、だとし
たらアベルのご主人である男は嘘をついていたという事になる。しかし、一体
何のためにその様な嘘をつくのだろう。
アベルは喋らない。だから彼が考えている事を知るのは困難だ。
一癖も二癖もありそうな奴らにばかり執着されても、眉一つ動かさないこの
男は何を想ってこの旅を続けているのだろう。
ふと、アベルと目が合った。
その目は何処か楽しげで、レブロブスは狼狽えてしまった。
…このゲーム、笑うべきか突っ込むべきか泣くべきか。色々判断に困ります。
楽しいんですけどね…。戦闘下手な私にはちと辛い。
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