迷いの城
戦いも一息つき、かつてネクロードが使っていた城を手直しして本拠地とし
て使うことになった。本拠地があるのはいい。それは安らぎの場であるから。
だがしかし…。
「ここ、何処なんだよ…。」
ナナミを連れたまま、ナリヒラは途方に暮れていた。
ちょっくらメンバー探しに外に行こうかと思ったのだが、何処に出口がある
のか分からなかったからである。出口を教えろという事で隣のシュウの部屋に
も言ってみたが、シュウも城の内部をきちんと把握していないのか城の間取り
を教えてくれなかった。
「元気出してよナリヒラ〜〜〜。」
背後からナリヒラに抱きつきながら、不機嫌なナリヒラをナナミが宥める。
だが、ナリヒラはといえば不機嫌なままだ。
自分が城主であるというのに、見取り図の一つも渡されないとはどういう事
なのか。もしやシュウは、自分を単なる飾りとして扱うつもりなのではという
疑念すら湧いてくる。
「だぁ〜〜〜!!もう、壁壊しちゃおうか?」
にっこりとナナミに微笑み欠けながら、トンファーを構える。だが、その目
は笑ってない。その事に気づき、ナナミは冷や汗を流した。
「さすがに、直したばかりのお城を壊しちゃうのは駄目だと思うんだけど…。」
そんな事をした日には、あの軍師が何を言うか。別にシュウが何を言った所
で怖くはないが、触らぬ神に祟りなしとでもいおうか、出来るだけシュウに近
づきたくないことに変わりはなかった。
ナリヒラからトンファーを奪い取り、ナナミは持ち歩いていた巾着袋に詰め
込んだ。こうしておけば、ナリヒラも装備できまい。
「ほら、お姉ちゃんとあっち行こう?」
ギュッとナリヒラの手を掴むと、ナナミは光が射している方向に向かって走
りだした。引っ張られるようにしてナリヒラもそれに倣う。
「そんな事言ってナナミ、更に迷うんじゃ…。」
嫌そうな顔をしたナリヒラにナナミは一発蹴りを入れると両手をブンブン振
り回した。その手には当然ヌンチャクが握られている。
「ひどぉ〜〜〜〜〜い、ナリヒラってば。お姉ちゃんの言うことが聞けない
の?!」
「わっ、ちょっと待ってよ!」
トンファーを奪われてしまった今、ナリヒラはヌンチャクを防ぐ術がない。
慌てて背後に下がり、ナナミの攻撃を避ける。だがナナミは顔を真っ赤にして
怒りながら、しつこくナリヒラを追いかけてくる。
「こらぁ〜〜〜〜〜、待ちなさぁ〜〜〜〜い!!」
待てといわれて、素直に待てる訳がない。言うとおりにしたら、殴られるの
が分かっているのだ。訝しげな顔をしている見張りの兵達の間を通り抜けなが
らナリヒラは走り続けた。
階段を上ったり下りたり、長い廊下を走りながらナリヒラはこの城に無駄が
多いなと思った。多くの人間がくつろぐためにはそれなりの空間が必要だし、
いざというときの避難場所という意味でも広い空間は必要だ。
けれど、あまり広すぎると閑散としたという雰囲気が拭えない。手入れも杜
撰になるし、そういった意味では広すぎるというのも問題である。
(早いとこ、人集めないとなぁ…。)
人を集めれば、城も賑わい始めるだろう。そうなれば兵士達の士気も上がる。
頭の中で今まで会った仲間になってくれるかもしれない人のリストを広げなが
ら、ナリヒラはナナミから逃げ続けた。
気がつけば、それなりに人が集まった場所に来ていた。階下を見れば、そこ
にはつい先日仲間になったばかりのルックという少年が立っている。
「一体、君は何をやってるんだい?」
冷ややかな口調で言い放つと、ルックはナリヒラを睨み付けた。
ナリヒラはポリポリと頬を掻きながらルックに近づくと、決まり悪そうに口
を開いた。
「道に、迷っちゃって…。」
自分の城で迷子になる城主というのも珍しい。前に仕えていた事のある主は、
決してそんな事はなかった。そりゃ、一歩城を出たが最後よく迷ってはいた
が…。
「出口はあっちだよ。」
呆れながら告げ、ルックは溜息をついた。こんなのが城主で大丈夫なのかと
いう不安が頭をもたげる。だが顔には出さず、さっさとこの場を離れるようナ
リヒラを促した。
「君の姉さんが怖ろしい形相で直ぐそこまで迫ってきているよ。」
上の階でナリヒラを探し回っているナナミを指さすと、ナリヒラは慌てて逃
げ出した。その後をナナミが追う。まったく、姉弟仲のいい事だ。
「…彼は、どうしてるだろうね…。」
目を瞑るとまだ網膜に、傍若無人な英雄の姿が甦る。親友を失い、両親を失
い、支えを失い、それでも毅然と立っていた英雄の姿が。
確信が、ある。ナリヒラもかつての主と、同じ道を辿るであろうという確信
が。既にナリヒラは、ジョウイという幼なじみを予期せぬ形で失っている。恐
らく次は、ナリヒラの姉、ナナミだろう。
運命の輪は回り始めている。もう何者にも、止めることは出来ない。
「僕らの力は本当に微々たるものでしかないんですね、レックナート様…。」
ルックは呟き、名前の刻まれた石版をそっと撫でた。
ナナミがすごく可愛いです。主人公が黒いから余計に可愛く思える。
でも城、本気で迷います。おかげでどれだけ時間を無駄にしたか…。クライ
ブがぁ!と叫びながら城内疾走しました。
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