朋友


「…殺したんです。」

 そんな必要は無かったのにと少年が呻く。

「僕も、殺したよ。」

 必要があったからと、もう一人の少年が応える。



 虫が鳴く。命の限り、力を込めて。

 風が吹く。柵全てを吹き飛ばす様に。




「辛くは、なかったんですか?」

 不思議そうな少年の声。

「辛くない筈はないだろう。」

 応える声は落ち着いている。




 友を殺した少年と、父を殺したもう一人の少年。

 二人の立場は似ているようで全く違う。





 少年が、しゃくりあげる。それは友を殺してしまった罪悪感からくるものか、
友の喪失故の悲しみからか、一体どちらからくるものなのだろう。

 もう一人の少年が空を仰ぐ。曇った空には、星一つ見えない。

 そして、呟く。

「彼は、消えなければならなかったよ。」

「何故ですか?」

「彼は、人民の言うところの敵だから。」

 敵を消し去りたいと思うのが人情だから。





 
 少年は思い出す。身長のわりに、やけに軽かった友の事を。青白く、窶れて
いた友の顔を。

 そんな友が、少年に勝てる筈が無かったのだ。

「…彼は、死ぬつもりだったんでしょうか。」

 少年が呟く。

「どうだろうね。僕は彼じゃない。」

 もう一人の少年が淡々と応える。





 朝日は漸く昇ろうとしていた。



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