続・続・変友
茜から十円を恵んでもらった。十円でも金は金だから速水は有り難く受け取
っておく事にし、ポケットに突っ込む。何せ給料が一週間に7500円。十円
でも結構貴重だ。
しかしどうせ恵んでくれるなら百円とか二百円とか、もうちょっと大金が欲
しかったと思う。茜は金持ちみたいだから、それ位くれてもいい筈だ。速水が
そんな事を考えていると、茜が嫌味ったらしく付け足した。
「恵んで欲しかったらまた来いよ。」
まぁ、速水としては金は欲しい。この際茜の嫌みったらしさには目を瞑り、
また金を恵んで貰おうと考えその日は分かれる事にした。
けれど、けれどだ。
その日以降幾ら茜に話しかけても、茜は一銭も恵んではくれないではないか。
「あぁ〜〜〜〜!!恵んでくれるって云ったじゃないか!」
いっそ茜に詰め寄りたいが、そんな事をしては「みんなのアイドル♪速水厚
志」の名が廃る。
仕方ナシに低姿勢で茜に話しかける日々が続いた。
そんな速水を周囲の人間は訝しげな目で見る。
「なぁ、速水。何もそんなに無理して茜に話しかけなくてもいいじゃないか。
お前は優しいから、茜をほっとけないのかもしれないけどさ…。」
とは滝川の弁。
「全く、お前は相変わらず物好きだ。そんな所も…いや、何でもない。」
とは恋人である舞の弁。
大体皆の云いたいことを纏めると、「茜に入れ込むのはいいが無理はするな
よ」とでもいった所だろうか。
しかし皆、勘違いをしている。速水は優しさから茜に話しかけているわけで
はない。ただ単に金が欲しいだけなのだ。
そんなこんなで、一週間ほど経過した。
「これを、芝村に渡してくれ」
そう言って茜が速水に差し出したのは、一通の封筒だった。
これは何だ、という様な目で速水が茜を見ると、茜が彼独特の嫌みったらし
い笑いで返した。
「ああ、これかい?これはラブレターだよ。これで芝村を籠絡させるのさ。」
一体、こいつは何て馬鹿な事を云うのだろうと速水は思った。何せ、自分で
云うのもなんだが舞は速水にぞっこんだ。(…古い云い方)そんな舞が、幾ら
美少年とはいえ茜からのラブレター如きで陥落するとは思えなかった。
けれどそんな心情はおくびにも出さず、速水はキッパリと言った。
「僕にはそんな事出来ないよ。」
というか、したくない。速水が他人からのラブレターを舞に渡したらどうな
るのか、その結果を想像するのが恐ろしい。
何せ舞は速水より体力がある。速水が茜からのラブレターを渡したら、タコ
殴りにされるのがオチだろう。
けれどやっぱり、速水の考えている事は顔にでない。ぽやぁ〜としていると
一般的に云われる笑顔を顔に張り付けたままだ。…大体そうじゃなければ、こ
の小隊でやっていけない。
だから茜は、速水が悪事には荷担できないという正義感から茜の申し出を断
ったと判断した。
「そう!!出来ないと云うのだね、だったらもう二度と僕には話しかけないで
くれっ。」
そう云って立ち去るのかと思えば、茜はまだその場に留まっている。話しか
けるなとは云ったものの、まだ話があるのかと思って話しかけてみたが無視さ
れてしまった。何度も話しかけてみたが無駄なことで、茜はなんの反応も返さ
なかった。
(…折角、結構仲良くなれたのにな…。)
金欲しさにつきまとっていたとはいえ、少々残念な気がするが仕方がない。
速水にとって大事なのは舞だから。
一向にその場を動こうとしない茜をそのままに、速水は帰宅することにした。
そして次の日。
「やぁ、相変わらず今日も馬鹿面だね。」
話しかけるなと云った筈の茜から話しかけて来るではないか。
「あ、茜…。」
驚きで、思わず声が裏返ってしまう。
「おい、顔だけじゃなく声まで間抜けなんだな。取り敢えず、教室へ行くだろ
う。」
茜は速水の腕を掴むと、そのまま校舎の方へ歩き出した。
こんな速水、嫌だ…と思いながら書きました。でもプレイヤー(=海田)の
心情を反映させると、こうなります。ええ、金欲しさに茜にまとわりついてみ
ましたとも!(涙)
登場人物のセリフは覚えていなかったので適当です…。
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