愛別離苦



「おいっ、またなのか?…俺はもう付き合わないぜ。」

 嫌そうに眉を寄せ、次元はどっかりとソファに座り込んだ。

「おいおい、そんな連れないこと言うなよ。俺とお前の仲じゃない。」

 次元から奪った煙草を吹かしながらルパンは苦笑してる。ルパンがこんな顔
をしている時は要注意だ。

「どうせまたあの女に裏切られるのがオチだ。そんな馬鹿馬鹿しい事やってら
れるか。」

 ふいとそっぽを向き煙草をくわえ、火を着ける。大きく息を吸い込み、そし
て吐き出した。

「…一体、何度あの女に裏切られたと思ってる。いい加減、あの女には見切り
をつけろ。」

 そう、あの女は何度となくルパンを裏切ってきた。ルパンがそれを笑って許
してくれる事を、経験と、そして本能から知っているのだ。だからあの女は安
心してルパンを裏切る。「ごめんね、ルパン」という甘い言葉と共に。

 次元にはそれが許せない。裏切る不二子も、それを許すルパンも。

「子猫ちゃんの可愛い悪戯じゃないの。そんなに目くじら立てるもんじゃない
でしょ。」

 ほら、今だってルパンは笑っている。女に裏切られるのなんて、大したこと
じゃないという様な顔をして。

 本当にそうか。裏切られるのは大したことじゃないのか。今までは何とか助
かってきた命だが、この次も助かるとは限らない。

 ルパンは気づかない。気づいてくれない。ルパンの身を案じる次元の事を。
第一彼の事だ、気づいていたとしても女を甘やかすことを止めはしないだろう。

「…勝手に、しろ…。」

 何度繰り返したかもしれない、決別の言葉。ルパンは笑って聞き流す。

「一緒、来るだろ?」

 するりと次元の横に腰を下ろし、悪戯っ子の様な目で次元を見つめてくる。
これだから、ルパンは厄介だ。

 ルパンが不二子を許す様に、次元はルパンを許す。そして不二子が知ってい
るように、ルパンもまた知っているのだ。

「行けばいいんだろ、行けば…。」

 グイとルパンの顔を引き離し、次元は深々と溜息をついた。

 あんな女に夢中なルパンの事なんて、放っておけばいいのだ。だけど次元に
はそれが出来ない。それが昔からの腐れ縁という理由から来るのか、はたまた
別の理由から来るのかは知らないけれど。

「同じ穴の狢、か。」

 不二子を許すルパンが許せないのは、結局の所自分自身を許せないからなの
かもしれない。そしてまた、ルパン自身を。

 不二子はルパンだ。ルパンは次元だ。そして成り立つ、奇妙な関係。

 いつになったら終わりは来るのだろう。それとも始まりがなかった様な関係
だ。ずっとこのまま続くのだろうか。 

 横に座っているルパンを見る。次元の承諾に気をよくしたのか、嬉しそうな
顔で笑っている。こんな顔をしてくれるから、もしかしたらルパンには自分が
必要かも、なんて自惚れてしまうのだ。

「決行、いつなんだ。」

 腹を括ったからには、さっさと終わらせるに限る。訊ねるとルパンは煙草を
灰皿に押しつけた。

「じゃ、今から行きますか。」

 言いながら、立ち上がる。その手には既に仕事に必要な道具が二人分、既に
揃えられていた。

「…お前は…」

 なんだか嬉しいような、苦いような、不思議な感覚がこみ上げてくる。不二
子を甘やかすルパンも、もしかしたらこんな気持ちなのかも知れない。

 裏切られると、知っている。けれどいっそ無防備なまでの信頼は、裏切られ
ても尚余りある報酬なのかもしれない。



 





 裏切られると知っている。裏切る事は無いけれど。

 それでいいのだ。そう、達観さえできるのならば。

 


 今回は2/22の金曜ロードショー。…ルパン見るたび妄想かき立てられてど うするよ。(涙)ルパン、また再放送やってくれないかな。そうしたら見る のに。

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