白眼と碧眼
なんて綺麗な碧眼。
自分の色のない目とは大違い。
それが、彼に対する第一印象。
白眼、それは全てを見通す能力。
人には見られたくない所があるもので、それ故白眼に近寄る人間は少ない。
希に、ごく希に近づく人間もいるが、彼等にとって白眼とは単なる興味の
対象でしかない。
特に日向一族が里興しに大いに貢献した事を知らない子供達ほどそれは顕
著で、そんな子供達に混ざらなければならなかったヒナタは辛い幼少時代を
過ごした。
だから、そんな彼女にとって目は最大のコンプレックス。
前髪を伸ばして目を隠して、そしていつも俯いてすごしていた。
“大丈夫、あなた達を見ないから”
ヒナタの声にならないメッセージ。
だけどそれに気づいた人間はいない。
そして兄はそんなヒナタを叱咤する。
『何を恥じ入る事がある。白眼は素晴らしい能力じゃないか。』
そしてヒナタは、益々自分を恥じた。
“白眼を持つのは素晴らしい。だけどそれを使えない自分は?”
生まれながらにして白眼を使える者もいるというのに、アカデミーに入学
して大分たったヒナタは布きれ一枚透視することが出来ない。
そして空しく時ばかりが流れていく。
ヒナタは白眼が使えないまま。他の忍術や体術も人並みにしかできないヒ
ナタにとって、それは致命的な事だった。
(…どうしよう、また、お兄ちゃんに怒られる…)
そんな時だ。ヒナタが偶然覗いたクラスの中にナルトを見つけたのは。
うずまきナルト。その名前だけはヒナタも知っていた。
何しろ里一番の有名人で、里一番の嫌われ者。何故嫌われ者なのかという
理由も知らなかったが、彼を見た途端そんな事はどうでも良くなった。
自分とは違う、綺麗な碧い瞳。太陽の光の下で輝く黄金色の髪。惹き付け
られるその笑顔。
何もかも自分とは正反対で、目を奪われた。
“…だって、みんなに嫌われてるんでしょう…”
なのにどうして笑えるの。上を向いていられるの。自分ならとても耐えら
れない。
何度か声をかけてみようかとは思ったけれど、クラスの違うヒナタはなか
なかその機会に恵まれず。そして、折角の機会も己の内気さ故に無駄にして
しまったりで。
ヒナタはナルトに声をかけることが出来ないまま。
だけど自分の存在に気づいて欲しくて、ずっとナルトを見つめていた。
アカデミーからの帰り道、一人寂しく歩いていたら聞き覚えのあるちょっ
と甲高い声が聞こえた。
「よっ、ヒナタ!」
それは焦がれ続けた色彩を持つ人。自分の名前を知っていてくれた事が嬉
しくて、声をかけてくれた事が嬉しくて、ヒナタは思わず倒れそうになって
しまった。
「だ、大丈夫か?」
心配そうに覗き込んでくる碧い瞳が愛おしい。けれど自分の白眼を見られ
たくなくて、目を背けた。
「なぁ、ヒナタ。何で目ぇ背けるの?」
「だ、だって、私白眼だから…。」
「そんなん関係ないってば。」
「…で、でも…。」
「あぁ〜もぉ〜、いいってば!」
怒ってしまったのかとヒナタがオロオロしていると、ナルトは鞄の中から
鋏を取り出した。そして何をするのかと思ったら、ヒナタの伸びきった前髪
を切ってしまった。
ヒナタがビックリして何も云えないでいるのとは反対に、ナルトは一人悦
に入ってる。
「ヒナタ、前髪が長すぎるから目合わせらんないんだってば!」
違うの、そうじゃないのとヒナタは云いたかったが、嬉しそうなナルトに
何も云えず呆然としていた。別に前髪が惜しかったわけでもないけれど、こ
れからどうやって自分の白眼を隠したらいいのかと考えると泣きたくなる。
「折角面白い目なんだから、隠したら勿体ないってば。」
「…面白い…?」
「そう!だって、色のない目なんて俺初めて見たぞ?」
それはそうだ。白眼は日向一族の特徴で、それ以外には現れる事はない。
能力それ自体もそうだが、白い眼も日向一族のみのものなのだから。
しかし、ナルトが興味を持ってくれたという事だけで自分の白眼に感謝
したくなるなんて。ヒナタは自分の軽薄さに苦笑した。
「んじゃーな!」
そう云って去っていくナルトが見えなくなるまで手を振って、ヒナタは家
ではなく美容院へと足を向けた。
《おまけ》
ネジ「ヒナタ!どうしたんだその髪は…」
ヒナタ「…え…?」
ネジ「綺麗な髪だったのに!誰かに切られたんだな?そうだな??
畜生!可愛いヒナタをこんな目に…。」
ヒナタ「ち、違うのお兄ちゃん…。気分、転換に…。」
ネジ「そんな事はあるか!何をするにも先ず俺に相談したお前が。
そうだ!切ったヤツを庇ってるんだな。なんて優しいヒナタ!!
だけどこの際そんな優しさは無用だぞ。さあ、誰がやった。
お兄ちゃんに言ってご覧。」
ヒナタ「………」
ヒナタが好きなのでこんな事になってしまいました。
まぁ、ありがちのネタ。
そしてうちのネジ兄さんは呆れるほどのシスコンという設定。
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