家族計画
アカデミーは一応忍者予備軍の学校だ。
けれども普通の学校が存在しない木の葉の里では一般教養の科目もかなり
ある。だから当然保健体育や家庭科、なんてものも存在する。
「今日はこのプリントを埋めて貰う」
そう前置きをしてから、保健体育を担当している教師は『家族計画』と書
かれたプリントを配った。
それを見て大概の者は眉をひそめ、訝しげに先生の方を見遣る。
無理もない、その家族計画のプリントには結婚したいかとか、子供は欲し
いかとかそんな事ばかりで、凡そ子供とは縁がない事柄についての質問が幾
つも書かれていたのだ。
「ま、これも里の意向だ。ちゃんと書かないと点数に響くからな。」
何が楽しいのか、その教師はニヤニヤしながら止めをさした。
アカデミーに関係ないような保健体育も、一応正式な教科だ。単位を落と
すと色々と面倒な事が待っている。だから教師の『点数に響く』というお言
葉は、水戸黄門の印籠に等しい効果を持つ。
「んじゃ、始め。終わらなかったら休み時間も使って良いから、今日中に提
出するように。」
Q1 貴方は結婚したいですか。
(…………。)
ナルトは一問目を見ては頭を抱えていた。
まだ十になったばかりのナルトは結婚についてなんて考えたこともない。
好きな女の子はいるけれど、それだけだし、何せナルトは里の嫌われ者だ。
ナルト自身その事を自覚していたので、結婚したいとしても相手がいない。
…何も単なる学校のアンケート。そこまで真剣になる必要もないのだが、
ナルトは根が素直なので先生の言葉を真に受け真剣に悩んでいた。
一方サスケ。悩むナルトの背中を見ながら、一人ほくそ笑んでいた。
(結婚したいかだと?当然そうに決まってるじゃねーか。)
相手は勿論、うずまきナルト。サスケは其処まで書いて、ふとペンを止め
た。
(…一族復興の為には女と結婚しなきゃならねーじゃねーか……。)
そして、悩み始めた子供がまた一人。
そんな二人とは対照的に、空白を埋めていくのはキバだったりする。
犬塚家の跡取り息子であるキバは、幼い段階から計画的に人生設計を行っ
ていたのだ。この点サスケとは異なりリアリストであると云えるだろう。
(ま、こんなもんだろ。)
あっさりとアンケートを書き終えると、キバはペンを置いた。
(しっかし、暇だな。)
皆はまだプリントに書き込んでいるし、授業終了のチャイムも鳴りそうに
ない。ぼんやりと頬杖をつき、いっそ寝ていようかと思い始めた時だ。
不意に、シノの事が気に掛かった。
(…シノって、結婚願望あんのか?)
シノも油女一族の跡取りだから、当然結婚はするだろう。
けれど、どんな人間とどんな家庭を築きたいと思っているのかそれが気に
なる。そもそもシノが人間に興味を持つのか、それ自体が怪しいものだ。
(これで『白い家に犬一匹と奥さんで幸せ家族♪』、とか夢見てたら笑える
よなぁ。)
一人色々な想像を巡らせ、キバはシノのプリントを覗き込んだ。
Q5 どんな人と結婚したいですか
A.うずまきナルト
(…………。)
見間違いかと思い何度も目を擦ってみたけれど、どうも見間違いではない
らしい。いっそ冗談かと思ったが、シノは冗談を云うような男でもなければ
書くような男でもない。
ならば、つまりは。
(…本気って事か……?)
それもそれで恐い気がする。
木の葉の里は別に同性婚を禁じているわけではないが、キバは同性婚をし
ている夫婦を見たことがない。つまりこの里で同性婚に関した法律がないの
は、同性婚を行おうという夫婦がいなかった為ではなかろうか。
そもそも忍者というのは何時死ぬか解らない。結婚も愛情で行われるとい
うよりは、血を残すために行われる。
だから、同性ならばわざわざ結婚する必要もないのだ。
(…シノ…、親御さんが泣いてるぞ……。)
思わずシノの両親に同情したくなるキバだった。
悩みに悩んだ人間もいたが、何とか皆アンケートを書ききった。
提出されたそれを、教師は嬉しそうにチェックする。
そして、彼は固まった。
「…イルカ先生。」
「なんです?」
「油女シノって、一体どういう子供なんですか。」
後日シノは、担任と保健体育の教師により呼び出されたという。
サスケはというと、一族復興とナルトを天秤にかけ、迷いに迷った結果何
も書かなかったのでこの何を逃れたのだとか。
はい、どうしようもないです。
書いてる本人はそれなりに幸せではありましたが。
しかし、アカデミーってどういうシステムなのでしょう。気になることが
多いです。
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