達磨



「ヒナタの顔見るとさ、筆欲しくなるんだってば。」

 そう云って笑ったナルトを、キバは不思議そうな顔で見つめた。

「何?お前筆欲しかったのかよ。」

 云いながらもキバは、そうでない事を知っている。何せナルトは悪戯の落書
きをする為だけに、あらゆるサイズの筆を一揃い集めた事があったからだ。何
故その事をキバが知っているかと云えば、その筆集めの手助けをしたのがキバ
だからだ。

 いらないヤツから貰う、捨ててあるものを拾ってくる。拾ってくる事はナル
トにも出来るが、人から貰うという行動はナルトには出来なかったからキバが
引き受けたのだ。

 しかし、筆を集めてから数ヶ月しか経過していない。筆は一度集めたらなく
ならないし、多少質が低下していたところで気にするナルトではない。それに、
ヒナタの顔を見るとという辺りが気にかかる。

「違うってば。キバはならねぇの?」

 ナルトは首を傾げ、キバに同意を求めるように問いかけてくる。

 その状態は可愛い。思わず頷きたくなる程に可愛い。しかし、キバは頷くこ
とは出来なかった。

 別にキバはヒナタの顔を見たところで筆が欲しくなるわけではない。そこの
所はハッキリさせておきたかった。

 しかしナルトは尚も同意を求めてくる。

「えぇ〜〜…。なぁ、欲しくなるだろぉ?」

 いや、だから何でだ。キバにしてみればそっちの方が気になってならない。

「お前、筆なんてどうすんだよ。まだ沢山持ってただろう?」

「だからさ、そう云う意味じゃなくってさ。」

 ナルトは下に転がっていた木の枝を掴むと、そのまま下に図を書き始めた。

「ヒナタの目って白いじゃん。あれ見てると、こういうの思い出すんだってば。」

 ナルトが地面に描いたのは、歪んではいたがダルマだった。

 なんとなくナルトの云いたいことが分かって、嫌な予感がする。

「これってさ、願い事が叶うと色塗るんだってば。俺一度やってみたくってさ
ぁ〜〜。」

 つまり、ナルトはヒナタをダルマ代わりにしたかったわけだ。キバも少なか
らずそういう思いを抱いた事はあるが、当然実行したことはない。

「ナルト、ヒナタには絶対やるなよ。」

「え?何でだってばよ??」

「馬鹿か!目だぞ?墨なんか塗ったら大変な事になるじゃねーか。お前だって
目に墨入れられたら嫌だろ。」

 ナルトは眉を寄せて暫く考えていたが、漸く自分のしようとしていた事の重
大さに気づいたのか、真っ青になった。どうやら恐い想像になってしまったら
しい。目尻に涙が浮かんでいる。

「…ま、分かったならいいよ。」
 
 キバはナルトを宥めるように抱きしめると、背中を軽く叩いた。



*後日談*

「誰だ!俺をこんなにしたヤツはぁっ!!」

 いつもは物静か、と云って良いほどの優等生がこれ程取り乱すのも珍しい。
鬼のような剣幕でネジは教室で叫んでいた。

 怒り狂うネジを遠巻きにしながら、クラスメイトはふと違和感を感じた。

 ネジが怒鳴っているからではない。それとは別に、何かがある。

 その事に初めに気づいた人間が叫んだ。

「ネジの目!!」

 その一声で、皆の視線がネジの目に集中する。いつもは何の色もないネジの
目に、色がついている。

 そしてその事がネジの怒りの原因である事をクラスメイトは察した。先ほど
の授業、ネジは珍しく熟睡していたのだ。そんなネジを教師は恐ろしくて起こ
すことが出来なかった。きっと、その隙に目を塗られてしまったのだろう。

「誰だよ、あれやったヤツ。」

「知らねぇ。だけど、あのネジの目に色温んだから大したヤツだろうよ。」

 クラスメイト達はそう思いこんでいたので、まさか学年ビリのナルトが犯人
であるという事に微塵も気がつかなかった。




「ナルト…やるなって云ったろうが。」

 疲れたようにキバが呟けば、その答えは直ぐに返ってきた。

「だからヒナタにはやらなかったってばよ。」

 確かにその通り。



 気晴らしと云わんばかりの駄文。ナルトは突っ込み所が多くて、こういうの 書くのが楽しいのです。しかし、カップリングにならないのが何とも…。元々 生ぬるいので、大差ないといえばそれまでですが。

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