お兄ちゃんの事情


*中忍試験、ネジ対ヒナタ戦の話よりネタ抜粋*
 年下の可愛い本家の娘。  彼女を好きだと、大事だと思う気持ちとは別にもう一つの感情を抱き続けて きた。    それは憎しみ。ネジがどんなに足掻いたところで手に入らないモノを全て持 っているヒナタが憎い。  ヒナタを見るたびに、考えずにはいられない。 (…何故、自分は宗家の人間ではないのだろう…。)  もしも自分が宗家の跡取りであったなら、文句のつけようがなかっただろう に。文武に秀で、少なくともヒナタよりは人を統率する力を持っている。(… そりゃ、ヒナタに比べれば誰だって…。)  それなのに…   「何故だ!」  ネジの絶叫に、皆が驚いたように彼を見た。  普段は嫌味なながらも大人なびた優等生をやっているネジの絶叫を聞く機会 など滅多にない。 「…何故、ヒナタ様ばかりが…。」  苦渋の滲んだその声に、ナルトの眉が寄る。  ネジと同じくラスになった事もあるナルトだが、ついぞネジの苦しむ様など 見たことなかったからだ。…壁に頭をぶつけたり、泣きながら疾走する姿なら 何度か目撃したことはあったが、それは苦しんでいるよりは楽しんでいるよう にナルトには見えていた。 「えっと、何がですか?」  リポーターよろしく、サクラが手をマイク代わりにネジへと問いかけた。  ネジとヒナタの因縁を知っている者ならともかくとして、いきなり「何故 だ!」などと叫ばれても平民のサクラには何がなんだかさっぱり分からない。  里では色々な噂が流れていたが、どれも信頼性に欠けたものでしかなかった。 犬塚のキバや油女のシノ、それにうちはであるサスケなどはバッチリ里のお家 事情等にも通じているが、里と離反して過ごしていたナルトや他の平民達はど うしてもそういった事情に疎くなりがちだ。  ネジは好奇心一杯のサクラの顔をジッと見つめた。  それから何事か決心した様にサクラの腕を掴むと、眦をつり上げてヒナタを 指さした。 「ヒナタ様!!」 「…はっ、はいっ!」  ヒナタも思わず返事をしてしまう。 「私は日向様がお生まれになった頃より、その成長をお側で拝見させていただ きました。」  過去を懐かしむような目で、サクラの手をマイク代わりにネジは語りだした。 「歩けるようになったと聞けば手を叩いて喜び、おむつがとれたと聞いては泣 いて喜びました。ひらがなも一から教え、貴女様が初めて私の名前を書いてく れた時はどんなに嬉しかった事か!…今も、そのお手は大事に飾らせていただ いています。」  熱の入ったネジに周囲は引き、手に唾まで飛んできたサクラに至っては嫌そ うに顔を歪めている。一人平然としているのは我愛羅位のものだ。何時でも何 処でもポーカーフェイス、それはサスケの比ではない。  ネジは一旦言葉を切り、呼吸を整えてから再びヒナタに向き直った。サクラ が嫌がって手を振り解こうとするが、ネジは動じた様子も見せずマイク代わり であるサクラの手を握りしめている。 「けれど、ヒナタ様!…どうしても許せない事もあるのです。」 「えっ、えっと、何がですか?」 「彼の事です。」  ネジはビシッとナルトを指さした。  ナルトはといえば、何故いきなり自分が指さされたのか分からず珍妙な顔を している。 「ナルト君…?」 「そうです。何故貴女が彼の応援を独り占めなさるのでしょうか。」  何故と言われても、ヒナタには答えることが出来ない。ヒナタ自身、ナルト がヒナタを応援してくれたことが嬉しかったが、意外でたまらなかったのだ。  ヒナタの沈黙をどうとったのか、ネジは言葉を続けた。 「貴女は昔から、私の欲しいモノを全て持っておいででした。私が食べたかっ た栗羊羹も、かえる饅頭もすべて貴女のものでした。」  そんなもので良かったら幾らでもあげたのに…とは声にならないヒナタの声 だ。 「一族の期待も、愛情も、全て貴女の…。」  うつむき、打ちひしがれた様子のネジにヒナタは声をかけるのを躊躇った。 「まあ、それはあんまり欲しくなかったから良いのですが。」    顔を上げ、いつもの表情でそう言い放つネジにヒナタは脱力感を感じた。こ の分家の兄さんは、一体いつからこんなひょうきん者になってしまったのかと。 「ですが、彼ばかりは譲れません。」  鋭い眼光でもってヒナタに云うと、ネジはナルトとの距離を一気に縮め、そ の身体を手中に収める。 「ナルトは、私が頂きます。」  手首を解放されたサクラは安堵し、逆に拘束されたナルトの顔は一気に蒼白 になった。  てっきり一族内のもめ事だろう…と高をくくっていた人々も、突然のネジの 行為に呆然とする。  ネジの腕の中、脱力しきったナルトは暴れる気力も起きない。ネジの戯れ言 も(…ああ、いっちゃってる人が何か云ってるよ…)と云った程度の認識でし かない。  ナルトを抱えたままネジはリング(でいいのか?)に戻ると、ヒナタをも抱 きしめた。 「けれど、貴女を愛しているのも本当です。彼を選んだこと、貴女の審美眼は 確かでしょう。」  子供の成長を満足して見つめる親のように、ネジは慈しみの目でヒナタを見 つめた。  これが、ネジの大告白を聞く前ならばヒナタも感動したかもしれない。けれ ど、いっちゃった発言を聞いた後では感動も何もない。一気に窶れた顔を、ネ ジから背けた。   「…で、ネジ先輩は一体どちらがお好きなの?」  止せばいいのに、いのが余計なつっこみを入れる。シカマルが慌てていのの 口を押さえるが、もう遅い。 「それは、愚問だな。」  抱きしめていた二人を離し、口元にうっすらと笑みを浮かべながらネジは高 らかに叫んだ。 「どちらも大好きに決まっている!たった一人を選ぶ事など出来ようか。」  それを聞き、ヒナタとナルトは二人して顔を見合わせ、げっそりとした様子 で溜め息をついた。  誰か、この暴走機関車を何とかしてはくれまいか。もう完璧一人で突っ走る 様はいっちゃってる人だ。 「「先生…。」」  二人揃って、弱々しくアスマ先生を見上げる。ここは年長者の意見を仰いで… という事で、一番そういった意味では頼りがいがありそうなアスマ先生を選ん だのだ。  けれどアスマは困ったように頬髭を掻くと、あらぬ方向に視線をやって一言。 「まぁ、諦めるんだな…。」  その言葉に、再び深い溜め息をつく二人だった。  彼等は知らない。彼等をネジまでとはいかなくとも愉快な感情でもって愛し ている人間達がいることを…。  まあ、知らぬが仏という事で。  
 う〜ちのネ〜ジはヒナ狂い♪毎日ヒナタで泣き狂い〜(注:(多分)おそま つ君のテーマでお読み下さい)  気分でネジナル混ぜてみました…が止せば良かったと思います。読むのはネ ジナルも好きだけれど、書くのはネジヒナの方が書きやすい。けれど本誌での ネジの発言は、ナルトとヒナタに嫉妬しているように聞こえました…。  

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