道具
一本のクナイを拾いました。薄汚れたそのクナイを、何処かで見た事がある
気がしました。
「…誰のかしら。」
サクラは拾ったクナイをマジマジと眺め、持ち主を割り出そうとした。
忍者の代表的な道具の一つ、クナイというものは持ち主の性格が一番現れる
武器である。ちょっと見ただけでは皆同じに見えるのだけれど、柄の部分に巻
く布の種類、巻く量にしても人によって違うし、柄の先についた輪の大きさも
人それぞれだ。
武器は使いやすいに越したことはなく、クナイなどは人の手の大きさに合わ
せて個人個人で作成するものなのだ。勿論、基本形は存在する。けれど基本の
ままでは使い勝手が悪いのだ。
手裏剣や太刀などはそういった意味では特徴が出にくい。特に手の大きさを
気にする必要がないからだ。
「どっかで見たことあるのよねぇ…。」
女の子のクナイじゃないことは大体予想がついた。布自体も汚かったが、何
よりその巻き方が雑だったのだ。だから、いのやヒナタのクナイではないだろ
う。きっと誰か、不器用な人間のモノ。
「シノ…とか。」
油女のシノの不器用さは一部ではなかなか有名である。そこは噂好きの女の
子、それくらいの事は知っていた。けれどそれにしては、輪の部分が小さすぎ
る。シノの手では、小さすぎるこの輪は握りにくいだろう。
そのときサクラは、一人の人間の顔を思い浮かべた。
手の中のクナイをじっと見つめる。
「…もしかして…。」
その時道の端に、サスケの姿を見つけた。
何やら慌てた様子で辺りを窺い、忙しなく動いては地面に顔をつけたり、木
の上に登ったりしている。
「どうしたの?サスケ君。」
サクラの声に、サスケは身体を硬直させた。
(私の気配に気づかなかったのかしら。)
それはサスケにしては珍しいことだ。常に周囲に対して気を張っているサス
ケは、隙というものが殆どない。それだけ慌てているという事なのだろうか。
「何だ、サクラか。」
声の主が誰であるか分かり安心したのか、サスケはホッと一息ついた。
「捜し物してるみたいだったけど、手伝おうか?」
一緒にいるチャンスは逃すなとばかりに、サクラは手伝いを申し出る。
「い、いや…。別にいい。」
けれど返事はそっけないもので、サクラはがっかりした。しかし、それ以上
にサスケの動揺ぶりが気に掛かる。
(サスケ君、一体何を落としたのかしら。)
人に見つかったら拙いものなのだろうか。だとしたら、どんなモノなのか益
々気に掛かる。
ふと、サクラは自分が拾ってバックに入れっぱなしにしていたクナイの事を
思い出した。
(あれも落とし物よねぇ…。)
きっと違うだろうけど。取り敢えずは尋ねてみることにした。
「ねぇ、サスケ君の捜し物ってこれ?」
サクラの手に握られた、少し小さめのクナイ。サスケはそれを見るなり目を
輝かせた。
「それだ!」
思わずといった感じの叫び声にサクラは驚きつつも、サスケにクナイを差し
出した。
「ちょっと向こうの方に落ちてたのよ。…これ、サスケ君の?」
サスケはクナイに伸ばしかけた手を止め、サクラの顔を見た。
「…ああ、俺のだ。」
それだけ云うとそっとクナイを握りしめ、サクラに向かって小さく頭を下げ
ると去っていった。
「あれって、ナルトのよね。」
サクラは知っていた。あれがサスケのクナイじゃない事位。だって、好きな
子の事は何でも知っていたいから、サスケのクナイがどんなモノであるか位覚
えてしまっていたのだ。
何でナルトのクナイをサスケが持っているのだろう。
「ナルトがクナイを無くして、探すの頼まれたとか…。」
云いながらもサクラは、そんな事が起こり得ないのを知っている。だって二
人とも意地っ張りで、お互いを頼ろうなんて事は考えたりしないのだ。
だからきっと、あのクナイは本当にサスケのものなのだ。かつてそれが、誰
のものであったとしても。
数日後、サクラはナルトにクナイを見せて貰った。
サクラが道で拾い、サスケに渡したクナイと同じモノだ。
「ねえナルト、最近クナイ無くしたりしなかった?」
「え?どうしてそれ知ってるんだってばよ。」
驚くナルトに、サクラは小さく笑って見せた。
「ちょっとね…。そんな気がしたのよ。」
サスケが持っていたナルトのクナイ。聡いサクラはその意味を悟り、小さく
胸を痛めた。
シリアスでごめんなさい。けれどサスケはヘタレです。
第三者視点の話って結構好きなので、サクラに登場して貰いました。クナイ
に関しては、他の里のクナイと形状が違ったので、それなら個人によっても差
が出るかなぁ…という事でこういう話しにしてみました。
酷く書きやすかったです…。
|