ジョニー


 「何処へ行きたい?」

「そういうカブトさんこそ行きたい場所ないのかってばよ。」

「あるよ。」

「じゃあ何処?」

「君が、行きたいところ。」






 カブトはいつもこうだ。自分の意志などまるでないかのように振る舞う。そ
の事が度々ナルトを苛立たせた。

「この間は俺の行きたい場所いったから、今度はカブトさんの番なんだって
ば!」

 幾らか強い口調で主張するが、カブトは相変わらず笑顔のままだ。

「うん、だから君の行きたいところへ。」

「俺の行きたいところ?それじゃあカブトさんの意志はどうなるんだってば
よ。」

 カブトは何も主張しない。常にナルトの意志に従う。最初の頃は別になんと
も思わなかったが、近頃では不安で仕方がない。

 これではカブトは、ナルトの意志に従う単なる人形ではないか。

 ナルトの良いように、良いように取りはからうカブト。ナルトが命じたなら
ば、きっと何でもするに違いない。例えどのような禁忌に触れる行いであって
もだ。

 困ったように、カブトが笑う。けれど本当に困っているわけではないのは、
浅くないつき合いから解る。彼は困ってみせて、ナルトが折れるのを待ってい
るだけなのだ。

「ナルト君、僕は本当に君の行きたいところへ行きたいだけなんだ。」

 ああ、この笑顔が曲者なのだ。優しげな目で、声で訴えかけてくる。何度彼
にほだされたか分からない程だ。けれど今回ばかりは譲れない。ナルトは目を
瞑り、耳を塞いだ。

「ナルト君。」

 それでもカブトの声は耳に届いてしまう。ナルトはフルフルと首を横に振っ
た。

「ねぇ…。」

 囁きながらカブトはナルトの目にそっと口づける。ナルトが驚きに目を見開
くと、その隙をついて耳を塞いでいた手を頭上で一つにまとめてしまった。

「カブト、さん…。」

「ねぇ、ナルト君。僕に意志が無いって、本当にそう思うのかい?」

 ぎこちなくナルトが頷くと、カブトは寂しげに微笑んだ。

「僕にだってね、意志はあるんだよ。」

「…だったら」

 だったらどうして何も主張しないのか。そう、訊ねようとした時だった。

 カブトはナルトの腕を解放すると、あっという間にナルトを抱きすくめた。
抵抗する間もなく抱き込まれたナルトは呆然とカブトを見上げた。

「こうやって、君に触れていたい。もっと先の事だってしたい。」

 囁きながらカブトの唇はナルトの耳を、頬を、顎を伝っていく。

「でも君に嫌われたらと思うと、何も出来なかった。」

 そう告げるカブトは辛そうで、ナルトはどうしていいかわからなくなる。

「僕は臆病者なんだ。」

 自らを嘲るように笑い、カブトはナルトを抱きしめる手に力を込めた。

「僕の望みは君の傍にいる事だけだ。それ以上は望まない、望めない。」

 だから君は好きなようにしてくれていいのだとカブトは言う。だが、そんな
風に言われてナルトが納得できる筈がない。

「…変だよ…。」

 ボソリと呟き、ナルトはカブトを突き飛ばした。

「カブトさん、変だってばよ!」

「変?何処が?」

「何で望めないとかいうんだってば!俺、そんな風に考えて欲しくない!!」

「でも僕は考えざる得ない。」

「どうして?」

「僕が、君に相応しくないから。」

 やはりナルトにはカブトが理解できない。相応しくないとは何だ。その言葉
に、一体どの様な意味が込められているのか。

「…だったら…」

 苛立ちが沸々と湧いてくる。この苛立ちを、カブトにぶつけてしまえという
思いも。

「だったら何で、俺の傍にいるの?」

 その言葉にカブトは衝かれたように顔を上げた。

「ねぇ、何で。」

「…それは…。」

 カブトが口ごもる。それは滅多に見られる光景ではない。

 ちらり、とカブトがナルトを見る。その目の闇は、恐ろしく深い。彼はまだ
昔を引きずっているのか。改めてその事に気づき、ナルトは苦々しげに顔を歪
めた。

「傍に…」

 小さな呟きだった。聞き取れないほど小さな。

「傍に、いたいんだ…。」

 ナルトも聞こえないフリをする。カブトの抱えた矛盾。それは彼が自らの過
去を葬り去るまで続くに違いない。

 そして話は元に戻る。

「何処へ行きたい?」

「君の行きたいところへ。」

「じゃあ、カブトさん家に行こう。」

 




 ジョニー…。タイトルは、「真夜中の相棒」のジョニーをモチーフにしてこ の話書いたからという単純な理由。カブトさんの一人称ど忘れ。確認しに部屋 に戻るの面倒だったので、イメージで突っ走らせて貰いました。一人称が「私」 だと、より好みなんですが流石にそこまでイメージ先行させるわけにも行かず、 こんな形におちついてみたり。    ジョニーが来たなら教えてよ〜♪そんな歌があった気がするんですが、どな たかご存じありません?  


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