勘弁してよ


 
 忍びの資本とは何だろうか。

 頭脳?…それは勿論必要だ。
 
 運動能力?…無ければ困る。

 けれど双方が揃っていても、これが無ければどうしようもないというものが
ある。それは体力。頭脳、運動能力共に兼ね備えていても、体力が無ければど
うにもならない事は案外多いのだ。




 

「…い、痛い…。」

 筋肉痛で強張った身体を抱え、ナルトは呻いた。横では同様にサスケも顔を
しかめているが、ナルトの様に口には出さない。それがせめてものプライドな
のだろう。

 サクラに至っては筋肉痛が酷くて起きあがれなかったらしい。今日の任務は
お休みだ。

 これというのも全て三日前から始まった任務のせい。カカシが持ってきた最
低ランクの任務は意地と根性さえあればどうにかなるが、とてつもなく時間が
かかるというもの…つまりは草むしりだった。

 たかが草むしりと舐めてはならない。ごく僅かなスペースであればさほど苦
でもないが、小学校の校庭ほどある庭を想定してみよう。それを三人でむしる
のだからとてつもなく時間がかかる。

 カカシは三人がむしっている間は呑気に読書なんぞしているものだから、三
人はもうイライラも絶好調!という具合だ。精神的にも肉体的にも、辛いこと
この上ない。

「もう、ヤダってばよ…。」

 ナルトが弱音を吐くが、カカシは任務だと言って笑うばかりだ。そう、確か
に草むしりは今回の任務。果たさねばならないと頭では分かっているが、どう
にも感情がついていかない。草むしりは、忍びじゃなくてもできるのだ。

「ほーら、元気出して行こう♪」
 
 今日も二時間ばかり遅刻してきたカカシに連れられ、彼等は草むしりに向か
うのだ。








 労働基準法を越える時間草むしりを続けた後、四日目にして漸く草むしりは
終了した。大儀そうに溜息をつき、ナルトはその場に腰を下ろす。サスケは一
応立ってはいたが、それでもやはり辛そうだ。

「ご苦労様♪」

 呑気に笑うカカシが憎い。二人は同時にカカシを睨み付け、その手に握られ
ているものに目を留めた。

「せんせー、それ何だってばよ?」

 カカシが持っていたもの、それは茶色の小瓶だった。栄養ドリンク剤位の大
きさのものだ。だがラベルが貼られていない為、何なのかわからない。

「あぁ、これか。」

 ナルトに言われ、カカシは瓶を左右に振った。瓶の中、液体がチャプチャプ
と音をたてる。カカシはそれをそのままナルトに手渡した。

 やはり栄養ドリンクなのかと思い、ナルトは瓶の中を覗き込んだ後口に運ん
だ。カカシが慌ててそれを止める。

「飲むんじゃないよ。」

 飲むものでなければ何なのか。見上げればカカシはいつものように笑ってい
た。

「塗り薬。筋肉痛にきくんだぞ♪せっかくだから使いなさい。」

「わざわざ持ってきたのか?」

 呆れた様に言いながら、サスケも瓶の中の匂いを嗅いだ。匂いを嗅ぐ限りで
はまさに薬品。だがカカシが持ってきたものだから、一体何が隠されているの
か知れたものではない。第一、ラベルが貼られていない辺りで怪しさ大爆発だ。

「本当に大丈夫なのか?」

 顔をしかめながらカカシを問いつめる。カカシはやっぱり笑顔のままだ。彼
の真意は読みとりにくい。

 さて、どうしたものか。ナルトの持つ瓶を見ながらサスケは考えた。本当に
筋肉痛に効く薬ならばかなり有り難い。今は日常的な動作すら億劫になる程、
筋肉が悲鳴を上げているのだ。こんな状態からはさっさと脱出したい。

 だが本当にカカシを信用していいものかサスケは頭を悩ませた。カカシは信
用ならない。本当に信用ならないヤツなのだ。…こんなヤツの持ってきた薬を
使って、もし身体がどうかなったら大変だ。

 サスケがそんな葛藤をしている間に、ナルトは薬を塗る決意を固めたらしい。
まず上着を脱ぎ、その肩や腰に薬をベタベタと塗りつける。

「冷たいってばよ。」

 そう言いながらもナルトは楽しそうだ。多分、普段は滅多にやらない薬を塗
るという行為が楽しいのだろう。

 上半身を塗り終えたナルトは上着を着込み、今度はズボンに手をかける。

 流石にそれはまずいだろう。サスケが止めに入ろうとしたが、もう遅かった。

 ナルトはズボンを膝辺りまで下ろし、太股の辺りにベタベタと薬を塗りつけ
る。その姿を見て、サスケは思わず固まった。

 少し俯き加減で太股を見つめる目は、筋肉痛からくる苦痛の為か苦しげな色
に染まっている。口から漏れる吐息は荒く、足を少し開いた体育座りの様な体
勢はナニの最中を連想させ、ナルトに惚れているサスケにしてみれば目の毒で
しかない。

「おーい、サスケく〜ん?」

 カカシの呼び声もサスケの耳には届かない。

 サスケは顔を真っ赤にし、その場に撃沈した。











 不幸中の幸いとでもいうべきか、サスケがぶっ倒れたのは単に体力が無かっ
たためだとナルトは判断したらしい。ナルトに体力無しだと思われるのも癪だ
が、ナルトが薬を塗っている姿を見てナニを連想した事がばれるよりはるかに
ましだ。

 そう、ましな筈なのだが…。

「やぁ〜い、サスケの体力無しぃ〜〜っ!」

 ナルトにからかわれる度、何処かへ逃げ出したくなるサスケだった。





 薬塗る時は体勢に注意して下さい。…じゃなければ人目のない所で…。 


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