眠る男



 幸田という男は何時でも眠る。

 何処でも眠る。

 そしてなかなか目覚めない。



「…また寝てる…。」

 仕事帰り、幸田と一緒に夕食を取ろうと思って買ってきた弁当の包み
を抱えて幸田宅を訪れた春樹は呆然と呟いた。

 確か今日、幸田は休み時間も眠っていた筈だ。

 そして昨日の夜も早かった。

 幸田は一日何時間眠れば気が済むのだろうか。

(取り敢えず、起こさないとな。)

 このままでは折角の弁当も冷めてしまう。

「幸田さん、飯」

 普通の声で、幸田の目覚める気配はしない。

「幸田さん、飯!」

 少し大きな声で。それでも幸田は目覚めない。

「幸田さ…」

 もういっそ、幸田の鼓膜が破けるほど大きな声で叫ぼうかと思った時

ふいに幸田が目を開けた。

「幸田さん、起きた?」

 うすらぼんやりとしていて、本当に起きているのか判らないから
ヒラヒラと手を幸田の前で振ってみる。

 その手を幸田は掴むと、そのまま自分の方に引き寄せた。

「…え…?」

 何が起こったのか認識する前に、春樹の体勢は崩れ幸田の上に覆い被さり、
そのまま抱きしめられた。

「ちょ、ちょっと幸田さん。何すんですか。」

 この状態は大変嬉しい。

 嬉しいことは嬉しいが、自分より体格の小さい幸田を潰さないように
腕で自分の体を支えているのでかなり辛い。しかも片手に弁当だ。

(ヤバイ、このままじゃ幸田さん潰す…)

「…あれ、春樹。何やってるんだ。」

 春樹の腕が限界近くなった時、幸田が目を覚ました。

「何って、とにかく手ぇ離して…。(涙)」

 背中にまわっていた幸田の腕が外され、春樹も無理な腕立てから漸く解放
された。

「…で、春樹。何だって?」

「…幸田さんと飯食おうと思って弁当持ってきたら、幸田さんに抱きつかれた。」

(そっちから抱きついてきたんだからこっちは悪くない!)

 言外にそう言い捨てて、そっぽを向く。

 それを幸田はどう取ったのか、ニヤリと笑った。

「取り敢えず、飯にしようか。」


 後日、一万と二千五百円請求された北川(兄)が春樹を詰問するが
それはまた別の話。

 




初の高村小説パロ。 自分が何を考えているのか解りません。(涙) 幸田×モモが多い『黄金を抱いて飛べ』ですが 私は幸田が愛されている方が幸せです。(そして春樹一押し)

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