恋歌



 態度で示しても通じない、言葉で云っても無視される。ならばどうやって思
いを伝えるべきなのか。お子様ルフィに惚れた瞬間から、ラブコックの苦悩は
始まった。



「まぁ、ルフィが相手じゃねぇ…。」

 そう言って溜め息をつくナミは、何処か楽しげだ。娯楽が少ない船の上、サ
ンジの悩みもナミにとっては暇つぶしになる程度に楽しいものなのだ。

 何せ、サンジの惚れた相手は天下無敵のお子さまルフィ。おまけにゾロとい
うライバルまで存在するので、苦悩するネタには事欠かない。

 そして苦悩するサンジはなかなか面白い。相談に乗れば、デザートやお菓子
のサービスまでついてくるので良いことずくめだ。まぁ、ナミにとってはの話
だが。

「そーなんですよ、ナミさん。でも何でか知らないんですが、緑頭とは以心伝
心みたいな所があって…。」

「で、嫉妬してるわけ?」

「…簡単に云うと、そうです…。」

 やはりナミには適わない、とでもいう様にサンジはお手上げのポーズを取る
と、がっくりと項垂れた。

「結構、アプローチって難しいものですねぇ。これでも場数踏んできたつもり
なんですが。」

「駄目よ、サンジ君。そんな事位で挫けてちゃ。」

 それじゃあ私が面白くないじゃないの、と心の中で付け加えつつ、ナミはサ
ンジを叱咤した。

「でもそれじゃあナミさん、一体どうしろと…。」

「歌よ。」

「うたぁ?」

 素っ頓狂な声をあげるサンジの眉間に人差し指を突きつけ、ナミは続けた。

「そう、歌よ。古来より愛の告白には歌って相場が決まってるのよ。しかも、
自作ならいう事なし!」

 語るに連れ熱が入るナミに押され気味になりながらも、サンジは反論を試み
た。

「でもナミさん、歌なんてどうやって作るんですかっ。」

「あら、簡単よ。5・7・5のリズムで良いの。さぁ、作りなさい。そして再
びルフィに思いを伝えるのよ!」

 こうしてサンジは、無理矢理ナミに恋歌を作ることを約束させられたのだっ
た。





「なぁ、ゾロ。サンジ知らない?」

 デッキで昼寝をしていたゾロをたたき起こしての質問が、自分の大嫌いな男
の事だったのでゾロは寝不足も手伝って不機嫌になった。

「あぁ?どーせまた何か作ってんじゃねーのか?」

 けれどルフィはゾロの機嫌なんて気に掛けてもいない。

「でも台所行ってもいなかったぞ。もうすぐ飯の時間だってのに何処行ったん
だろ。」

「何だ、ルフィ。腹減ったのか。」

「うん。凄く。」

「だったら、コレでも食ってろ。腹の足し位にはなるだろう。」

 そう言ってゾロがルフィに渡したのは、夜食用にこっそりくすねておいたビ
スケットだった。大食らいのルフィがそれで満足する筈はないが、それでも無
いよりましだろう。

「食って良いのか?」

「ああ、さっさと喰えよ。見つかるとまずいからな。」

 けれどルフィがビスケットを口にする寸前、邪魔が入った。

「ルフィ!!」

 叫びながらルフィに突進し、そのまま抱きつく。当然それは話題の人物、サ
ンジだ。

(さぁナミさん、見ていて下さい。今このサンジ、ナミさんから伝授された方
法で見事告白してみせます!)

「あのな、ルフィ。よく聞けよ。」

「うん?」

「アイラブユー ラブラブウォンチュー アイニーヂュー」

「……は……?」

「だから、これが俺の気持ちだ!分かったな?ルフィ。」

「悪い、サンジ。俺意味分かんねーよ。」

「残念だったな、クソコック。ルフィにゃ英語は通じねーよ。」

(し、しまったあぁ〜〜〜!!)

「第一、俳句には季語いれるのが基本だろ。そんな事も分かんねーのかよ、本
当に馬鹿だな。」

 
 …こういう訳で、サンジの第一回「歌であいつのハートをゲットだぜ☆」作
戦は見事失敗に終わったのだった。


*余談*

「あぁ〜あ、見事失敗してくれちゃって。もうちょっと何とかならなかったの
かしら。」

「…何やってんだ、ナミ…。」

「あら、ウソップ。ちょっとばかし恋の手助けをしようと思っただけよ。」

(…あれって、邪魔じゃないのか…。)




 書いていて、死ぬかと思いました。…疲れた、よ…。ワンピ書く日が来ると は思わなかったしね。撃沈、です。

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