桃
田舎の親戚から大量に桃が送られてきた。
だけどオヤジに見つかると一気に食べられてしまうから、後でじっくり食べ
ようと思ってベットの下に隠して置いたのだ。
だけどやっぱり、それは不味かったんだろう。
気がついたときには桃は腐りきっていて、ベットの下は虫地獄になっていた。
「桃は簡単に腐るからな。」
越前の間抜けな昔話を聞かされた桃城は、豪快に笑いながら汗を吸って重く
なったユニフォームを脱ぎ捨てた。
そう言う桃城も、越前ほど豪快にではないが桃を腐らせた記憶がある。
あれは確かまだ桃城が小学校低学年の頃の話だ。近所のおばあちゃんがおう
ちに帰って食べなさいと渡してくれた桃を、大事に大事にとっておいたのがい
けなかった。食べようと思ったときには桃はすっかり茶色に変色し、とても食
べられる状態ではなくなっていた。だけど捨てるのも勿体ないと考えた桃城は、
その桃を食べたのだ。…結果は話すまでもないだろう。
既に着替え終わっている越前は、ぼんやりと桃城を見上げたまま軽く相づち
を打った。桃は簡単に腐る、それはその通りだろう。
「でも、だったらどうするんです?」
桃は簡単に腐る。けれど送られてくる桃はいつも箱いっぱいに詰まっており、
とてもじゃないが腐る前に食べ終える事は出来ない。オヤジに食わすという案
は却下だ。そんな事をすれば自分が口にする前に無くなってしまう。
「そんなの、簡単じゃねーか。」
シャツを羽織り、脱いだユニフォームをバックの中へと仕舞いながら桃城は
ニヤリと笑った。その笑みは悪戯を思いついた子供の様で、越前はこの人は本
当に年上なのだろうかと呆れてしまった。
「固いうちに食うんだよ。」
固いうちに食べる?桃を?そんな事が出来るのだろうか。前に熟れる前のメ
ロンを食べたことがあるが、あれは酷く不味かった。あんなものならば食べな
い方が悠にマシだ。
「不味いんじゃないんすか?」
顔をしかめて訊ねれば、返ってくるのは楽しそうな声。
「今度食って見ろよ。案外、いけるかもしれないぜ?」
ああ、これはきっと不味いって事なんだな。桃城の態度からその事を察した
越前は、深々と溜息をついてみせた。
「おい、何だよ越前。」
越前の反応が不満なのか、桃城が食ってかかる。けれど越前にしてみれば、
こんな桃城の反応は予想の範囲内なわけで。
「…桃城センパイ…。」
グイと桃城の腕を掴み、思い切り自分の方に引き寄せる。お互いの目と目が
合う。その距離およそ十五p、男二人が会話をするにしては近すぎる距離だ。
「な、なんだよ。」
不可解な後輩の態度に気圧されながらも、一応返事はしてしまう律儀な桃城
だった。そんな桃城の律儀さに苦笑しながら、越前はそっと彼の頬を両手で包
みこむ。
「…桃は、熟れる前に食べてもいいんですよね?」
桃城には、越前が何を言っているのか理解できなかった。
「いただきます。」
嬉しそうな越前の声と同時に、世界は闇に呑まれた。
桃城がなんとか家に帰り着いたのは、十二時近い頃だったという…。
おそまつさま。
実はまともにテニプリは知らないのです。アニメも弟に便乗してしか見てい
ないし。それなのにこんなの書いてる私って一体…。リハビリ兼ねてって事で
ご容赦下さい。
|