二人静
タン タン タン
ペッタ ペッタ ペッタ
カズマの歩けば同じだけ、後ろの足音の主も動く。
タン タン タン タン
ペッタ ペッタ ペッタ ペッタ
どうも自分をつけてきているらしいのだが、それにしてはお粗末な尾行だ。
(…何なんだよ一体…。)
足音を気にしながら、それでもカズマは歩く。さっさと君島に頼まれた依頼
を片付けて、こんな所からはおさらばしたいのだ。
(…だったらやっぱり、コレ、振り切らなきゃなんねーのかなぁ。)
流石にネイティブアルターの所在を探している事がバレるのは不味い。カズ
マは意を決して、自分の後ろをつきまとっていた人物を見るために振り向いた。
そして、視界に入ってきたのは見覚えのある少年。
名前は確か…
「…イーリャン?」
「イーリャン。」
コクリと頷きながら答える様は、小動物の様で愛らしい。
思わずポケットを漁り、前に君島にもらって入れっぱなしになっていた飴を
差し出してしまう程にだ。
「喰うか?」
「喰う。」
イーリャンは頷くと、飴にそっと手を伸ばした。
白いその飴は何の飴であるか判らなかったが、イーリャンは別にどうでも良
いようだ。何の躊躇いも無しに飴を口の中に放り込む。
「美味いか?」
美味いという返答を期待してカズマが尋ねるが、イーリャンは首をフルフル
と横に振る。
困惑したように眉根を寄せて、飴を吐き出した。
「不味い。」
少しでも口の中に残った味を追い出そうとでも言うように、舌を出してカズ
マに訴える。
…そんなに、不味い飴だったのだろうか。
不思議に思い、他にも幾つか貰った分があったので自分の口にも放り込む。
途端、鼻から息が抜けるようにスッとした冷たい空気が口の中に広がった。
ハッカだ。子供が嫌いな飴の上位に上げられるハッカなのだ。かく言うカズマ
も、ハッカはあまり好きではない。
「…悪かったな。」
まさかハッカだとは思わなかったからといい訳をしながら、イーリャンの頭
を軽く撫でる。
するとイーリャンは驚いたように目を見開いて、カズマを見上げた。
「…どうした?」
頭を撫でたのは不味かったのだろうか。カズマは手をイーリャンの頭上に置
いたままばつの悪そうな顔で訊ねた。
イーリャンは相変わらず目を見開いたまま答えない。
こんな時は、どうすればいいのだろう。
どうにも子供相手というのは馴れてない。かなみも子供だが、かなみはカズ
マよりよっぽどしっかりして、二人をくらべると寧ろカズマの方が子供に見え
る位なのだ。
…さて、どうしたものだろう。
どうしていいのか判らないカズマ。
固まってしまっているイーリャン。
二人の間に奇妙な沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは二人のうちどちらでもない、第三者であった。
「よぉ、カズヤ。こんな所で何してるんだ?」
聞いただけで脱力したくなる程能天気な口調で話しかけてきた男はクーガー
だ。そして今日も相変わらずこの男は人の名前を間違えている。
「…カズヤじゃねぇよ。カズマだ。」
一応訂正を入れながら、クーガーの方に向き直る。
正直言ってクーガーの登場はカズマにとって有り難かった。先ほどの状況を
打破する術を、カズマは知らなかったから。
「そういうお前こそ何でこんなトコにいんだよ。」
別に此処は本部内だから、クーガーが居ても不思議ではないのだが尋ねてみ
る。それくらいしか会話の糸口が見つからなかったのだ。
「ん〜〜、愚問だねぇ。カズヤに会いに来たに決まってるじゃないか。」
クーガーは笑いながら、カズマの肩に腕を回した。そしてそのまま背後から
抱きしめられる。
「…だから、カズマだって!」
この男のノリには馴れたつもりでいたのだが、数年に渡るブランクはなかな
か辛いものがあるらしい。頭痛を感じながら、カズマはクーガーのすねを蹴り
上げた。
だが、手応えはない。蹴り上げたつもりの足は空を切り、クーガーは五メー
トルほど離れたところで悠然と笑っていた。
「俺のスピードに敵うはずないでしょ。」
ニヤニヤと笑みを浮かべるクーガーが憎らしい。カズマは舌打ちすると、も
う構ってられないとでも言うようにクーガーを、そしてイーリャンをもその場
に残したまま立ち去った。
そんなカズマの後ろ姿を見つめる目が二対あった。
クーガーと、イーリャンだ。
「あ〜あ、行っちゃったねぇ。」
視線はカズマの背中に向けたまま、クーガーは口を開いた。
返事は、ない。
それでも気にした風もなく、クーガーは喋り続ける。
「結構いいヤツだろ、カズマって。お前も、気に入ったんだろ?」
やはり答えはない。
イーリャンはただ、少しずつ小さくなるカズマの後ろ姿をじっと見つめてい
る。まるで、他の事など何一つ感知していないとでもいうように。
「…まぁ別に、どうだっていい事か。」
どうせカズマは直ぐに、自分の居場所へと戻っていってしまう。敵対しなけ
ればならない日が、直ぐにやってくる。だから、何を想っても無駄なのだ。あ
の、自分の意志だけで生きている男に関しては。
軽く溜め息をついて、クーガーはその場から姿を消した。
後にはイーリャン一人が残される。
薄暗い、廊下にただ一人。先ほどまでの賑やかさが嘘の様だ。
そっと、カズマが触れた所に手を置いてみる。
そうするとまだカズマの手の温もりが残っている気がして、自然と笑みが浮
かんでくるのだった。
何だかアシベ(略)店員のイメージが強く残ったまま…。あっくん、でした
っけ?誰か知っていたら教えて下さい。
争奪戦にしようと思ってイーリャンだしたらこれかい!クーガー出すとまと
まりつかないし。駄目だね、私…。作文というより散文。散文と言うより文字
の羅列。…文章とすら言えやしない…。(涙)
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