百合の園
「…お前って実は結構体格良かったんだなぁ…。」
少女めいた容貌から誤解しがちだが、実は橘あすかという人物は逞しい身体
をしていた。前に会ったときはホーリーの制服を着ていたので気づかなかった
が、ラフな恰好をされるとありありと分かる。
カズマは自分の身体を見下ろして、ため息をついた。
結構力は強い方だと思う。それは数々の戦闘で実証済みだが、何故かあまり
筋肉がつかないのだ。全くついていないという訳ではないのだが、逞しさには
ほど遠い。
「ずっりー…。」
カズマは羨ましそうに、あすかの身体をペタペタと触りまくる。
無意味に筋肉ばかりがついた肉体はどうかと思うが、それでもカズマは男の
子。立派な体格というのはある種の憧れである。
「…そんなに、羨ましいですか?」
カズマの好きなように身体を触らせながら、あすかが口を開く。その顔には、
ちょっと困ったような表情が浮かんでいた。
あすかはあまり、肌のふれあいというのが得意ではない。勿論恋人とはスキ
ンシップもしたが、こういった男同士のふれあいは初めてだ。カズマは気負い
なく触ってくるが、少し緊張してしまう。
「…う〜ん、俺もコレ位の身体欲しかったなぁ。」
そうすりゃ細いだの何だのからかわれる事もないのに、と拗ねたような口調
でカズマは言う。その間もカズマの手は、あすかの身体を這っている。
「まだ十代でしょう。その気になれば今からでも筋肉くらいつきますよ。」
そういうアスカの身体は、かなり小さい頃から鍛えたものだったりする。そ
のおかげで身長があまり伸びず、少々残念に思われたが体力がなければアルタ
ー使いはやってられない。
「そっかな。でも俺なんか筋肉つかないみたいなんだよな。」
言いながらカズマは、腕まくりをしてみせる。
確かに、カズマの腕は細かった。しかしそれは余分な筋肉など何一つないか
らではないか。カズマの力の程は、あすかはその身をもって知っている。あれ
だけの力が出せるのだから、筋肉がついていないという事はあり得ない。
「筋肉の付き方が綺麗なんですよ。余分にいろいろつくよりいいでしょう?」
カズマはムキムキの自分を想像して顔をしかめた。確かに、余分にあるのは
頂けない。
「ま、そーだなぁ…。」
ぼりぼりと頭を掻き、カズマは呟いた。それでもやはり、筋肉のついた身体
とやらを諦められないらしい。
あすかは溜め息をつくと、着ていたシャツをいきなり脱ぎ始めた。
「?」
不思議そうな顔をしているカズマに、シャツを放る。
「…そんなに筋肉のついた身体が良いなら、幾らでも見せて上げますよ。」
「別に見たいわけじゃないんだけど?」
「それなら触ったって構いませんよ。貴方の身体は、下手に筋肉がついた状態
よりよっぽどいいんですよ?それ以上何をしようっていうんですか。」
つまりあすかは、見たり触ったりするなら自分の身体を提供すると言ってい
るのだ。別にカズマはそういったつもりであすかの身体を羨ましいと思ったわ
けではないのだが、言い返す言葉が見つからず沈黙してしまう。
「…貴方は、そのままでいいんですよ。」
囁くような声で呟くと、あすかはカズマの手から先ほど自分が放ったシャツ
を手に取った。
沈黙しているカズマの肩を軽く叩き、シャツを着込む。
「満足、しました?」
悪戯っぽく笑うあすかに、カズマは自分がからかわれていた事に気づいた。
「…てめぇー……。」
グルグルと低く唸り、カズマは身構える。
「貴方がいけないんですよ。そんな風な目で、見つめてくるから。」
「どういう意味だよ。」
「さぁ?そのままの意味ですがね。…これ以上この話を蒸し返すようでしたら、
本当に僕の身体を差し上げますよ。」
そう言って笑うあすかの笑みは、禍々しい。
嫌な予感がして、カズマはフルフルと首を横に振った。どうもこのあすかと
いう男は、得体の知れない感じがするからいけない。あの劉鳳という男もそう
だが、アルター使いというのは妙な人間が多いのだろうか。
カズマは自分もアルター使いであるという事など棚に上げ、そんな事を考え
る。
「…取り敢えず、そろそろお腹が空きましたね。食事にでもしますか?」
あすかの提案に、カズマは即座に肯いた。
「でもあの緑色のはヤダぜ?」
わがままを言うカズマに、あすかは笑みを返す。その笑みには先ほどのまが
まがしさなど微塵も無かった。
「ええ、分かってます。今度は美味しい物でも御馳走しますよ。」
ほのぼの…?
あすか×カズマを書きたかったんだけどね…。(涙)カズマもあすかも変だ
よ。筋肉フェチかい。
え?タイトルは何かって??…私のあすかとカズマのイメージです。(死)
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