不可視の感情
感情の出所が違う。
彼の時は泣きたいという思いよりも、胸の痛みの方がはるかに強かった。だ
が、今はどうだ。思考するより早く、涙が溢れて止まらない。
これは悲しみではない。
大嫌いなアイツ。アイツに自分の存在を忘れ去られても悲しくなどない筈だ。
なのに、何故。涙が止まらない。
「…劉鳳…。」
名前を呼ぶ声すら掠れていて、自分ですら驚いた。
「カズマ君。どうか、しましたか?」
そんな丁寧な言葉を使うな。俺はそんなお前を知らない。
「…お前は、誰だ…。」
「カズマ君?」
不思議そうな顔をして、自分を見つめてくる目の前の男が憎らしい。
「……お前なんかっ…。」
手に、アルターを構成する。闘う構えを取った俺を前にしても、劉鳳は戦闘
態勢をとらなかった。やはり不思議そうな顔でこちらを見つめてくるだけだ。
「お前なんか知らないっ!!」
地面に向かって、思い切りアルターを叩きつけた。感情にまかせて打ち付け
られた大地は揺れ、地鳴りをあげる。
「…お前、なんか…。」
涙が地面に落ち、シミを作る。
何で俺は泣いているのか。泣く必要など、何処にもないのに。俺を忘れた男
を目の前にして、ここまで動揺してしまった事実に腹が立つ。
腕が、痛かった。痛みで頭が真っ白になりそうだ。
「…カズマ君。」
目の前に、陰ができた。見上げるとそこには男が立っている。劉鳳の身体を
持つ、偽物だ。
男はそっとかがみ込むと、俺の涙を優しく拭った。
「何か、辛いことでもあったんですか?」
劉鳳なら決してしないであろう優しげな表情。目の前でそんなものを見せら
れると、裸足でこのまま逃げ出したくなる。
「来るな…。」
地面から手を引き抜き、後ろへとずり下がる。
けれど劉鳳は開いた俺がずり下がった分だけ距離を詰めてくる。
「来るなと言ってんだろっ!」
叫んで、頭を抱えた。
もうぐちゃぐちゃだ。どうしていいのかなんて分からない。この男を殴れば
すっきりするのか?そうじゃないだろ。俺が倒したいのは「劉鳳」なんだ。
涙が、止まらない。
濡れた視界で、前が見えない。
「…君、島…。」
教えてくれよ。どうしたらいいのか。
お前なら知ってるんだろう?
書いたのは、前の話ですねぇ…。それも一週間ばかり。
掲示板の方にあげといたものですが、それじゃ見にくいので移動します。
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