天使が待っている
祈り この胸に抱きしめ
彷徨う闇のような未来
「よぉ、カズヤ。」
「カズマだ。」
このやり取りは、一体どれくらいぶりになるのだろう。それでも舌が、彼の
名前を覚えている。
わざと間違って覚えた名前。間違った名前を呼ぶことで、ちょっぴり拗ねた
子供らしい顔を見ることが出来たから。
その事が、楽しくて何度も繰り返した昔。
「カズヤ。」
「カズマだっつーのっ!」
思い切り、後頭部を叩かれた。けれどその痛みすらも愛おしい。昔と変わら
ないものが、ここにある。
「カズヤ…。」
「だからっ…」
文句を言おうとした口を唇で塞ぎ、そのまま細い体をこの腕に抱き込む。
カズマは何をするんだという様に思い切り眼を見開き、それからゆっくりと
眼を閉じた。
「ホーリー、入ったんだな。」
どれくらい抱き合っていただろうか。暫くして、カズマが思い出したように
口を開いた。
「ああ。」
そう、自分はホーリーに入ったのだ。自分を頼ってくれる幼い存在を捨て、
ホーリーという組織に属した。その事で失ったものは多かったけれど、後悔は
していない。
今目の前にいるカズマも、失ったものの一つだった。
何度、彼に思いを馳せただろう。強い子だという事は知っていた。けれど、
こころまでをも武装して、何処までやっていけるか不安でもあったのだ。
しかし、その心配は杞憂に終わったのではないかと思う。自分がそう思いこ
みたいだけかも知れないが、目の前にいるカズマからは、生きる目的を持つも
ののみが持つ輝きがある。
「そう、かぁ…。」
溜め息をつくように呟きながら、カズマはするりとクーガーの腕から抜け出
した。
「何処へ」
行くんだと言いかけた口は、柔らかなものに塞がれてしまった。
目の前にはカズマの顔のアップがある。カズマも眼を開いたまま、クーガー
の顔を見据えていた。
けれど、それは一瞬のこと。
カズマはすぐにクーガーから離れると、人の悪い笑みを浮かべる。
「仕返し。」
それだけ言うと、足取りも軽くその場から退場する。
「…参ったな…。」
クーガーは赤らんだ顔を手で押さえ、呟く。
去っていく背中に、羽が見えた気がしたのだ。
どうしましょう…。
ほのぼの?ほのぼのなのか?
取り敢えず保留という事で、こっちにアップ。
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