狭間
腕利きのアルター使いがいる。
その情報を頼りにして行った先で見たモノは、ボロボロになったカズマの姿
だった。
表情には覇気がなく、目は暗く濁っている。自分がどんな状態であるのかと
いう事すら把握していないのではなかろうか。
「…カズマ…。」
本当の貴方は、そんな風ではないはずだ。
守るものがある。そう言いきったあなたの表情は、今まで見たどんな人間よ
りも輝いていたのに。
一体何があったのだろうか。
劉鳳との戦いから八ヶ月。その八ヶ月という空白の時間に、カズマの身に、
一体何が。
やるせなくて、唇を噛む。強く噛みすぎたのか、唇からは血が滴り始めてい
た。
「どうしたんでしょうね、カズマさん。」
不快そうに眉をひそめながら、水守が言った。
それはあすかも抱いていた疑問である。薄暗い部屋の中で踞る彼。あれは、
本当のカズマではなかった。
「…僕には、解りません。」
血の味がする唇を舐め、目を瞑る。
「鍵は開けておきましたから、そのうち出てきてくれるといいのですが…。」
もしカズマ自身の意志であの部屋を出てきてくれたら、そうしたら、どんな
に良いか。
「そうですね。それよりも劉鳳は…。」
恋する女は身勝手だと言うが、水守も相当なものだ。気持ちは分からないで
もないが、劉鳳の事ばかり気にかける水守に時折苛立ちを感じてしまう。
劉鳳、劉鳳、劉鳳。
あの男がどれだけのものだというのか。確かにアルター能力者としては一流
であったが、人格の面ではどうだ。人を人とも思わないあの目。見下した様な
口調にどれだけ怒りを感じた事か。
そこまで考えて、ふと気づいてしまった。自分は、嫉妬しているのだという
事に。
ひたすら、前進していくカズマ。劉鳳は、彼に敵として認められているのだ。
では、自分はどうだ。
カズマの敵?味方?
少なくとも敵ではない。あすかはカズマに好意を抱いているし、カズマもあ
すかに襲いかかってはこなかった。
では、味方なのか…?
カズマの力にはなりたい。けれどカズマは、それを認めてくれるのか…。
爆音が響き渡る。
どうやら先ほどの闘技場で何かがあったようだ。
「…ここも、危ないかもしれませんね。」
水守を促し、その場を去る。カズマという存在に、後ろ髪引かれながら。
奥の方にいってしまっていた、掲示板SS。
私、あすかが好きですよ。ええ、ヘタレな所とか…。
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