絶対無敵



「ひーちゃん、何やってんだよ!」
 
 旧校舎の地下に、京一の声が響き渡った。

 何が起こったのかと振り返る仲間達を余所に、京一は龍麻へと詰め寄る。

「今戦闘中だろ!?」

 叫びながら、京一は龍麻の持っていた壺を取り上げた…つもりだった。

 だが京一よりレベルは元より、攻撃力に始まり精神力も行動力も強い龍麻に
あっさりとそれは阻まれた。

「邪魔をするな。それより、お前もこれを飲め。」

 龍麻は京一に『弁財天の霊水』を押しつけ、自分もガポガポと貯めに貯めた
霊水やら神水やらを飲み続ける。

「だから、今戦闘中…。」

 恨めしげな京一の声が龍麻に届くはずもなく、龍麻は全ての行動力でもって
ドーピングを続ける。

「京一、龍麻は放っておけ。」

 京一の肩に手を置き、全てを悟りきった様に醍醐は言い放った。

「でもっ!」

 京一は尚も抗議をしようとするが、首をふることで醍醐はそれを征する。

「どうせ、残っている敵は魅惑状態だから片づけるのは容易い。それよりも、
後の戦闘に備えて準備をしておくほうが得策だと龍麻は判断したんだろう。」

 京一と醍醐が話している間も、龍麻はドーピングを続けている。もう戦闘に
は興味を失っている様にも思えるが、方陣技の支持などを出している所をみる
とそういうわけではない様だ。

「龍麻は、俺達には計り知れない…。」

 龍麻の数々の奇行を思い出しながら、醍醐は呟く。龍麻が来てからというも
の、常識人の醍醐は振り回されっぱなしだった。

 そして、そこから悟ったのだ。

 もう、龍麻のする事に口は出すまいと。

 出したって、無駄なのだ。龍麻は人の言うことに左右されない。その事で何
度苦い思いを経験したことか。

 フラフラと手頃な位置に移動してきた敵に一発蹴りを入れる。魅惑状態のユ
ニットは、これだから楽だ。龍麻が戦闘に参加しないのも、他の仲間達のレベ
ルを上げさせるためという意図があっての事かも知れない。

 そこまで考えてから、醍醐は気づいた。そういえば京一は、まだ渡された霊
水を飲んでいない。 

「京一、一応それは飲んでおいたほうがいいぞ。…そうしないと、龍麻が…。」

 語尾を濁す醍醐に、感じ入るところがあったのだろう。京一は慌てて霊水を
呑み込んだ。だがあまりに急いだ為、咽せてしまう。

 ゴホゴホと咳き込みながら、それでも必至になって壺に入っていた霊水を呑
み込む。ここで吐き出しでもしたら、何をされるか分からない。

 龍麻はそれを見てにんまりと笑うと、最期に残った敵を三体纏めて吹き飛ば
した。

「すげぇ、ひーちゃん…。」

「ああ、そうだな。」

 感嘆の声をあげる京一に、醍醐が相づちを打つ。

 龍麻は、本当に強い。いつも先陣を切って戦う彼は、無敵なのではと思える
ほど強い。何故あの様な強さを身につけることが出来るのだろうか。

「死ぬことが、出来ないんだ。」

 二人の疑問を感じ取ったのか、龍麻が口を開いた。

“死ぬことが出来ない”

 それは、どういう意味なのだろう。人間誰しも、死ぬことは出来ないものな
のではなかろうか。

「やはり龍麻は計り知れない。」

 醍醐が困惑したように呟く。

 その横で京一は、龍麻の強さに見とれていた。


 私は主人公ばかりドーピングしてました。だって、主人公が死んだらゲーム オーバーになってしまうんですもの…。 

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