二人きりの悪夢





 ああ、辛い。物凄く辛い。

 ユリエと二人きりで人形館を散策しながら、ユキヤは盛大な溜息をついた。

 人形館に巣くう悪夢は結構強い。その強いのを相手にしなければならないの
に、パーティーはたったの二人…。これは死ねと言われている様なものだ。

 こんな事ならもっと回復アイテム買っておけば良かったと後悔しながら、ち
らりと隣のユリエを見れば、魔法の使いすぎで息を切らせていた。

 回復アイテムが無い今、頼りになるのはユリエの回復魔法だけなのだ。ソウ
イチは不調だとかで部屋に籠もっているから、当然リカも出てこない。

(だぁ〜、なんて肝心な時に役に立たないヤツなんだ!!)

 ソウイチに腹を立てても仕方がない事は知っているが、あたらずにはいられ
ない。せめてソウイチさえもう少ししっかりしていれば、パーティーも三人で
戦闘がもう少し楽になるのだ。

 なのにそのソウイチといえば…

「だりゃぁ〜〜〜!!!!」

 渾身の力を込めて、悪夢を剣で突き刺す。敵は背中を仰け反らせながら消滅
した。

「ああ、ユリエさん。回復お願いします。」

 一応戦闘が一段落したので、ユリエにお願いすると怯えた顔でコクコクと頷
いた。一体彼女は何故怯えているのか。ユキヤは不思議に思ったが、さして気
に留めなかった。もしユキヤがユリエの心の中を知ったら、更に激昂していた
事だろう。

(…悪夢より、ユキヤさんの方が怖いです…。)

 どんな戦闘であろうとも、決して死なないユキヤ。何故だか知らないが、絶
対にユキヤだけは死なないのだ。別にユキヤが他のメンバーに比べて生命力が
強いとか、防御に優れているとかいう事はないのだ。それなのに、死なない。
本当に不思議な事だ。

 HPがギリギリな今も、息は切らせているがそれでも強さは変わらない。寧ろ、
強くなったんじゃないかと思える位だ。どうもこのユキヤという少年は、ネジ
が一本飛んでいる様である。

「えっと、後見てないのは奥の座敷だね。」

 地図と磁石で方向を確認しながらユキヤは一人呟いた。その言葉にユリエは
何度も頷く。

「早く、一通り見てソウイチさんの所に戻りましょう。」

 早くユキヤと二人きりという状況から逃れたい一身でユリエが言うと、何故
だかユキヤは顔を赤くした。

(…え…?)

 不思議に思ってまじまじとユキヤの顔を見ているが、それは気のせいだった
のかユキヤの顔色はいつもと変わりないものだった。

「早く行こう。」

 手にした剣を握りしめ、ユキヤは廊下を突き進み始めた。




 二人きりの時、本気で死ぬかと思いました。バクの笛、使っちゃいましたよ。  でも、ユキヤとソウイチって仲がいいですよね。…ゲーム後半、二人の仲の 良さに当てられた記憶が今も尚心に蟠ってます。  


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