[閑話休題]


「そういや月って、どういった女が好みなんだ?」

 リンゴをガジガジと齧りながら、リュークは首をかしげた。月が女性を好きだというそぶ
りを微塵も見せないのが不思議だった。

 リュークの眼からは人間の美醜なんてわからないが、月がデートしたり、付き合ったりし
ている女性は皆「可愛い子」らしい。月の周りの人間達が言っていたから、多分間違いはな
いだろう。

 だが月は、どの女性にも興味がなさそうだった。それどころか、見下しているような雰囲
気さえ漂っている。可愛い子と一緒にいたら、多少なりとも気持ちがはずむものではないの
だろうか。

 少なくとも、リュークはそうだった。いいなと思う女性と話しているときは、それなりに
楽しかった。とはいっても、そんな風に感じたのは随分昔の話だったけれど。

「…好み、ね…。」

 馬鹿らしいと笑われるかと思ったが、月は考えるそぶりをみせている。どうやら真剣に答
える気があるらしい。

「そう、好み。」

 オツムが足りない女は嫌いらしい。そして図々しい女も。それは今までの月の態度からわ
かった。けれど好きな女のタイプはわからない。

 リュークに聞かれ、月の頭の中には今まで接した事のある女性の顔が何人も浮かんでいた。
月にとって女性に限らず人間とは、自分にとって使える者か使えない者、それだけだった。
好ましいと思えるのは、その人間が自分にとって有用だからであって、それ以上の意味など
なかった。

 腕組みをして、身体を反らす。考えれば考えるほど、自分に好みの女性のタイプなど無い
ような気がしてきた。青少年としてそれはどうなのかと思わないでもないが、思いつかない
ものは仕方が無い。

「馬鹿じゃない女、かな」

 考えに考えた末、月が出した結論はこんなものだった。

「それって、お前よりも賢い女ってことか?」

「そんな存在、いるわけないじゃないか。…いたら、いいけどね。」

 その瞬間リュークの頭に浮かんだのは、月が殺すのをてこずっている人間の存在だった。
あの人間ならきっと、月より頭がいい。残念ながら、女ではないけれど。

「そうか。」

 それだけ言って、リュークはバタバタと羽を動かす。

 
 そんな、ある日の午後の話。





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