[デート]



「ねぇねぇ、あれってミサじゃない?」

「やっぱそうだよねっ!…で、隣の人は彼氏かなぁ?流石ミサ、彼氏もかっこいいよね。」

「…うん、だけどさぁ…、あの男の人変じゃない?」

「…あれってやっぱ、手錠かな…?」

「…そうだと思う。」

「「やっぱ、芸能人は違うよね」」



 彼女達噂のミサは上機嫌で、自分の彼氏(だと思い込んでいる相手)に腕を絡めていた。
その彼氏の反対側の腕は手錠につながれ、更にその先には別の男がぶら下がっていることは
無理やり頭から追い出してある。第三者の存在を期にかけ続ければデートを楽しむことはで
きないから、忘れるというのはこの場合正しい方法なのかもしれない。

「ねぇライト、お腹減らない?」

 上目遣いでライトの顔を覗き込みながら、可愛らしくたずねる。大概の男はミサのこうい
った仕草に頬を染め、「そうだね」とか「何が食べたい」とか聞いてくれる。だがここに存
在する例外は、ミサに返事をする前に手錠の先にぶら下がる男に声をかけた。

「流河ー、食事はどうする?」

 ライトの手錠の先にぶら下がる男、流河はどこからみても不審人物だった。有名人のミサ
が一緒ということで、写真をとられても大丈夫なようにサングラス着用。そして口元にはス
カーフ、頭には何故か麦藁帽子を被っている。
 
 ライトの呼びかけにだるそうに顔をあげると、流河はゆっくりと首を横にふった。おそら
く食事はいらないという意味だろう。

 流河の意向を汲み取ったライトはミサに向き直ると、小さく肩をすくめてみせた。

「流河はまだいいってさ。そんなわけだからもう少し後にしよう。僕もあまりお腹がすいて
ないしね。」

「ちょ、ちょっとライト!彼女のミサよりも、あの男を優先するわけ?」

「うん。」

「やっぱライトってホモなのね?だからミサのこと興味ないんでしょっ!」

 ミサの叫び声に、周囲の人がざわめきだす。「へぇー、ホモだって。」「じゃああの手錠、
何かのプレイ?」「ミサも変わったヤツつれてるなぁ…」

 ライトがミサに詰め寄られ鬱陶しい思いをしている間、流河はクレープの出店をじっと眺
めていた。




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